狩谷宏

【耕論】自由か病か――孤独大国ニッポンを考える

2018/7/31(火) 7:14 配信

「孤独」「ひとり」――。家族や学校、会社、スマートフォンで人とつながっているのに、そう感じることが少なくない。日本では単身世帯が増え続け、他国と比べて仕事以外のコミュニティも希薄だという人もいる。言わば「孤独大国」だ。そもそも孤独とは、私たちを自由にするものなのか、それとも病なのか。3人の識者と孤独大国ニッポンを考える。(取材・文=朝日新聞オピニオン編集部/編集=Yahoo!ニュース 特集編集部)

ものを考えるのは1人。でも逃げ場は作っておけ
田中慎弥さん  作家
孤独は病。このままでは「1億総引きこもり」時代に
岡本純子さん  オジサンの孤独研究家
スマホ接続社会で変わる「ひとり」と「みんな」の間
南後由和さん  社会学者

ものを考えるのは1人。でも逃げ場は作っておけ

田中慎弥さん  作家

1972年生まれ。「共喰(ぐ)い」で芥川賞受賞。著書に「燃える家」「宰相A」など。昨年、エッセー「孤独論」を出版=東京・渋谷で(撮影:外山俊樹)

高校を卒業したあと15年近く、33歳で小説家デビューするまで山口県下関市の実家に引きこもり、ひたすら本を読んでいました。大学受験に失敗して進学はせず、就職もせず、外部との接触はほとんどありませんでした。

1人の生活は別にしんどくはありませんでした。その時のことをよく聞かれるんですよ。「孤独でつらかったですか?」とか。むしろ、しんどくなるのが嫌で、そういう生活をしていたんです。

高校の頃から、自分は他人とうまくやっていけない人間なんだな、と何となく分かっていました。人とのコミュニケーションにはかなりの覚悟が必要で苦労するな、と。「普通の生き方はできそうにない」と思い、二十歳過ぎから小説を書き始めました。

1人の効用は、人によって違うと思います。私は引きこもりの時、やりたいことは本を読むことしかなく、読書経験で多くの言葉を自分の中に蓄積できました。結果的にですが、小説を書くとき、この蓄積は意味がありました。

「私は、ケータイもネットも使ったことがありません。自宅にあるのは、編集者とのやり取りなどに使うファクス付き固定電話だけです」=東京・渋谷で(撮影:外山俊樹)

そもそも、ものを考えるって、1人じゃないと出来ないんじゃないでしょうか。いまは、立ち止まってじっくり考えることが出来にくい時代。常に誰かとつながっていないとダメというのは、奴隷のような状態ではないですか。

私は、ケータイもネットも使ったことがありません。自宅にあるのは、編集者とのやり取りなどに使うファクス付き固定電話だけです。ただ、SNSの弊害がよく言われますが、人が人とのコミュニケーションで傷つくというのは、SNSがない時代も、いくらでもありました。その時代のコミュニケーションのツールが違っているだけでは。

何か大きな事件を起こした犯人が「どんなヤツだったんだ?」と調べていくと、「1人ぼっちだった」という話はよくありますね。社会との接点が完全に断たれるのも危険です。しかし、他人とのコミュニケーションがないことを、深刻に考えすぎるのもよくない。双方のバランスをどう取るかは難しいですが、私は引きこもり時代も今も、特に悶々(もん・もん)とせずノホホンとしていたので、危ない方には行かなかったんでしょう。

自分のことを「さみしいヤツ」と自覚するのは情けないことですが、健康に被害がない限り、孤独は「いけないこと」ではありません。

「孤独は『いけないこと』ではありません。ただ、極端に孤独で過酷な環境にある人は、いざ何かが起こった時のため、どこかに『逃げ場』を求めて下さい」=東京・渋谷で(撮影:外山俊樹)

ただ、極端に孤独で過酷な環境にある人は、いざ何かが起こった時のため、どこかに「逃げ場」を求めて下さい。

私も小説家になった後、仕事がきつく、何度か命を絶とうとしたことがあります。そんな時は「時間をかけて待つ」ことが必要です。私の場合、歯止めになったのは、やはり本でした。ゲームでも何でもいい。逃げ場は作っておいて下さい。(聞き手・稲垣直人)

孤独は病。このままでは「1億総引きこもり」時代に

岡本純子さん  オジサンの孤独研究家

1967年生まれ。新聞記者などを経て「コミュ力」支援会社社長。著書に「世界一孤独な日本のオジサン」=東京・大田で(撮影:外山俊樹)

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