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川上泰徳

中東ジャーナリスト

川上泰徳

大阪外語大アラビア語科卒、学生時代にカイロ大学留学。朝日新聞社でカイロ、エルサレム、バグダッドなどに特派員、編集委員として駐在。パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」など取材。中東報道で2002年度のボーン・上田記念国際記者賞受賞。夏・秋は中東、冬・春は日本と半々でフリーランスとして活動。 著書に新刊「『イスラム国』はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想」(集英社新書)「中東の現場を歩く」(合同出版)「イスラムを生きる人びと」(岩波書店)「現地発エジプト革命」(岩波ブックレット)「イラク零年」(朝日新聞)◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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      テロが起きたカティーフ(「クデイフ」は方言の発音)はサウジのシーア派の中心都市。ISの犯行声明というのは多分、後付け。サウジ国内でISを支持するスンニ派厳格派勢力のシーア派攻撃をISがお墨付きを付けたということだろう。この記事でも、ほかの新聞でもサウジ政府が空爆したイエメンのシーア派「フーシ」と関連づけているが、目を向けるべきはイラク、シリア情勢だ。イランが主導し、イラクのシーア派民兵やレバノンのヒズボラを使った軍事介入によるシーア派ベルトの構築に反発するスンニ派の間に、「対シーア派ジハード」が広がっている。それがカティーフに及んだとみるべきだ。ISにサウジの若者2500人が参戦しているという情報もあるが、そのような若者たちと、サウジにいるIS支持の若者たちの間で連絡をとっているはずで、サウジ政権にとっては、国内のIS支持者が暴力に走るのは、国内の治安にとっては非常な危険な動きとなる。

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      アンバル州の州都ラマディはドレイミ族など、サダム・フセイン時代の軍や情報関係の主力を担った最強のスンニ派勢力の拠点。ISがラマディを制圧したということは、ISがスンニ派部族と協力関係を固めたことを意味する。アンバル州ではイラク戦争後に1300人以上の米兵が戦士しており、ラマディのスンニ派部族がシーア派主導の中央政権と協力してISに対抗しようと決めれば、ISは阻止できたはず。その意味では、ラマディ陥落は、マリキ政権と同様に、アバディ政権も、スンニ派部族勢力とのパワーシェアリングに失敗したということになる。アバディ政権はシーア派民兵組織を投入する方針のようだが、泥沼化する方向に向かうだろう。さらにバグダッドでも、アンバル州のファルージャやラマディに近い地域はスンニ派の強硬派住民が多いところもあり、2006年-08年のシーア派・スンニ派抗争の時のように、バグダッドの分裂にもつながりかねない。

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      エジプトのムルシ元大統領に死刑判決で、日本のメディアはモルシの出身組織のムスリム同胞団の過激化の可能性を書いている。同胞団が武装闘争路線をとればエジプトは90年代のアルジェリア化する。しかし、これまでにそうならなかったわけで、今後もその可能性はないだろう。イスラム主義の政党で、武装闘争をするかどうかは状況に応じて変わるわけではなく、組織の在り方の根幹にかかわる。同胞団が小さい組織なら、組織の存立が脅かされれば武闘化するかもしれないが、同胞団は所帯が大きすぎる。草の根的な社会活動で、民衆の支持を得て、選挙すれば勝つと思っている組織だから、もっと現実的な思考だ。しかし、武装闘争をイスラムの正義と考える者たち、特に弾圧に怒りを募らせる若者たちが同胞団を飛び出て過激派組織に入ったり、過激派組織をつくる動きはあるかもしれない。イスラム過激派の多くは60年代のナセル時代の同胞団弾圧で生まれたのだから。

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      アブアリ・アフリの死亡を発表したのはイラク国防省で、米軍筋は「情報はない。モスクは空爆していない」とする。真相は不明。アフリは4月くらいから有志連合の空爆でけがをしたバグダディの代わりに「イスラム国」を率いているといわれてきた。1998年にアフガニスタンに行ってアルカイダに参加したとされ、イラク戦争後にイラクに戻り、「イラク・アルカイダ」から「イラク・イスラム国」の幹部になったという。バグダディに比べても、指導力や実務能力があり、カリスマのある人物という情報がメディアには流れていた。この数日のアラブのメディアでは、アフリがモスルの大モスクでの金曜礼拝の説教を、バグダディに代わって行ったとして、後継者になったと受け止めるようなニュースが出ていた。死亡したとすれば、その矢先ということになる。