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藤井七段、新記録達成の可能性は?――第91期ヒューリック杯棋聖戦準決勝・決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
緊急事態宣言に関連し、一時的に対局が延期となっている藤井聡太七段(筆者撮影)

 渡辺明棋聖(34)への挑戦権を争う第91期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)決勝トーナメントはベスト4が4月10日に出そろったが、現在新型コロナウイルスの影響で遠距離移動を伴う東西交流対局ができず進行がストップしている。

 準決勝は永瀬拓矢二冠(27)と山崎隆之八段(39)のカードに、もう一つは佐藤天彦九段(32)と、最年少タイトル獲得記録がかかる注目の藤井聡太七段(17)でいずれも東西対決。

永瀬二冠と藤井七段が有力

 それぞれの対戦成績は以下のとおり。

<永瀬二冠の対戦成績と最近10局>*未放映のTV対局を除く(以下同)

対山崎八段 4勝1敗

対佐藤九段 3勝3敗

対藤井七段 0勝0敗

最近10局 8勝2敗

<山崎八段の対戦成績と最近10局>

対永瀬二冠 1勝4敗

対佐藤九段 4勝3敗

対藤井七段 1勝0敗

最近10局 6勝4敗

<佐藤九段の対戦成績と最近10局>

対永瀬二冠 3勝3敗

対山崎八段 3勝4敗

対藤井七段 0勝1敗

最近10局 6勝4敗

<藤井七段の対戦成績と最近10局>

対永瀬二冠 0勝0敗

対山崎八段 0勝1敗

対佐藤九段 1勝0敗

最近10局 9勝1敗

 最近の成績を見ると永瀬二冠と藤井七段の好調が目立つ。準決勝の直接対決もこの2人の優位を示すデータで、決勝がこのカードになる可能性は高そうだ。

戦型は相居飛車中心か

 今回の準決勝進出者は居飛車をメーンとする棋士ばかりだが、それぞれの棋風はかなり違う。

 永瀬二冠(叡王・王座)はじっくりとしたねじり合いを好み、山崎八段は形にこだわらぬ力戦志向で最近も「パックマン」と呼ばれる奇襲戦法を用いたばかり。今回は相居飛車角換わりの定跡から外れた手将棋になると予想する。

 佐藤九段は受けの強いバランス重視の棋風。藤井七段も同じバランス型だが詰将棋の力を武器とした終盤の切れ味に定評がある。こちらは矢倉か角換わり腰掛け銀の定跡形が本命だ。

 挑戦権獲得の確率は調子を重視し永瀬二冠と藤井七段が30%ずつ、佐藤九段と山崎八段が20%ずつと予想しておく。

記録より、良い内容の将棋に期待

 また、ことあるごとに話題になる藤井七段のタイトル挑戦最年少記録を筆者はすでに重要視していない。

 緊急事態宣言が出ている現状では記録達成日が先に延びるのはやむを得ない。

 ただ「止まない雨はない」の言葉どおり、この状態がいつまでも続くわけではない。夏までに良い内容の将棋が見られることを期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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