今回の大河ドラマ「どうする家康」では、ついにムロツヨシさん演じる木下藤吉郎」が登場した。のちの羽柴(豊臣)秀吉である。たしかに、若い頃の藤吉郎は「猿」あるいは「はげ鼠」と呼ばれていた。お世辞にも容姿端麗ではなかったようだ。 後世の編纂物や小説を読むと、藤吉郎は明るくひょうきんに描かれている。とはいえ、柴田勝家に蹴飛ばされても黙っているとか、松平元康らに「私を蹴飛ばしてください」というのはあり得ないし、異様としか言いようがない。そういうことを記した史料もないだろう。 藤吉郎が史料上にあらわれるのは数年先になるが、いかに藤吉郎は農民の出身とはいえ、武士身分となっていた。武士は非常に誇り高く、辱めを受けた場合は、恥を雪ぐため懸命に戦ったほどだ。 とはいえ、藤吉郎に才覚があったのはたしかで、それゆえに織田信長に登用された。もう少し藤吉郎の良い面を描いてみてはどうだろうか?
コメンテータープロフィール
1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。
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