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田中宝紀

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者

田中宝紀

1979年東京都生まれ。16才で単身フィリピンのハイスクールに留学。 フィリピンの子ども支援NGOを経て、2010年より現職。「多様性が豊かさとなる未来」を目指して、海外にルーツを持つ子どもたちの専門的日本語教育を支援する『YSCグローバル・スクール』を運営する他、日本語を母語としない若者の自立就労支援に取り組む。 現在までに35カ国、750名を超える子ども・若者を支援。日本語や文化の壁、いじめ、貧困などこうした子どもや若者が直面する課題を社会化するために、積極的な情報発信を行っている。2019年度、文科省「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」委員。

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    • 田中宝紀

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      技能実習制度の建前は「開発途上国等への技術移転を通した国際協力」となっていますが、実態は安い労働力を使いすてる現代の奴隷制度に他なりません。この建前と現実との乖離を直視しないまま、対処療法的に取り締まっても課題解決は困難です。韓国では、日本の技能実習制度を手本に「外国人産業技術研修生制度」を創設しましたが、日本と同様の課題を抱え、深刻な人権侵害と実習先からの逃亡・不法就労を引き起こしたため廃止となりました。(現在は「雇用許可制」を採用)
      改正入管法により創設された単純労働分野の在留資格「特定技能」は、事実上、技能実習制度の期間延長策となっています。外国人を人としてみることなく、労働力としてのみ扱う制度の限界はすでに明らかです。今後、外国人労働者に対する不当な搾取制度を温存することは、日本の国際的信用を今以上に損なうものであり、早急に廃止を前提とした議論を開始すべきです。

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      日頃から海外にルーツを持つ子どもを接点に、学校の先生や管理職、教育委員会職員の方々とお話しをする機会は多いが、「きちんと対応したいけれど、手が回らない」と言うケースは少なくない。現在政府は、公立学校における日本語指導について「研修」を行う事で教員免許保有者が担うことを前提としているが、教員が研修を受ける時間的余裕すらない状況もある。
      海外ルーツの子どもを含め、学校に求められることは多様化している。「学校の先生だけが、学校の中だけで」対応していくこと自体の限界が迫っている。

      事務、部活、英語、プログラミング、日本語教育など、企業や専門性のあるNPOなど外部人材を活用できる部分について積極的に協働を進めることで先生の負担軽減につながるだけでなく、各分野における教育活動の質の向上にもつながる。行政だけで抱え込むことなく「地域とともにあるコミュニティスクール」へと変化していく必要がある。

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      やさしい日本語での会話は、医療の専門家でない通訳者にとっても「訳しやすい日本語」であるだけでなく、子どもや高齢者など外国人以外にとっても理解しやすいユニバーサルな日本語だ。医師の話すことがよく理解できないのはなにも外国人に限ったことではないだろう。「医療用語が理解できる日本語力」を外国人に求めるのであれば、日本で暮らそうと思う外国人はいなくなってしまう。今、外国人人材を必要としているのは私たち日本社会であり、その受入れに正式に門戸を開いている以上は適切に対応することが必須だ。
      一方で医療用語は難解で、場合によっては誤訳で命にかかわる事態も懸念される。告知や治療方針など専門通訳でなければ担えない場面もあるだろう。通訳が必要な場面とそうでない場面などのガイドラインを設けてはどうか。医療従事者が安全に治療でき、外国人も安心して医療にかかれるよう、現場にとって必要な環境の整備を一日も早く進めたい。

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      議論も不十分なままに成立した改正入管法。数々の問題が露呈した技能実習制度とは異なるとしながらも、あらたな在留資格「特定技能」は、実質実習生制度の延長策という側面を否定できません。実習生として入国し、特定技能1号に移行して後5年間を満期で働いたとすれば、「働き盛り」の多くの期間を日本で暮らすことになります。
      彼らがいつか帰るのだとしても、日本にいる間は共に社会を構成する一員であることに間違いありません。「働き手」であると同時に、日々の買い物や必要なサービスを購入する「顧客」であり、「労働者」である以前に1人1人の豊かな人生を持つ人間として、すぐ側で日々の暮らしを営みます。
      これから先は、今まで以上に私たちが誰一人として彼らやこの一連の流れと無関係ではないという自覚が必要であり、今後定められる入管法の「中身」や、共生のための数々の施策に関する議論に、1人1人の積極的な関与が求められています。

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      日本の歴史的転換点とも呼び得るほどの事案にも関わらず、議論の時間も内容も不十分なままの採決となりました。本来であれば、この入管法改正案が「省令等で定める」と後回しにしている制度の中身こそ、国民的議論の土台となり、制度の輪郭を見出すために必要な前提であるべきものです。今回の一連の流れは「拙速」であると同時に、そもそも順番が逆であるとしか言いようがありません。
      日本社会にはすでに250万人を超える技能実習生や定住外国人が暮らしています。その数はこの5年間で49万5千人以上増加。彼らが社会の一員として暮らすために必要な制度を持たないまま、長きにわたってその対応を地方自治体に丸投げし続けたことで、すでに多くの深刻な課題が発生しています。今後も「一時的な労働力の補充」として、その数だけを増やそうとするのであれば、これらの課題はより深刻化し、地域に少なからぬ混乱を招く可能性は小さくないと見られます。

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      日系4世受入れ目的には、「…日本文化を習得する活動等を通じて日本に対する理解や関心を深めてもらい,もって,日本と現地日系社会との結付きを強める架け橋になる人材を育成する。」という社会貢献性が全面に押し出されています。人手不足が深刻化し、「国際貢献」が主たる目的であるはずの技能実習生を労働力として公然と当てにしているような時代に、日系四世受け入れ拡大に関しては社会貢献であるという建前が本音だとは信じられません。4,000人を見込んだはずの日系4世がたった2名しかいなかった事実は、こうした「胡散臭さ」を日系人は敏感に嗅ぎ取っていることの証左です。同様に技能実習制度の悪評も、SNSなどを通じて送り出し国に広まり、ベトナムでも都市部では実習希望者が集まりづらくなっていると言います。「門戸を開けば必ず外国人が集まる」時代が終わろうとしている中で、上から目線の「受入れ」を見直さなくてはなりません。

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      今国会での成立ありきで進めるにはあまりにも問題が多岐に渡る上、その1つ1つが複雑で課題が大きい。実質「移民社会」への転換となるかどうかの歴史的な岐路に立っており、未来の日本社会を左右する。
      日本にはすでに250万人以上の外国籍住民が生活し、その半数は定住可能な資格を持つ。これまで国はその対応を自治体にほぼ丸投げしてきた。自治体の温度差は大きく、実質対応できていない地域も少なくない。その結果、外国人の子どもの教育や地域での孤立など、多くの課題を生んできた。受け入れる、受け入れない、移民だ、移民じゃないと言う前に、現在生じている問題への対応を急ぎたい。また、政府は多様な人々と共に暮らす日本の未来をどのようにデザインするか、まずはそのビジョンを示し、国民に説明すべきだ。そのビジョンへの賛同を得て、現在の諸課題への解決の道筋をつけ、そのうえで初めて「受入れ拡大」が可能になるのではないだろうか。

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    • 田中宝紀

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      外国人保護者は一般的に、日本語の壁などから子育て中に孤立しやすく、子育てサークルなどの社会資源や必要な情報へのアクセスが限定的になりやすい。
      現在、日本で生まれる赤ちゃんの約30人に1人が外国籍の親を持つ。日本で生活する外国人は右肩上がりで増加していく中で、第1子以降、子育て期の大半を外国である日本でというケースも増えるだろう。言葉も習慣も異なる中での妊娠、出産と育児は強い不安を伴う。このケースについての詳細は不明だが、外国人保護者が子育て中により追い詰められやすい現状は、今後の外国人住民の増加を見据えても、早急に改善すべきである。事件のあった神奈川県では国際交流財団が外国人住民の妊娠・出産・子育て支援に必要な情報を多言語で提供するホームページを2017年に開設したばかりで、こうした取り組みの一層の推進はもちろん、社会全体で共生社会への具体的な方策について議論し実施していくべきである。

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    • 田中宝紀

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      日本の難民認定制度は厳格に過ぎるところがあることは数多くの指摘がなされているところです。難民認定率も欧米諸国と比べると低すぎる傾向が見られ、国際社会の一員として、法務省による「難民の可能性が高い申請者は1%程度」の見解の出所となる基準自体から見直しをすべきであると共に、日本社会の中で難民に対する正しい知識を広げていく必要があります。
      また、偽装難民対策は一定程度で実施されるべきですが、一方で偽装難民が発生する背景に、人材を必要とする日本の企業と適切な移民政策の不在があることは念頭に置かれなくてはなりません。日本でならアルバイトが週28時間可能であるから、と働くことを目的に日本語学校に入学する「偽装留学生」も同様の背景を有しています。
      移民・難民の課題は遠い国の出来事ではなく、深刻な人口減少に直面する日本社会の中にすでに発生している現在進行形の、私たち自身の問題です。

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    • 田中宝紀

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      日本で暮らす外国人は238万人。その半数以上が日本国内に定住・長期滞在が可能な資格を有し、日本社会の一員として生活を営んでいます。国籍を問わず、水原さんのように幼少期から日本で育つ外国ルーツの子ども・若者も増えています。
      日本はすでに、多様な人種・言語・文化を持つ方々が構成する社会へと変化し始めています。OECD統計において2014年度には世界第5位の移民受入国となりました。
      こうした事実を無視し、ヘイト投稿やコメントを野放しにし続けることは、民族的マイノリティを今以上に抑圧・周縁化し、社会的な分断のリスクを高めることになりかねません。
      今回の件だけでなく、今後も同様の事態が発生した際には、関連企業が毅然とした対応を図り、日本がすでに多様な人々が共に暮らす社会である、という事実を「当たり前」のイメージとして共有できるよう推進していくことを求めます。

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