男性1581.6万人・女性1773.2万人…映画館での映画鑑賞実情をさぐる(2024年公開版)
昨今では名作が続々輩出され社会現象も生じている映画業界。DVDなどの販売市場も業界に大きな影響を与えるが、何より重要なのは映画館での上映実績に他ならない。映画業界は苦境にあえいでいるとの話もしばしば見聞きするが、実情として一般の人たちはどれほど映画館に足を運んで映画鑑賞をしているのだろうか。総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果から、その実情を確認する。
次に示すのは直近となる2021年時点において、過去1年間に1日でも映画館で映画鑑賞をしたことがある人(行動者)の人数と、各属性人口に対する比率。例えば男性総数では28.8%とあるので、10歳以上の男性のうち28.8%が過去1年間に1日以上映画館で映画鑑賞をしたと回答している。
映画館で映画を鑑賞した人は3354.8万人。男性が1581.6万人で女性は1773.2万人。年齢階層別では男性は20代前半がもっとも多く、次いで20代後半、10代後半と続く。10代が多めなのは、子供向けの映画を保護者と一緒に鑑賞しているのだろう。
他方女性は最大人数を示しているのは男性と同じく20代前半の197.8万人で、次いで20代後半、40代後半と続く。若年層と中年層で一定の盛り上がりが生じるのは男女で変わらないが、女性は中年層の多さが男性よりも大きいのがポイント。保護者の立場として子供と一緒に足を運んでいるのがカウントされているものと思われる。
これが対人口比となると、男女ともにきれいな形で若年層が高く、20代後半から30代前半にかけて大きく落ち込み、あとは緩やかな減少を示していく。
続いてライフステージ別の動向を確認する。具体的には学生か、独身か結婚しているか、そして結婚していた場合には子供がいるかいないか別の、映画館での映画鑑賞動向を見る。男女で大きな違いがあるため、男女それぞれに区分して別途行動者率を算出している(比較しやすいように男女間で縦軸は揃えてある)。
まず男性。ほとんどの場合、無業者よりも有業者の方が行動者率は高い。時間的な余裕は無業者の方があるはずだが、金銭的な問題か、興味の方向性の差異が出ているのだろうか。独身では若年層の方が行動者率が高く、年を経るに連れて落ちていく。
子供がいない世帯では有業者・無業者ともに35歳未満がピーク。自分自身の趣味で観賞しているのだろう。他方子供がいる世帯では有業者はおおよそ子供が幼いほど行動者率が高い傾向がある。子供向けの映画を一緒に鑑賞するパターンだろうか。無業者でもそのパターンは変わらない。
女性は男性と比べて行動者率は高めに出る傾向がある。独身では有業者・無業者ともに35歳未満がピーク。結婚をしている場合、子供がいない世帯ではおおよそ独身と同じ値の動きを示すが、子供がいる世帯では子供が就学前は低めで小学生になると高くなり、それ以上の子供の学校種類でも減少度合いは緩やか。本人ではなく子供の付き添いで映画館に足を運んでいる様子が想像できる。子供が保護者と一緒に映画に行く場合、父親ではなく母親との場合が多いようだ。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
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