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「村田諒太がゴロフキンに勝ったら決着戦を」元世界王者ロブ・ブラントが今を語る

杉浦大介スポーツライター
(写真:松尾/アフロスポーツ)

6月26日 ネバダ州ラスベガスバージンホテルズ・ラスベガス

ミドル級10回戦

ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン /28歳/9戦全勝(5KO))

10回戦

前WBA世界ミドル級王者

ロブ・ブラント(アメリカ/30歳/26勝(18KO)2敗)

 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)対中谷正義(帝拳)戦に注目が集まるラスベガス興行のセミファイナルに、前WBA世界ミドル級王者のブラントが登場する。相手は2016年のリオ五輪に出場し、プロ入り後も連勝街道をいくアリムハヌリだ。

 2018年10月に村田諒太(帝拳)に判定勝ちで世界王座になり、翌年、日本でのリマッチで2回KO負けを喫して無冠になったブラント。村田とのラバーマッチへの希望を抱き続けている前王者は、評判の良い無敗プロスペクトとのサバイバル戦に勝ち残れるのか。大事な試合を翌日に控えた25日の計量時、その胸中に迫った。

村田がゴロフキンに勝った後に第3戦を行いたい

 2018、2019年に行った村田との2試合で私は多くのことを学んだと思っています。村田は素晴らしいチャンピオンであり、人間的にも優れた男でした。

 特にリマッチでの2ラウンズのことは今でもよく覚えていますよ。あの試合での村田は素晴らしいゲームプランを用意してきました。第1戦での私のゲームプランも良かったと思いますが、第2戦ではそうではありませんでした。とにかく多くの手数を出そうと考えましたが、それだけのパンチを出せばスキも生まれ、破格のパンチャーである村田のパンチをもらってしまったのです。

 私もミスを犯しましたが、それにつけ込んだ村田を褒める以外にありません。もっと注意深く戦うべきでしたが、それができませんでした。あの試合での村田は明らかに私より優れた選手だったということです。

 彼のことはリスペクトしていますし、私たちは2度の対戦で1勝1敗。もちろんできれば決着戦を行いたいですが、村田はゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)とのビッグファイトが視界に入っていることは理解しています。

 私はゴロフキンとの対戦経験はないので、ゴロフキン対村田戦の予想をするのは容易ではありません。スタイル的には見事に噛み合い、ファンを喜ばせる激しい試合になるでしょう。ぜひとも村田に勝って欲しいですし、その後、ラバーマッチが行えることを願っています。

ブラントの体重調整は順調だったとのことで、25日の計量前の慌ただしい時間に元気に取材に応えてくれた。常に態度の変わらないナイスガイ 撮影・杉浦大介
ブラントの体重調整は順調だったとのことで、25日の計量前の慌ただしい時間に元気に取材に応えてくれた。常に態度の変わらないナイスガイ 撮影・杉浦大介

アマエリートとのサバイバル戦

 26日に対戦するアリムハヌリは非常にシャープで、スキルに恵まれたサウスポーですね。左のパンチはとてもクリエイティブ。タイミングをずらすのがうまく、様々な角度から飛んできます。彼との戦いに向けてハードなトレーニングを積んできたので、エキサイトしていますよ。

 この試合で私は依然としてトップレベルのミドル級選手であることを示したいと思っています。今でも世界タイトル戦まであと一歩の位置にいて、それだけの力を持っていることを世界中の人々に示したいのです。

 普段の私はテレンス・クロフォード(アメリカ)と一緒に練習をしていますが、彼のような選手とのトレーニングではメンタル面で学べることが大きいですね。クロフォードは多くの見識を持っており、日常的に言葉を交わし合うことで、試合に向けた準備をより円滑にできるようになります。もちろんスパーリングも意味深いものではありますが、それよりも精神面の効果が莫大です。

 過去にエロール・スペンス(アメリカ)ともスパーリングをしてきましたが、同じサウスポーでもスペンスとアリムハヌリはタイプ的にかなり違います。アリムハヌリはアマチュア仕込みのスタイルで、打たれずに打とうとする選手。一方、スペンスは目の前に立ち、より激しい打ち合いを好みます。ただ、もちろんスペンスとのトレーニングもキャリアの中で大きな意味を持ってきたことは言うまでもありません。

Photo By Mikey Williams Top Rank via Getty Images
Photo By Mikey Williams Top Rank via Getty Images

 現時点でアリムハヌリに勝った後の計画を立てているわけではありません。アリムハヌリはアマチュアで実績を残し、プロでもここまでは良い試合をしてきているので、彼を見過ごすわけにはいかないのです。

 今は目の前の対戦相手をリスペクトし、全力を尽くすべきとき。今後のことは、次の試合に勝った後に考えたいと思っています。

 これまでのキャリアで、世界王者になるという目標をすでに一度は達成しました。ただ、それで満足すべきではないし、もちろんしていません。統一王者という唯一の男になるためには、4つのタイトルを勝ち取ることが必要。その目標に向かって、これから先も進んでいくつもりです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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