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ラプターズと渡邊雄太はプレーイン・トーナメント進出できるか 勝負の5戦がスタート

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

最後の1席をめぐって

 今季は渡邊雄太の加入で日本でも注目チームとなったトロント・ラプターズは、プレーイン・トーナメントに進出できるのか。その行方を占う上で、鍵になる5試合が始まろうとしている。

 4月27日のブルックリン・ネッツ戦開始前の時点で、ラプターズはイースタン・カンファレンス12位。リーグが定める安全衛生プロトコルで3人のスターターを含む複数の選手が離脱したことが響き、3月は14試合中13敗という大惨敗を喫した。徐々に盛り返したものの、本来ならプレーオフ最後の枠であるはずの8位のシャーロット・ホーネッツまでまだ4.5ゲーム差だ。

 残りは11戦。一昨年までのルールであれば、もうプレーオフ進出は絶望的となり、チームは来季に向けた戦いを始めていることだろう。ところがーーー。

 昨夏、2019~20シーズン再開後に導入されたプレーイン・トーナメントが今シーズンも引き続き採用されているため、ラプターズには依然として希望が残っている。26勝35敗という負け越し成績ながら、10位のウィザーズとはわずか1ゲーム差。同勝率で11位のシカゴ・ブルズも含めた3チームが最後の1席を争うことになりそうなのだ。

新システムの功罪

 このプレーイン・トーナメントをおさらいしておくと、今季はカンファレンス7〜10位の4チームが5月18日からの同トーナメントに出場できる。7位と8位のチームが対戦し、勝者が第7シード。さらに9位と10位のチームの勝者が7〜8位マッチアップの敗者と対戦し、勝ったチームが第8シードとなる。

 このシステムにも賛否両論あり、全30チーム中20チームがポストシーズンゲームに進むことでプレーオフの価値を下げてしまっているという考え方も一理あるのだろう。マーク・キューバン・オーナーが「今季の厳しい日程の中でストレスが2倍になる」と述べたのを始め、否定的なメディア、関係者は少ない。

 とはいえ、シーズン最終盤のこの時点まで、プレーインを避けられる6位以内、プレーインに出場できる10位以内という複数のレースが続くことで、レギュラーシーズンがより興味深いものになっているのは間違いない。ビジネス面の効果が大きいことも明白。また、プレーオフ進出の可能性が増えたことで、近年のリーグで問題視されてきた“タンキング”に挑むチームが減ったことの意味も無視できない。

ラプターズの象徴ラウリーも今季は多くのゲームを欠場してきた
ラプターズの象徴ラウリーも今季は多くのゲームを欠場してきた写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 波乱のシーズンを過ごすラプターズ

 ラプターズに関しては、3月終盤のトレード期限には主力のノーマン・パウエルを放出し、4月上旬にはカイル・ラウリーをはじめとする主力を頻繁に休ませるなど、今季の上位進出への意欲は薄れたように見えた時期もあった。

 ただ、その間にプレー時間を増やしたマラカイ・フリン、渡邊雄太、4月中旬に加入したケム・バーチなどが予想以上の活躍。同時に主力選手のコンディションも整い始め、21日まで4連勝、4月は13戦中8勝と静かに上昇気配だ。

 今季はチーム史上最多タイの28通りのスタメンを起用してきたが、ネッツ戦までの4戦はラウリー、フレッド・バンブリート、パスカル・シアカム、OG・アヌノビー、バーチというスタメンを固定。中でもラウリーとバーチの間にケミストリーが生まれているのが目を引く。

 ベンチメンバーの中では、得点力のあるゲイリー・トレント・ジュニアとクリス・ブーシェは離脱中だが、渡邊が逞しく成長していることはすでに日本メディアが盛んに伝えてきた通り。同時に新人のフリンが徐々にプロの水にも慣れ、過去12戦では3Pを平均42%の好確率で決めていることも見逃せない。

 「僕たちは多くのアップ&ダウンを経験してきたけど、その中で一丸となれてきている。攻守両面でどうやって積み重ねていけば良いか、みんなが見極めてきているんだ」 

 ラウリーのそんな言葉通り、様々な紆余曲折を経て、ラプターズにはようやく安定感が生まれてきているように見える。

ダークホース的な存在になる可能性を秘めているが••••••

 プレーイン・トーナメントを勝ち抜き、プレーオフに進んで来た場合、ラプターズは厄介なチームになるかもしれない。2年前の優勝メンバーでもあるラウリー、シアカム、アヌノビー、バンブリートの“コア4”は経験豊富。トレント、ブーシェが戻ればベンチもパンチ力があり、どんな強豪にとっても特に第1ラウンドではできれば対戦したくない相手ではあるのではないか。

シアカムの働きも終盤戦では重要になる
シアカムの働きも終盤戦では重要になる写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そんなラプターズにとって、今夜のネッツ戦、そしてデンバー・ナゲッツ、ユタ・ジャズ、ロサンジェルス・レイカーズ、ロサンジェルス・クリッパーズという強豪とすべてアウェーで対戦する29日からの4戦が大きな鍵となる。

 ここで崩れれば、残り6戦を待たずに事実上の“終戦”。しかし、すべて両カンファレンスの5位以内にいるエリートチーム相手の殺人スケジュールを2勝3敗程度で乗り切れた場合、その後がより面白くなる。その際には5月6日のウィザーズ戦、13日のブルズ戦といった直接対決が大一番となるに違いない。

 波乱の2020~21シーズンもクライマックス。過去7年連続でプレーオフに進んできたラプターズは、今季もプレーイン・トーナメントに駒を進め、イースタンの台風の目となるのか。渡邊のポストシーズンでのプレーは叶うのか。今日からの5戦が終わる頃、その行方がよりはっきりと見えてきている可能性は高い。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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