見解原告は、40年間ずっと具合が悪かったわけではありません。入院加療が必要な時期もあったが、退院をしたいと伝えても認めてもらえないので諦めてしまったり、仕事をすれば退院が近づくと信じ病院で懸命に働いたり、悪化したり、また軽快して楽しく過ごす努力したり、そんな時の流れのなかで生きておられました。40年間退院手続きに至らなかったことは、ご本人の問題ではなく、そんな原告のような方の長期入院を可能にしてきた、精神医療の制度や政策の問題だとして国を訴えたのです。 今日の判決で裁判所は、統合失調症などの精神疾患を有する患者について、「患者本人が適切な判断ができず、(略)本人の利益を守るために、本人の同意がなくても入院が必要になる場合があることは公知の事実」だと前置きし、そのために長期化したのだとすれば、制度や政策の問題であることを否定しています。40年間もの拘束に対し、大変解像度の荒い判決だと感じました。
コメンテータープロフィール
近年は、引き出し屋と社会的養護を取材。その他、学校安全、災害・防災、科学コミュニケーション、ソーシャルデザインが主なテーマ。災害が起きても現場に足を運べず、スタジオから伝えるばかりだった気象キャスター時代を省みて、取材者に。主な共著は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、『下流中年』(SB新書)等。
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