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初の記者会見まで敢行した横濱 JAZZ PROMENADE 2018が見せた25周年という“気合い”

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
今年のジャズプロのポスター(筆者撮影)
今年のジャズプロのポスター(筆者撮影)

すっかり“ジャズの街ヨコハマ”の初秋を彩る風物詩となった感のある横濱 JAZZ PROMENADE(ジャズプロ)。

今年も10月6日と7日の日程で、ジャズ・スポットや音楽ホールはもとより歴史的建造物のなかやストリートのあちこちから、まさに“朝から晩まで”ジャズ三昧できるプログラムが用意されている。

このヴォリューミーな本番に先立って、主催者による“記者会見”なるプレ・イヴェントが開かれたので、その内容を紹介したい。

♪ いろいろな“隠し球”も披露された記者会見前半

まず最初に、主催者の横濱ジャズプロムナード実行委員会事務局と一般社団法人横浜JAZZ協会からそれぞれ“ご挨拶”。

そこでは、初回以来やったことのなかった告知イヴェントであり、“記者会見”と銘打ったのは今回が初めてなどのトリビアも披露され、企画ありきの上意下達的ではなく市民参加によって育てられててきた25年という“重み”を垣間見るような一幕もあった。

続いて、横濱 JAZZ PROMENADE 2018の“見どころ・聴きどころ”を、プログラムディレクターの柴田浩一氏と小針俊郎氏が解説。

また、今回はジャズプロ本番に先立って、横浜観光の名物スポットである山下公園先の横浜港に浮かぶ氷川丸船上で特別ライヴが開催されることを発表。

氷川丸船上特別ライヴのポスター(筆者撮影)
氷川丸船上特別ライヴのポスター(筆者撮影)

氷川丸は、横濱 JAZZ PROMENADE第1回(1993年)から第10回までの会場で、25周年となる今回を記念した“スペシャル・エディション”。昼夜2公演で“横濱JAZZオールスターズ”と銘打った、日本のジャズ・シーンを代表する面々が出演する予定だ。

なお、氷川丸船上特別ライヴはインターネットによるライヴ中継も企画されているのだけれど、その原資のためにクラウドファンディングを利用していることも明かされた。つまり、ファンドが成立しなければネット中継はNGという、ちょっとゲーム的な話題性のある企画も盛り込まれているので、どうなるのか楽しみにしたい。

さらに、ジャズプロ会場も横浜駅西口や東口にスペースを設けて、より多くの人目に触れるような施策が採られている。

♪ 参加ジャズ・ミュージシャンからも熱いメッセージが

この記者会見は、横浜スタジアムの脇というロケーションのk.t.Bears(ケー・ティー・ベアーズ)というジャズクラブで行なわれた。

ここもジャズプロの会場のひとつなのだけれど、記者会見をそうした会場のひとつで開いた意味がまた別にあった。

それが、“ライヴ付き”というものだ。

会場には、今田勝、遠山晃司、守新治、豊田チカ、福井ともみ、ジェントル久保田、Miyaという日本のトップ&注目ミュージシャン7人がスタンバイ。

前列左から、今田勝、福井ともみ、ジェントル久保田、後列左から、遠山晃司、豊田チカ、守新治、Miya(筆者撮影)
前列左から、今田勝、福井ともみ、ジェントル久保田、後列左から、遠山晃司、豊田チカ、守新治、Miya(筆者撮影)

それぞれ今年のジャズプロに対する意気込みなどをコメントしてから、ミニ・ライヴを披露してくれたのだ。

この記者会見のもようはYouTubeでも生中継されていたので、チェックできた人には“出血大サービス”だったのではないだろうか。

♪ イヴェント継続の“熱量”を高めるために必要なこととは?

これだけ“前置き”で攻めの姿勢を見せつけるということは、逆に“ジャズ・イヴェントのシュリンク傾向”という全国的な状況への敏感な反応であるとも感じられる。

25周年という“回を重ねたイヴェント”であるというウリは、マンネリ化や参加意識の希薄化を引き起こす要因にもなりかねない。

「興味が薄れていく」ということは、それが文化として根付いていないことを意味するわけだ。

薄れることなく熱量を保つには、まず“隗より始めよ”だろう。

その気迫を感じさせる記者会見だったと思うのだ。

さて、その熱量がどれだけ波及しているのかーー10月6日と7日を楽しみに待ちたい。

横濱 JAZZ PROMENADE 2018 概要

日時

平成30年10月6日(土) 、7日(日) 12時~21時頃(会場による)

会場

横浜市開港記念会館、関内ホール大ホール・小ホール、ランドマークホール(6日のみ)、横浜みなとみらいホール大ホール(7日のみ)、横浜赤レンガ倉庫1号館ほか、市内ジャズクラブ、街角ライブ会場 計約50カ所

出演者・グループ

All Flutes Company、紙上理(b)、 Banda Mandacarinho、加藤真亜沙(p,vo) アンモーンの樹、曽根麻央(tp,p)、山田敏昭(p)トリオ、Naftule、板橋文夫(p)オーケストラ、ジョージ大塚(ds)スーパー・トリオ、小山太郎(ds)Quartet+トヨタ・チカ(vo)ほか約 400 名のプロ ミュージシャンおよびアマチュアミュージシャン約 200 組

料金

全会場を自由に回ることができるフリーパスチケットです。 10/6(土)1日券 ●ひとり券 ¥4,300(税込)、ペア券 ¥8,000(税込) 10/7(日)1日券 ●ひとり券 ¥4,300(税込)、ペア券 ¥8,000(税込) 10/6(土)~7(日)2日券 ●両日券 ¥8,000(税込)

公式ホームページ:http://jazzpro.jp

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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