前田恒彦

元特捜部主任検事 報告 オーサー

旧経営陣に道義的責任を超えて刑事責任まで負わせるためには、(1)原発の全電源喪失で原子炉冷却が不能となるほどの大規模津波を予見できたことと、(2)その予見の程度に見合うだけの対策をとらなかったことが立証されなければなりません。

報道では(1)ばかりがクローズアップされていますが、2008年の想定津波の試算を前提としても、約3年後である2011年3月の事故に間に合い、かつ、これを確実に回避できるだけの防潮堤の設計や建築などが実際に可能だったのか、という問題もあります。

今回の判決は、(1)について予見可能だったと断定するのは困難だとしただけでなく、(2)の回避可能性についても証拠上は不明だということで、旧経営陣を無罪としたものです。検察審査会の起訴相当議決で強制起訴に至った事件だけに訴追側の控訴も予想されますが、高裁で逆転有罪を得るには相当ハードルが高い無罪判決だと思われます。

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前田恒彦

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

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