Technology2015.01.15

速く、正確に――「機械×人」の総合力で挑むYahoo!ニュースアプリの最前線

2015年もYahoo!ニュースならびに当ブログをよろしくお願いいたします。

昨年はYahoo!ニュースにとって、月間100億PVの半数をスマホが占めるなど、スマホ利用の成長がみられた年でした。今回は、その成長を支えている「Yahoo!ニュース公式アプリ」の裏側、特に「プッシュ通知機能」をクローズアップ。関係者の話を交えながらご紹介したいと思います。(同アプリと「Yahoo! JAPANアプリ」との違いや、それぞれのアプリのユーザー傾向などについてはこちらの記事をご覧ください)
 
Yahoo!ニュースアプリのプッシュ通知機能は現在、災害情報や国内外の重要なニュースを不定期でお届けする「号外ニュース通知」、設定地域のユーザーに地震や津波などの災害情報をお届けする「防災通知」などがあり、ユーザーのお好みに合わせてカスタマイズすることが可能です。(プッシュ通知機能についての詳細や設定方法については、「iOS版ヘルプ」「Android版ヘルプ」をそれぞれご覧ください)

↑指定した時間に最新ニュースが届く「定時ニュース通知」の一例

「ちょっと、新しいプッシュ作ってよ」ーー衆院選を振り返る

昨年11月末には衆院解散、そして12月14日には衆議院議員選挙の投開票がありました。「公共性と社会的関心」を編集方針とするニュースサービスとして、国政選挙はサービスの使命をかけて伝えるべき出来事のひとつといえます。
しかし今回は突然の解散ということもあり、解散から投開票まで残された準備期間は約3週間。ヤフーでは特集ページ「衆議院選挙2014」の開設など全社的にさまざまな取り組みを行いましたが、Yahoo!ニュースアプリのプッシュ担当者や関係者らに当時を振り返ってもらいました。

社内の一部フロアでは、解散にあわせて「衆院選対策本部」を設置(トップの写真)。
上記写真は、ニュースや特集ページなどの開発者会議の様子(2014年12月撮影)

――まず開発面について。衆院選に向けて実施したことは

開発担当・谷田川将之 衆院選にあわせて「号外ニュース通知」に新しい機能を追加しました。これまで号外ニュースは、編集部が重要と判断したニュースを号外としてプッシュ通知でお知らせしていました。
一方で、Yahoo! JAPANのコンテンツの中には今回の特集ページをはじめ、記事ではなくても社会的に重要度の高いものも数多くあります。そういった「記事にはなっていない社会的に重要な情報」も1分1秒でも早くユーザーの皆様にお届けするために、「号外ニュース通知」としてプッシュ通知でお知らせできるようにしました。

――開発の際に工夫した点があれば

谷田川 衆院解散の日にアプリ責任者の河野から「ちょっと、新しいプッシュ作ってよ」と指名され、開発に着手しました。開発期間にはあまり余裕がなかったので、企画担当や同じ開発担当のメンバーとコミュニケーションを綿密に取りながら、スケジュール通りに進めることを特に意識しました。当たり前のことなのですが、今回のように急に機能追加が必要になった場合でも、そのあたりを忘れず意識することで対応することができたと思います。

総動員で臨んだ「18秒間」

――運用面などでは、当日までにどのような動きがあったか

企画担当・川合はつみ 今回の衆院選では当日の議席予測に加え、事前に投票する際の参考となるような情報や、投票の呼びかけなど、衆院選関係のプッシュを選挙期間中に計5回打ちました。
議席予測に関するプッシュについては、午後8時の投票締め切りと同時に特集ページを更新。その後通知を送るまでにかかった時間は18秒でした。

――午後8時00分18秒の議席予測プッシュ送信など、短い時間で対応するために工夫した点は

編集リーダー・伊藤儀雄 投票が締め切られる午後8時にあわせて、特集ページで議席予測を出すことが決まっていました。その議席予測をどのようにプッシュ通知するかについては、各媒体をはじめさまざまな情報を収集し、情勢をみながら準備を進めていきました。
当日はアプリだけでなく、PC、スマホなどさまざまな出面で同時に作業をこなす必要がありますから、開票終了までにどのような情報が配信されてくるか時系列で予測を立て、当日の編集態勢を組んでいきました。こうした対応には、編集メンバーの過半を占める報道機関出身者の知見や経験が生かされていますが、選挙経験のない新卒メンバーを選挙チームに組み込むなど、次の選挙でもノウハウが引き継がれるように考慮しました。

川合 準備から投開票当日までは、各職種で連携を取るための選挙専用の仮想空間のチャットルームを設けて担当者が即時に連携を取れるようにしたり、編集メンバーが作成した見出しなどを正確・迅速にお伝えするためにテストツールでリハーサルを実施したりしていました。これは余談ですが……指の筋トレをしておくよう命じられたほどです(笑)。
そのほか関係者間で確認作業の際に声を掛け合うなど、直接のコミュニケーションも積極的に行うようにしていました。事前の入念な準備や、エンジニア、デザイナー、企画、編集など各職種・各サービスの担当者と連携をとって取り組んだことが大きかったのではと思います。

速報性や正確さを重視する理由

――そもそも、なぜスピードや正確さにこだわるのか

伊藤 プッシュ通知はこれまでのウェブサイトではできなかったアプリ独自の機能です。これまでサイト訪問時にしか目にすることができなかったニュース速報をホーム画面で気づいてもらえるようになりました。ニュースの情報消費サイクルが速くなっている中で、プッシュ通知による速報性がますます重要になっていると思います。
一方で、ユーザーにとっては作業を中断してまで見てもらうわけですから、ただ闇雲に送るだけでは日常生活の邪魔になるだけです。いったん送ってしまえば修正がきかないプッシュ通知は、正確さが何よりも重要ですし、通知できる文字数にも制限があるので、事象が起きてから短時間で価値判断をして正確で最適な文言を考える必要があります。

スピードだけではなく「安定性」も――今後の課題と展望は

2015年、Yahoo!ニュースアプリのプッシュ機能はどのように変化していくのでしょうか。課題や展望について、あらためて聞きました。

左から、山下(開発リーダー)・川合(企画担当)・河野(Yahoo!ニュースアプリ責任者)・谷田川(開発担当)・多田(企画担当)

――アプリがリリースされて約1年半が経ったが

企画担当・多田和弘 プッシュ通知については「0.××秒」単位での通知速度の向上を図る一方で、いかに安定的にユーザーに届けるかといった面も重視しています。例えば、号外プッシュが送信されたことをリアルタイムで検知できる仕組みを用意して、プロジェクトのメンバー全員で受信できたかを毎回報告しあっています。

――リリース当時の取材記事(※関連リンク参照)を読み返していたのだが、この中で、有事の際のプッシュについて触れていた。現在は「防災通知」も実装されるようになった

多田  「防災通知」は地震や豪雨など災害関連の情報を届けることを強化するために実装した機能です。防災情報は命にかかわる情報なので、人の手でニュース価値を判断するよりも、いち早くお届けすることが重要なのでシステムで自動配信を行っています。また、通知する内容やレベルによっては、地域設定と連携して必要なユーザーのみに届けるようになっています。

現在のプッシュ通知機能設定画面(iOS版)
地震情報などをお届けする「防災通知」機能は2014年10月にリリース

※関連リンク
コンセプトは世の中の“今”を知る 「Yahoo!ニュース」アプリの狙いとは?(2013年7月13日)

パーソナライズの究極は「命」

――今後の展望や取り組んでみたいことは

開発リーダー・山下元 号外や防災情報など、何かが起きたときにそのニュースを素早く一斉に届けるという部分は整ってきたので、今度はユーザーごとに最適なニュースを最適なタイミングでお届けする、パーソナライズなプッシュにも挑戦していきたいですね。あとはYahoo!ニュースの強みでもある編集力をもっと活かしたプッシュなども考えています。もちろん、現在実装済みのプッシュについてもPDCAで改善して磨いていき、皆様により良いプッシュ体験を提供出来るようにしていきたいです。

――前回の記事では、Yahoo!ニュースが目指すものの一つとして「圧倒的普通」があげられていたが

Yahoo!ニュースアプリ責任者・河野清宣 スマホはパーソナライズな端末なので、ユーザーに最適な情報を届けるのは至極当然のことですが、先ほど多田から説明のあった「防災通知」の例にみられるように、「パーソナライズ」の究極とは何ぞやと言われれば単純に「命」になると思います。そしてスマホによって飛躍的にインターネットが身体に近くなったおかげで、「暇つぶし」という言葉が横行していますが人生とは有限です。「ヒマ」をただ潰すだけ、こんなにもったいないことはありません。
プッシュ通知とはユーザーと直接対話できる貴重な手段です。我々はユーザーの人生の貴重な「ヒマ」を知的好奇心に変えることで、少しでも命を豊かにしたい。山下から説明があったように、そこから生まれた興味を軸に、さらに深掘りを提供できる個々人最適のプッシュ配信も検討しています。すべてのプッシュ通知がその人にとって価値や気づきのある「号外」になるように。
Yahoo!ニュースアプリのプッシュ通知は人の命を支えるだけでなく、毎日の人生を美味しくする「塩」という“圧倒的普通な調味料”でありたい。スマホ利用者の平均的なプッシュ通知の有効設定率は52%(Localytics社2014年調査)といわれますが、Yahoo!ニュースアプリでは約9の方に有効設定いただいています。今後デバイスは進化とともにますますユーザーの身体に近づいていくかもしれませんが、そんな変化の中でもYahoo!ニュースはユーザーの人生に有益な情報を届け、行動支援となれるよう日々努力し続けていきたいと考えています。

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