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WBAスーパーライト級新チャンピオン

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 WBAスーパーライト級チャンピオンが繰り出す左右のフックが、再三空を切る。2021年12月にジャーボンテイ・デービスの持つWBAライト級タイトルに挑戦し、敗れたものの善戦したイサック・クルス。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/15dd567feb9e7bcff24223ac397f1b6d04ec0a77

 デービスとのリターンマッチを切望しながら、なかなか実現しない為、1階級上げて今年3月に世界王座に就いた。8回KO勝ちだった。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6968b7d92a8c196295ac0bba90076948d32b3de1

 そのクルスにとっての初防衛戦が、現地時間8月3日に催された。挑戦者は同じメキシコ人のホセ・バレンズエラ。MLS(メジャー・リーグ・サッカー)の強豪、LAFCのホームグラウンドであるBMOスタディアムで、両者は対峙した。

写真:REX/アフロ

 バレンズエラは、デビュー以来12戦全勝8KOと快進撃を続けていた2022年9月に、3回KOで屠られた過去がある。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9db843d10f16b4877ed43149c5775819317fa1b1

 そして、再起戦でもクリス・コルバートに判定負けしてしまう。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2b67a31e8435fb74b6d2e3f03ad3f4eac2be8f89

写真:REX/アフロ

 しかし、バレンズエラは前だけを見詰めた。2つ目の黒星から9カ月後、コルバートとのダイレクト・リマッチを6回KOで飾り、この日を迎えた。ライト級だったバレンズエラは、タイトル挑戦のチャンスを掴む為、140パウンドに増量した。

 プロ生活初の敗北を喫した折、バレンズエラはクルスの前座を務めている。第3ラウンドでKO負けしたバレンズエラを尻目に、クルスは大歓声を背にしながら2回ノックアウト勝ちを収め、存在感を示した。

 およそ2年前の同興行は、BMOスタディアムから車で10分の場所にあるクリプト・ドットコム・アリーナで行われた。バレンズエラは虎視眈々と、"その時"を窺っていた。

写真:REX/アフロ

 試合開始のゴングから、バレンズエラは冷静に自分の距離を保つ。ボクシングの基本であるジャブであしらい、クルスを自分の懐に入れさせない。そして随所に左ストレートをヒットしてポイントを稼ぐ。

 クルスは苦し紛れに力を込めたフックを振るうが、その対策をバレンズエラは十分にしていた。

 116-112、116-112、113-115のスプリット・ディシジョンで、バレンズエラは新チャンピオンとなる。

写真:REX/アフロ

 勝者は語った。

 「私はプレッシャーに負けず、落ち着いていた。最高の気分だ。ジャブやフットワークで、ずっとリングをコントロールできていたように思う」

写真:REX/アフロ

 WBAスーパーライト級新チャンピオンは、2つの敗北を糧としたのだ。弾ける笑顔に、苦しい日々を乗り越えた彼の喜びを伝えていた。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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