尾藤能暢

世界よ笑え――酒を飲まずに月間売り上げ6000万円、「現代ホスト界の帝王」が目指すもの

4/3(水) 9:01 配信

「世の中には二種類の男しかいない。俺か、俺以外か」。金髪サラサラヘアにタキシード姿、ホテルのスイートルーム暮らしで高級車を乗り回す……漫画の世界から抜け出したようなキャラ。月間売り上げ6000万円、一晩の最高売り上げ5000万円という圧倒的な実績から「現代ホスト界の帝王」とまで呼ばれているROLAND(ローランド)という男を知ってるだろうか。帝京高校で目指したプロのサッカー選手への道、挫折。ホスト界の地位向上という夢を聞いた。(取材・文:ラリー遠田/撮影:尾藤能暢/Yahoo!ニュース 特集編集部)

大学入学直後に中退、声をかけてきたホストクラブに即入店

ローランドがホストの世界に足を踏み入れることを決めたのは、大学の入学式に出席したときだった。幼稚園から高校までプロのサッカー選手になることだけを夢見てサッカーに打ち込んできた彼は、名門・帝京高校卒業後に人生の目標を失って途方に暮れていた。

教師と両親の勧めで大学には進学したものの、気分は晴れないまま。入学式に出席したとき、その違和感は決定的なものになった。

「入学式で周りを見渡したら、なんかさえないやつらばっかりで。自分自身も何かをしたくて大学に入ったわけじゃないし、学長の話を聞きながら『俺、何のためにここにいるんだろう?』って思って。その瞬間に先が見えてしまったんですよね」

「このまま大学に入って、4年間あんまり興味のない講義を受けて卒業して、一般企業に就職して、定年まで働いて、小太りの妻がいて、休みの日はテレビ見ながら缶ビールでもすする、っていう絵が浮かんだんです。自分の将来ってこんなもんなのかって思って、すごく恐怖を覚えたんです」

そこでローランドは周囲の大反対を押し切って大学を辞めて、ホストの世界に入ることにした。新宿アルタ前に立ち、最初に声をかけてきたホストクラブにそのまま入店した。

ノルウェーの刑務所を見て「俺よりいい生活してんな」と思った

だが、のちの「帝王」も最初から順調だったわけではない。下積み時代の月収はわずか10万円足らず。家賃6万円のエアコンなしのアパートに住み、交通費を節約するため自転車で通勤した。

「地方で6万円出したらいい家に住めるのかもしれないですけど、新宿ですからね。新宿から中野のほうまで急な坂があるんですよ。それを自転車で駆け上がって灯油を買いに行って、石油ストーブで暖を取ったりしていました。テレビでノルウェーの刑務所が紹介されているのを見たことがあったんですけど、『俺よりいい生活してんな』と思ってました」

そんな苦境に陥りながらも、ホストを辞めるつもりは全くなかった。10年間サッカーだけに打ち込んだが、プロになる夢はかなわず、大きな挫折を味わっていた。「もう負けたくない」という思いがローランドを突き動かしていた。

生活はきつくても、「このまま辞めるか?」と自分に問いかけたとき、「ここで負けたらお前、本当の負け組じゃん」と自分が言い返してくる。それをくり返し、自らを鼓舞し続けた。

「あと、接客に関しては、結果は残せていなかったですけど、当時から業界でもトップレベルのものを提供している自信があったんですよ。だから、時代が追いついていないだけだと思っていました。いつか報われる日が来るだろうと信じて努力していました」

人に嘘はついても、自分に嘘は絶対につかない

ろくに売り上げも残せていないのにやたらと自信満々。その異色の接客スタイルが受け入れられるまでには時間がかかった。だが、ホストを始めて1年が経ったころ、1人のお客様に気に入られたことをきっかけに、人気が急上昇した。

「若くて勢いのある面白いやつがいる」という噂はホスト界に広まり、一気に売り上げを伸ばした。初めから自信たっぷりの態度で接客をしていたのにもローランドなりの考えがあった。

「日本人の国民性として謙虚が美徳っていうのがあると思うんですけど、それってホストに当てはまるのかな、って。例えば、家賃100万円の物件を借りるとき、不動産屋の人に『いやいや、この部屋なんてそれほどのものじゃないです』って言われたら、誰も契約したくないですよね。ホストも同じで、世間の相場の10倍ぐらいの価格でドリンクとか出しているわけですよ。それなのに、『いやいや、僕なんて』って態度をとったら、それこそ失礼じゃないですか。自信たっぷりに振る舞うのは、よく考えたらみんなが守らなきゃいけないマナーみたいなものだと思いますよ」

そんなローランドが自信を持つために心がけているのは「自分に嘘をつかない」ということだ。

「僕、他人には嘘をつくことが多いんですよ。待ち合わせに遅れたら『ごめんね、お腹痛くて』って言ったりして。でも、自分にだけは絶対嘘をつきたくなくて。例えば、目の前から格好いいと思う車が走ってきたとして、普通の人は『いいな』って思っても、2秒後には『でも、燃費悪そうだし、運転しにくそうだしな』とか思うものなんですよ。デメリットを自分に言い聞かせて、欲望を抑えつける。それってすごく悲しいことですよね。1回の人生なんだから、自分に嘘をつくなんて人生つまんないじゃないですか」

そうは言っても、なかなか自分に自信が持てないという人も多そうだ。そういう人が変わるためには「自信のあるふりをすればいい」とローランドは言う。

「心理的なものって天気と一緒で、それ自体を変えるのは難しいじゃないですか。ただ、内面は変えられないけど、しぐさは変えられるんですよ。『強そうなやつが来たな』って思ったときに、『俺はお前より強いよ』って心で思えなくても『お前には負けない』っていうしぐさはできるんです。しぐさで自信があるように見せていくと、しぐさと気持ちはリンクしているから、だんだん自信も出てくるんですよね」

ホストとしてのローランドには独創的な点が2つある。それは「酒を飲まないこと」と「売り掛け(代金を店やホストが立て替えること)をしないこと」である。どちらもそれまでのホスト界では常識外のことだった。

「お酒自体は好きなんですけど、もともと体育会系だったのもあって、毎日毎日お酒を飲むような不健康なライフスタイルが自分の中では受け入れがたいものだったんです。あと、売り掛けっていうのは見せかけの数字じゃないですか。本来、お財布の中に入っている金額がその人の今日の価値だと思うんですよね。それを無理やり背伸びして、ないものを使わせたりするのって自分の実力じゃないな、と」

お酒を飲まず、売り掛けをしない接客を始めると、一時的に売り上げは落ちた。だが、そこから数字は伸びていき、最終的にはトップに立った。

「普通に勝つだけじゃつまんないから、勝ち方にはこだわりたかったんです。格好悪く勝つくらいなら格好よく負けたほうがマシだな、って。まあ、俺は格好よく勝つんですけど」

夢は「ホスト界全体の地位向上」、そのために誰より自分が輝く

ホスト界の頂点を極めたローランドは、2018年末で現役を引退。独立して新店舗をオープンすることにした。今後は経営者として後輩の育成にあたることになる。そもそも彼が積極的にメディアに出ているのも、ホスト界全体の地位向上のためだ。

「どんな世界でも、業界を変えるのは1人のスターだと思っているんですよ。例えば、フェンシングを普及させようと思ってどんなにお金を投資して練習場を作ったりするよりも、太田雄貴選手が1人いることの方が大きいじゃないですか。僕が走り続けることで業界がポジティブな方向に変わると思っているので、自分が輝くことにプライオリティーを置いて活動しています」

世間では、ホストの世界にはまだまだネガティブなイメージも強い。ローランドは少しずつそれを変えていこうとしている。

「今の世の中って、4年制大学を出ていなきゃダメとか、いろいろな制約があって、1回の判断ミスがその後の人生をすべて決定してしまうところがあるじゃないですか。ホストの世界は敷居が低いからこそ、夢があるというか、いいところもあるなと思っているんです。後輩には両親がいない子もいたし、平仮名の『ぬ』が書けないやつもいました。今は消去法で選択肢がなくて、これしかないっていう選び方をする人が多いけど、『ホストになりたい』とごく自然な流れで思ってくれる子が増えたらいいなと。そうなれば業界がもっと活性化すると思うんですよね」

大学を卒業した学生の選択肢の1つとして、当たり前のように「ホスト」という職業が浮かぶ。彼の目にはそんな未来が見えている。

最近ではホスト業だけではなく、メンズ脱毛サロンの経営、ヘアオイルのプロデュースなど多彩な事業を展開するローランドの最終目標は何なのか?

「本当に大きい目標で言ったら、世界を明るくしたいですね。自己顕示欲って、お金を使うことで満たされることをし尽くしちゃうと、あとは自分が世界を変えるとか、デカい話になってくるんですよ。スティーブ・ジョブズも『世界を変えたい』って言っていたじゃないですか。『ローランドがいるから世界が明るくなったな』って言われたら、1人の人間として生まれてこんなに幸せなことはないですね」

ローランドが笑えば、世界が笑う。ホスト界に輝く一番星が、世界を照らす太陽となる日は来るのだろうか。

ROLAND

1992年7月27日、東京都出身。血液型AB型。身長182cm。ホスト、ファッションモデル、タレント、実業家。現代ホスト界の帝王と称される。高校卒業後、大学に進学するも入学早々に自主退学し、2011年4月、18歳でホストを始める。2013年、21歳の時に史上最高額の移籍金で KG-PRODUCE に移籍。2017年、25歳の時に同グループ取締役に就任。2018年7月のバースデーイベントでは 6000万円以上の売上を記録し、グループ歴代売上最高記録保持者となる。同年末に現役ホストを引退。2019年1月、独立。ホストクラブ「THE CLUB」のオーナーを務めるかたわら、美容品のプロデュースやアパレル事業、メンズ美容サロン「ROLAND BeautyLounge」のオーナーも務めるなど、実業家としても活躍中。メディア出演多数。初の自著『俺か、俺以外か。ローランドという生き方』を上梓


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