NHK

自覚症状なし「隠れ脂肪肝」のリスク――放置で全身の深刻な病につながる恐れ

3/23(土) 9:06 配信

肝臓へ中性脂肪が過剰に蓄積されている「脂肪肝」。特に飲酒習慣のある人がなりやすいとされてきた症状だが、近年、食べ過ぎや運動不足を原因とする患者が増えているという。自覚症状もなく健康診断でも分からない「隠れ脂肪肝」の人は国内で1000万人近くいると指摘する声もある。脂肪肝は、放っておくと肝硬変や肝臓がんに進行するだけでなく、他の臓器や血管のがんになるリスクも高めることが最近の研究で分かってきた。最新事情を取材した。(NHKスペシャル「“隠れ脂肪肝”が危ない」取材班/Yahoo!ニュース 特集編集部)

気づいたときには肝硬変

岡山県に住む看護師の國吉緑さん(61)は、2017年2月、夜勤中に突然吐血した。

「休憩をとろうとしたとき、急におなかが張ってきたんです。最初は胃の不調かと思ったのですが、強い吐き気がして、慌てて口を手で覆うと、手のひらにどす黒い色の血が。トイレに駆け込んでさらに大量に血を吐くと、徐々に意識が遠のいていきました」

前触れのない、突然の吐血だった(再現写真)

國吉さんは、すぐに近隣の大きな病院へ救急搬送された。肝硬変の合併症として発症した食道静脈瘤破裂だった。死に至ることもある重篤な症状だ。

「肝硬変と聞いて、本当にショックでした。お酒は全く飲まないので、まさか自分が肝臓の病気になるとは思ってもいませんでした」

國吉緑さん

國吉さんが肝硬変を患った原因は、アルコールではない。食べ過ぎや運動不足から起きる「脂肪肝」が進行し、肝硬変を引き起こしていた。不規則な生活で太り気味だった30代のころから健康診断などで脂肪肝を指摘されていたものの、吐血するまで異変に気付くことができなかったという。

「息切れや疲れを感じることはありましたが、年のせい、仕事のストレスのせいと、軽く考えていました。医療従事者ですが、脂肪肝が命に関わるようなことになるとは知らなかったんです」

これまで数多くの脂肪肝の患者の治療にあたり、國吉さんの診察も担当した、川崎医科大学の川中美和准教授はこう指摘する。

「医師の間でも、最近まで脂肪肝は軽く見られていて、その危険性はあまり知られていませんでした。脂肪肝が原因で、肝硬変、さらには肝臓がんになる患者が年々増えています」

川崎医科大学の川中美和准教授

健康な肝臓の場合、非常時の栄養供給源として細胞の3〜4%に中性脂肪が蓄積されている。脂肪肝は肝臓の細胞の5%以上に中性脂肪が蓄積された状態を指す。脂肪肝自体は、生活習慣の改善などで健康な状態に戻すことができる。問題は、放置した場合だ。川中准教授は言う。

「脂肪肝のうち2割程度は、肝臓の炎症につながります。炎症を起こすと、肝臓の細胞が一部壊れます。壊れた肝臓の細胞は修復されますが、それを繰り返しているうちに、だんだん線維化(硬化)が進行し、肝臓が硬くなっていく。こうして、肝臓全体が網の目状の線維に埋め尽くされた状態が肝硬変です」

上が健康な肝臓の細胞で、下が脂肪肝状態の肝臓の細胞。白い円形の部分が中性脂肪だ(写真提供:佐賀大学医学部・相島慎一教授)

こうなると健康な肝臓に戻ることは極めて難しい。川中准教授は強調する。

「肝機能が低下するだけではなく、肝臓がん発症の可能性も高まると考えられています。脂肪肝の間なら健康な肝臓に戻れますが、肝硬変や肝臓がんに進行すると後戻りできません。脂肪肝を甘くみないでほしい」

自覚症状なし、健康診断でも分からない「隠れ脂肪肝」

医療と健康 記事一覧(17)

さらに読み込む

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limited によって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。