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六辻彰二

国際政治学者

六辻彰二

博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。

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      記事にあるように、30年以上にわたってスーダンを支配したバシール大統領が抗議デモの広がりとクーデタで失脚し、抗議デモで女性が大きな役割を果たしたことが、この改革の糸口になったことは間違いない。

      ただし、その一方で、この改革にはアメリカおよび西側との関係改善のメッセージも含まれているとみた方がよい。バシール政権のもと、スーダンは欧米と対立し、中国との関係を深めた。しかし、油田の多くが位置する南部が2011年に南スーダンとして独立したことをきっかけに中国は徐々にスーダンと距離を置き始め、近年ではアメリカとの貿易摩擦やコロナをきっかけに経済停滞するなかで、スーダンのみならずアフリカ向けの援助を減らし始めている。

      こうした状況で、バシール政権を打倒した新体制が中国との関係を見直し、欧米との関係改善を模索するなか、人権侵害に敏感な欧米の歓心をひく一つの外交手段としてこの改革が実現したとみられる。

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      大変読み応えのある記事で、論旨もほぼ賛同できる。とりわけ、自由な社会と権威主義体制のどちらが優れているかの情報戦が発生していることはその通りだろう。
      あえて一つ補足するなら、情報戦の矛先は主に途上国だろうということだ。
      とりわけ中国にとって途上国は冷戦時代から重要な支持基盤であり続けてきた。台湾から国連代表権を勝ち取ったのも、国連の多数を占める途上国の支持を得たからだし、天安門事件で西側から制裁を受けた際も、同じような状況を抱えていたほとんどの途上国は中国の立場を認めた。中国が途上国で大きな影響力を持った現在でも、この構図は基本的に変わらない。
      つまり、アメリカはコロナをきっかけに途上国での中国の立場を崩そうとしており、逆に中国は「コロナを封じた」と強権的な支配の有効性を開発途上国に強調しているとみてよい。いわば米中は、どちらにも付き得る国を念頭に、派手な外交戦を演じているといえるだろう。

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      実際に火の手があがる可能性でいえば、北朝鮮よりイランでの方がかなり高い。北朝鮮はアメリカとの交渉を望んでいるが、イランの場合はそれが負けに近いものになるからだ。
      とはいえ、イランを相手にまともに衝突するのは、アメリカといえどもリスクが大きい。イランの弾道ミサイルはヨーロッパの一部まで射程に収めているうえ、レバノン、イエメン、シリアなどにあるイランの支援を受けた武装組織が同時多発的に行動を開始するリスクもある。ロシアの動向もアメリカの懸念材料だろう。
      そのため、アメリカが行動を起こすとすれば、イランそのものに対してではなく、イラクで勢力を伸ばすイラン支持のシーア派武装組織に対してのものになる公算が高い。その場合、冷戦時代に米ソが直接対決できないなか、ソ連からみた周辺部ベトナムの共産主義政権を攻撃したのに近い構図が生まれるとみられる。しかし、その場合でも戦火が拡大するのは間違いない。

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      大量殺人というと白人至上主義などに感化された銃の乱射が思い起こされやすい。もちろん、こうした事件も少なくないが、41件の大量殺人のうち家族内のものが18件あった。オレゴン州で42歳の男がオノで母親や9歳の娘などを殺害した事件はその典型だ。調査したAPやノースイースタン大学は、ドラッグやストレス社会などの影響を指摘している。
      ただし、そうだとしても、大量殺人がこれだけ多発することには、アメリカが抱える根本的な問題があると思えてならない。一言で言えば、それは「力の思想」だ。アメリカでは政府から一般の人々に至るまで、対立を力でねじ伏せることを厭わない考え方が強い。それは開拓時代から超大国として君臨した歴史のなかで培われた、一種の文化ともいえる。訴訟社会であることや、ディベートの技術が発達したことは、この観点からすると不思議ではない。大量殺人の増加は、アメリカ文化の影を象徴するとみてよいだろう。

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      中国人バイヤーへの抗議は以前からあったが、ここにきて増えている。そこには戦術の変化がうかがえる。
      これまでデモ隊は大人数で公共の場を占拠することが活動の中心だった。しかし、最後の拠点だった香港理工大学が陥落して以来、人数は減り、逆に警備は厳重になった。そのなかでデモ隊は、よりゲリラ的に警備の薄いところを狙って活動し始めている。
      そこで中国人バイヤーが標的になるのは、彼らがデモ隊目に「共産党支配の末端」と映るからだ。記事の通り、中国人バイヤーは香港製品の転売で利益をあげているが、彼らが香港製品を大量に買い占めることは、ただでさえ物価が高い香港のインフレをさらに進ませるとみられている。本土の支配に便乗して利益をあげる中国人バイヤーは、香港の若者にとって生活苦の一因でもある。
      権力の中枢に無視され、抑圧された人々が、支配する側の末端に矛先を移したことで、香港情勢はより混迷の度を深める恐れがある。

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      今回、注目されたのは、やはりアメリカの反応だった。記事にあるように、これまでCIAなどはムハンマド皇太子の関与を報告してきた。しかし、アメリカ国務省は今回の判決が「この恐ろしい犯罪の責任を究明する一歩になった」とする声明を発表。「サウジが公正で透明な司法手続きを行うことを支持する」と述べるにとどまった。
      ムハンマド皇太子の体制になって以来、サウジアラビアはそれまで以上にアメリカとの関係を強化している。とりわけ、安全保障分野で、サウジはイラン封鎖の急先鋒としてトランプ大統領と足並みを揃えているだけでなく、アメリカ製兵器の大輸入国でもある。この「蜜月」は、ホワイトハウスが情報機関や他の省庁を押さえてでも、サウジ政府が描く「ムハンマド皇太子の関与はなかった」での幕引きに協力させる背景になっている。対立する国の人権侵害にはやかましいが、友好国には寛容なダブルスタンダードが浮き彫りになったといえる。

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      スー・チー氏の論理には二つの問題がある。
      第一に、残虐行為をほぼ認めながら、その意図を否定したことだ。個人による犯罪でも、意図的な殺人と過失致死では罪の重さが違う。しかし、仮にミャンマー軍にその意図がなかったとしても、「残虐行為はあった」と認めるなら、当初の「ラカイン州で組織的な殺戮はない」と説明と全く矛盾する。後になって、少なくとも事態そのものを認めたなら、当初は何も確認しなかったか、あるいは軍をただ擁護したか、となる。
      第二に、この提訴が「ラカイン州の状況に関して、不完全な像を示した」と述べた点だ。誤解や情報不足があるというなら、ラカイン州の状況を外部に見せなければ説得力はない。しかし、ミャンマー政府・軍は、ラカイン州への外国人の立ち入りを厳しく制限している。何も見せずに信用しろと言われても無理な話だ。おそらく、スー・チー氏は百も承知の上で、それでもそうとしか言えなかったのだろうが。

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      この問題に関して目を引くのがイスラーム圏の反応だ。10月末、国連総会第三委員会では、欧米の23カ国が中国政府を批判したのに対して、54カ国は中国による「新疆の管理」を支持した。そのなかにはイスラーム諸国も含まれる。
      イスラーム圏の多くがこの問題に寛容な最大の理由は、中国の経済協力への期待がある。なかでも目立つのがトルコの静けさだ。
      ウイグル人はトルコ系で、これまでトルコ政府はウイグル問題に関して「大量殺戮」など激しい言葉を用いて中国を批判してきた。ナショナリズムを鼓舞するエルドアン大統領にとって、中国批判は格好の材料ともいえる。
      しかし、トルコ政府は7月、「ウイグル人の状況を確認するため」代表団の派遣を発表したが、その成果は伝えられない。アメリカとの貿易摩擦で経済が失速するトルコにとって、中国の投資はこれまで以上に重要になっている。こうしてウイグル人はイスラーム世界で見捨てられつつある。

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      ストライキ参加者のかずは、内務省の発表では80万人だが、フランス労働総同盟は150万人と発表している。これほどの規模のストライキは、「デモと革命の国」フランスでも滅多にない。それほどマクロン政権の年金改革の評判は悪く、世論調査では69%がストライキを支持している。
      ただし、その一方で、BBCなどの世論調査によると、75%が年金制度の改革そのものの必要性は認めている。
      フランスの定年は62歳で、主要先進国のなかで定年年齢が最も低い国の一つだ。高齢化が進むなか、充実した年金が財政負担を大きくしていることは間違いない。
      そのため、マクロン大統領はこれまで業種ごとに分かれていた年金制度を統合し、さらに定年年齢もさらに引き上げることを目指してきた。その方向性自体は避けられない改革だとしても、支給額が減少する人々からは受け入れられにくい。ビジネス寄りの姿勢が目立つことで、より政権は不人気になっている。

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      中村氏は日本のNGOのなかでも現場に深く関わる活動の先駆けの一人だっただけに、残念でならない。それと同時に、この事件は日本の国際協力の課題を改めてあぶり出している。
      アフガニスタンに限らず紛争地帯などで活動する援助関係者が襲撃や誘拐される事件は年々増えている。そのため、欧米の巨大NGOのなかには、自国あるいは同盟国の部隊と協力することで安全を図ることが少なくない。
      本来、現地の人々のために活動する援助関係者が襲撃される一因には、テロ組織などからさえはぐれた、何の大義もない、ただの山賊と変わらない武装組織が各地で林立していることがある。今回の事件ではタリバンが関与を否定しているが、それが正しいとすると、中村氏はただの山賊の凶弾に倒れたことになる。
      中村氏の訃報は、日本が今後、紛争地帯や災害地帯に支援を増やすなら、援助関係者の安全確保が大きな課題になることを、改めて問うているといえる。

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