停車列車がなく、貨物列車だけが通過する会社境界駅 津軽線・海峡線 中小国駅(青森県東津軽郡外ヶ浜町)
JR各社の境界駅は往々にして系統の分かれ目となる運行拠点駅であることが多く、事実その多くは、熱海駅や米原駅のように、その駅を起終点とする列車が設定されている主要駅だ。そんな中、異彩を放つのがJR東日本とJR北海道の境界駅である中小国(なかおぐに)駅だ。JR東日本の津軽線とJR北海道の海峡線(津軽海峡線)の分岐駅にも関わらず、ホームが一本あるだけの無人駅で、貨物列車が頻繁に通過する一方、停車する列車が存在しない。しかも、津軽線の部分廃止により存続の岐路に立たされている。境界駅というだけでも珍しいのに、何から何まで異例尽くしの駅だ。
中小国駅は昭和33(1958)年10月21日、津軽線の蟹田~三厩間延伸に伴い開業した。当初から無人駅で、短いホームの上にブロック造りの駅舎が設置されているだけの小さな駅だ。駅周辺は明治の町村制で蟹田村が成立するまで東津軽郡小国村だったところで、「小国の中」にあることからこの駅名が付いたのだろう。
中小国駅が境界駅になったのは昭和63(1988)年3月13日、海峡線の開業によるものだ。海峡線は中小国駅の2.3キロ大平寄りにある新中小国(しんなかおぐに)信号場で津軽線から分岐しており、新中小国が信号場であることから、正式な駅である中小国駅が境界駅となった。海峡線の開通に合わせて津軽線も青森から新中小国までが電化されており、海峡線と一体となって特急や貨物列車が行き交う大動脈へと変貌を遂げた。北海道新幹線開業により、海峡線を走る定期旅客列車は消滅したたものの、貨物列車は引き続き津軽線・海峡線を高頻度で行き交っている。
海峡線開業により、通過列車が増えた中小国駅だが、停車する列車は三厩行きの普通列車だけで、駅設備にも大きな変化はなかった。駅舎は開業時のものを改装して使っており、今年で築66年の古いものだ。無人駅用に建てられたものゆえ駅員の執務スペースはない。
古い駅舎だが、地元住民が清掃しているためか、荒れた様子はなく綺麗に保たれている。利用者の極めて少ない駅だが、室内は広くゆったりとしている。この待合室が最後に人で埋まったのはいつの日だろうか。
壁に貼られた時刻表は列車ではなく代行バスのものだ。津軽線の蟹田~三厩間は令和4(2022)年8月豪雨の影響で運休・バス代行が続いており、このため、中小国駅には津軽線の列車がやって来ない。代行バスは駅前まで入らず、駅から100メートルの県道12号鯵ヶ沢蟹田線上に停留所を設けている。
不通が続く津軽線の蟹田~三厩間は令和9(2027)年春を目途に廃止される予定だが、中小国駅の処遇についてはまだ発表されていない。貨物列車が走っている以上、線路自体は確実に残るが、列車の停まらない中小国駅は廃止されて、境界駅が蟹田駅に移るのだろうか。それとも境界点自体が蟹田駅に移動するのか。通過列車しか来ない境界駅・中小国駅から今後も目が離せなさそうだ。
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