2024年は、地震や豪雨などの自然災害に見舞われ、甚大な被害が発生しました。被災地では今なお、多くの方々が厳しい避難生活を余儀なくされています。一方で、パリ五輪では日本代表が海外開催としては過去最多の45個のメダルを獲得。また、大谷翔平選手がメジャーリーグ史上初の「50ー50」を達成するなど、多くの希望と感動が届けられました。
こうした社会の出来事は、たとえ遠くの地で起こったことでも、私たちの暮らしと関わりがあるかもしれません。今年を振り返りながら、そのつながりを一緒に考えてみませんか。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
【1〜3月】能登半島地震、日本初の月面着陸成功、スウェーデンNATO加盟、米アカデミー賞ダブル受賞
1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする地震があり、同県志賀町で震度7の揺れを観測しました。気象庁によると、震源の深さは16キロ。地震の規模を示すマグニチュードは7.6と推定されました。これにより、災害関連死を含めて475人が犠牲となりました。(2024年12月6日時点)
被災地の現状は
能登半島地震から1年が経とうとしています。石川県内の建物や人的被害の状況はどうなっているのでしょうか。現状の課題や対策について、現地取材を続けているジャーナリストの堀潤氏に聞きました。
- 堀潤氏
- 長引く避難生活などによって心身に支障をきたし、命を落とす災害関連死。
能登半島地震では12月6日時点で247人となり、家屋の倒壊などによる直接死の数を上回りました。
最大震度7、マグニチュード7.6の地震は石川県、富山県、新潟県に甚大な被害をもたらし、475人もの命を奪い、14万棟近くの住宅が被害を受けました。
公費解体による建物の撤去は、11月末時点で1万1020棟。
全体の34%。石川県は計画を上回るペースだとしていますが、9月に能登を襲った豪雨で被災した建物の解体はまだ始まっておらず、度重なる災害で復旧・復興にはまだ時間が必要です。また、液状化によって町全体が傾き、暮らしの再建に向けいまだ困難な模索が続く地域もあります。
死亡者数 | 負傷者数 | 避難者数 | 住宅被害 | 断水状況 |
- 堀潤氏
- 私が発生直後に訪ねた内灘町では、自力での住宅再建は難しく「激甚災害に指定して欲しい」と国からの支援を切実に訴える被災者の方にもお話を伺いました。
一方、伝統産業である輪島漆器については、職人の8割が被災したと言われましたが、技術と文化を絶やしてはならないと、逆に海外への販路拡大やデジタル化など、新たな挑戦を続けることによって、職人の皆さんを支える動きもあります。
インフラ老朽化や人手不足など復旧復興を阻む、過疎や高齢化と向き合う僻地での災害対応の課題は、決して能登だけのものではありません。政治の関わり方も含め日本全国の問題として、我々国民それぞれが、2025年も取り組まなくてはならない深刻な課題です。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機「SLIM(スリム)」が1月20日、日本初の月面着陸に成功しました。SLIMの機体などの開発には、日本企業の技術が結集。国内ではロケットや探査機の打ち上げが続々と予定されており、宇宙ビジネスの飛躍へ期待が高まりました。
スウェーデンが3月7日、北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟しました。スウェーデンのクリステション首相が同日、米ワシントンでブリンケン国務長官にNATO加盟の関連文書を手渡し、手続きが完了しました。新規加盟は昨年4月のフィンランド以来で、NATOは北欧全域に拡大しました。
米映画界最高の栄誉とされるアカデミー賞の授賞式が3月10日、ロサンゼルスで開かれ、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメ映画賞、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」も視覚効果賞を獲得し、日本作品のダブル受賞となりました。
1〜3月その他のニュース
- 日航機、海保機と羽田空港で衝突炎上
- 京アニ放火殺人事件 青葉被告に死刑判決
- 連続企業爆破事件 桐島聡容疑者名乗る男死亡
- 日銀がマイナス金利解除で17年ぶりの利上げ
- ドジャースが大谷選手の通訳、水原一平氏を解雇
- 紅麹サプリで健康被害 小林製薬が記者会見
【4〜6月】ライドシェア始動、共同親権法成立、台湾新総統誕生、大の里最速V
全国各地でタクシー不足が問題となる中、移動手段の確保に向け、一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を送迎する「ライドシェア」が4月8日、スタートしました。国の規制緩和に伴うサービス開始ですが、運行できる地域や時間が限られるなどの課題も多く、タクシー不足解消につながるかは未知数です。
離婚後も父母双方が子の親権を持つ「共同親権」を導入する民法などの改正法が5月17日に成立しました。
離婚後は父母どちらか一方の「単独親権」に限る現行制度が77年ぶりに見直されます。新制度は2026年までに始まる見通しです。
共同親権のメリット・デメリット
新制度では、父母の協議で共同親権か単独親権かを選択可能とすることが柱となっています。協議不調の場合、家裁が「子の利益」を考慮して、どちらにするかを決めます。共同親権により何が変わるのでしょうか。メリットやデメリットについて、離婚や男女問題、相続などを中心に弁護士として活動する佐藤みのり氏はこう話します。
- 佐藤みのり氏
- 「共同親権」という新たな選択肢が増えることにより、各家庭の事情を踏まえ、子の利益に最も適う選択が可能になります。共同親権のメリットとしては、離婚後も、父母がともに子に対して責任を持ち、関わり続けることになり、子にとって両親からの愛情を感じられる機会が増えることなどが考えられます。
一方、共同親権になると、子にとって重要な事柄は父母で決める必要がありますが、父母の意見が合わないと、家庭裁判所で決着をつけなければなりません。デメリットとしては、子にとって重要な事柄を決めるのに時間がかかり、子の利益に反する場面が出てくることなどが考えられます。
また、DVや虐待の恐れがある場合には単独親権にするとされていますが、共同親権が悪用されるリスクも指摘されています。
- 佐藤みのり氏
- 共同親権制度が始まると、家庭裁判所の負担が増すことが予想されます。
家庭裁判所には、DVや虐待の恐れがある事案を見抜く高い専門性、また、共同親権下の父母の意見が合わない場合に、迅速に解決する体制が求められます。共同親権のメリット、デメリットは、家庭裁判所の体制整備にもかかってくるでしょう。
台湾で5月20日、民進党の頼清徳氏が総統に就任しました。頼氏は副総統として、中国と距離を置く蔡英文前総統を支えてきました。中国の「祖国統一」圧力が増す中、頼氏は就任演説で「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と訴え、台湾と中国の正式名称を用いて双方が対等の関係だと主張しました。
大相撲夏場所千秋楽は5月26日、東京・両国国技館で行われ、新小結の大の里が12勝3敗で初優勝を果たしました。初土俵から最速の7場所目での賜杯獲得となりました。
4〜6月その他のニュース
- 川勝・静岡県知事が職員訓示問題で退職届
- 「つばさの党」の黒川敦彦代表ら3人を逮捕
- トヨタ、ホンダなど5社で認証不正
- 改正政治資金規正法が成立
- 台湾でM7級の大地震 25年ぶり規模
- 円安、38年ぶり1ドル160円60銭台に
【7〜9月】パリ五輪、大谷史上初の「50ー50」、袴田さん無罪判決、自民新総裁に石破氏
第33回夏季五輪パリ大会が7月26日に開幕しました。日本は金メダル20個を獲得し、銀12、銅13を含むメダル総数は45個に上り、金の数と総数は海外開催の五輪で過去最多となりました。
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手は9月19日、敵地マイアミでのマーリンズ戦に1番指名打者で出場し、大リーグ史上初のシーズン「50本塁打、50盗塁」を達成しました。
1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審判決で、9月26日、静岡地裁の国井恒志裁判長は、無罪を言い渡しました。判決は捜査機関による証拠の捏造を認定し、袴田さんについて「犯人とは認められない」と結論付けました。
岸田文雄前首相の後継を決める自民党総裁選は9月27日、党本部で投開票され、石破茂元幹事長が決選投票で高市早苗経済安全保障担当相を逆転で破り、第28代総裁に選出されました。
石破政権の経済政策、暮らしへの影響は
物価高騰が続く中、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミストの藤代宏一氏はこう語ります。
- 藤代宏一氏
- 現時点で具体案は明らかになっていませんが、何らかの形で「年収の壁」が崩れるのは間違いなさそうです。人手不足が問題となる中、家計の所得を増やすという意味においても、「働きたいだけ働ける」環境を整備することは重要です。一方、独身や夫婦ともに正社員という方々にとって、「103万円の壁」は他人事のように感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。仮に国民民主党が主張するような形で所得税の基礎控除が引き上げられた場合、既に103万円以上の収入がある方も減税対象となり、手取り(可処分所得)が増加する可能性があります。
賃金の上昇率が約30年ぶりの高水準にあるにもかかわらず、生活に身近な食料品や日用品の値上げがきつく、個人消費は精彩を欠いていますが、最低賃金の引き上げなど賃金上昇を促す政策の下、来年以降も賃金が高い伸びを維持する可能性が増していることは安心材料です。
なお、基礎控除が引き上げられた場合は、財政の問題もあり、電気ガス代の補助といったバラマキ型の政策は打ち止めになるかもしれません。
7〜9月その他のニュース
- 旧優生保護法は憲法違反 強制不妊、最高裁が国に賠償命じる
- 20年ぶり新紙幣発行 偽造防止に世界初の3Dホログラム技術
- 秋田県・山形県で記録的豪雨
- トランプ氏暗殺未遂、演説中に銃撃
- 南海トラフ「巨大地震注意」初の臨時情報、宮崎で震度6弱
- 中国・深圳で襲撃受けた日本人の男児が死亡
- 「SHOGUN 将軍」がエミー賞史上最多の18部門で受賞
- 能登半島に大雨特別警報 仮設住宅も被害
【10〜12月】日本被団協にノーベル平和賞、衆院選自公過半数割れ、米大統領選挙トランプ氏勝利、韓国「非常戒厳」
ノルウェー・ノーベル委員会は10月11日、2024年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表しました。核兵器廃絶を求めて1956年に結成されて以来、70年近くにわたり国内外で被爆体験を積極的に発信したことが評価されました。
10月15日公示、27日投開票の衆議院選挙では、自民党が公示前の256議席から大きく減らし、単独過半数の233議席を割り込みました。公明党と合わせた与党に、自民非公認候補を加えても過半数に届きませんでした。
米大統領選は11月5日に投開票が行われ、2度の暗殺未遂をくぐり抜けて返り咲きを狙った共和党のドナルド・トランプ前大統領が、女性初の大統領を目指した民主党のカマラ・ハリス副大統領を激戦の末に破り勝利しました。
日本への影響は
「米国第一」を掲げるトランプ氏。11月にはメキシコや中国などに対する関税引き上げを表明し、対象国に工場を置く日本企業が打撃を受ける懸念も強まっています。日本や私たちの生活にはどのような影響があるのでしょうか。アメリカ政治を専門とする、成蹊大学法学部政治学科教授の西山隆行氏はこう指摘します。
- 西山隆行氏
- 第2期トランプ政権では自国第一主義的な主張が強まると予想できます。
岩盤支持層からの支持調達のために他国に負担を求め、取引するのがトランプの手法です。日本は同盟国ですが、トランプ的世界観のもとでは、米国の役に立つ同盟国は仲間ですが、役に立たない同盟国は裏切り者とされかねません。
第1期と違いトランプは外交経験も積んで自信を持っているので、政権基盤に不安のある日本への要求はより強くなるでしょう。防衛費の増大、米国内での投資拡大などが要求されることになるでしょう。
ただし米国内も一枚岩にまとまっているわけではありません。トランプ政権は環境問題に消極的で化石燃料への回帰を進めると思いますが、カリフォルニア州などは独自に環境規制を強化する可能性もあります。トランプ政権も4年で終わりますから、政府も企業も世界的趨勢を踏まえて、多角的な判断をすることが重要になります。
韓国の尹錫悦大統領は12月3日、野党が多数の政府官僚の弾劾を試み、「国政がまひ状態にある」などとして、1987年の民主化後初めて「非常戒厳」を宣言しました。
10〜12月その他のニュース
- 東京都が全国初のカスハラ防止条例
- 福井中3殺害、再審開始へ
- イスラエル、ハマス最高指導者を殺害
- 福島第一原発、初のデブリ取り出し
- プロ野球 DeNAが26年ぶり日本一
- 内部告発問題で失職の兵庫県知事が再選
- ホンダと日産、経営統合協議入りを正式発表
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※時事通信社の記事よりテキストを利用しています。
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