めげるな「無い内定」学生~内々定報道が進む中でも
6月15日時点で内々定率は72%!
就職情報会社のマイナビの「2020年卒 マイナビ大学生就職内定率調査」(20年卒7375人が対象)によると、5月末時点での内々定率は61.8%、就活終了は42.1%。
さらに、6月15日時点での内々定率(20年卒5423人が対象)は72.0%とさらに上昇しました。
他の就職情報会社の調査でもほぼ同様の数値が出ています。
今年(20年卒)の就活は、ゴールデンウィーク10連休の影響で、書類選考・初期選考を前倒しにする企業が大手を含めて続出しました。
経団連による就活ルール維持は今年の20年卒までですが、もともと、形式的にしか考えていない企業が多くありました。今年はさらに大手企業を含めて、さらに形骸化が進んだのも就活の早期化の一因となっています。
嘆く、あきらめる「無い内定」学生
内々定を得て就活を終了した学生は、夏休みに旅行に行こう、などと楽しそうです。
そんな内定学生とは裏腹な思いを抱くのが、就活を続ける学生。そう、まだ内々定を得ていない学生です。内々定ではなく「無い内定」と嘆く就活生も。
周囲が等しく内々定を得られていないならまだしも、周囲はほぼほぼ就活が終了。
そんな中で一人、就活を続けるわけで、その孤独感は察するに余りあります。
中には、就活をあきらめて、就活留年・浪人を検討する学生、あるいは思考停止となって何も手がつかなくなる就活生も。
落ちるのは理由あり
落ち込む気持ちはわかります。
が、気持ちが落ちたままでは何も変わりません。
私の就活取材経験から「無い内定」学生には7パターンほどあります。
そこで、どのようなパターンか、どうすればいいかをまとめました。パターンによっては専門家・採用担当者にコメントを貰っています。
※以下、パターン見出しの下は無い内定学生がよく話しがちなコメントを掲載しています
パターン1:行動量が少ない
どうせ何をやってもうまく行かない
就活はもうダメだ
これは「無い内定」学生の多くに当てはまります。就活がうまく行かず、その反動から就活の行動量を落としてしまうのです。
大学生であれ、小学生であれ、社会人であれ、うまく行くこともあれば、そうでないこともあります。うまく行かないと落ち込むのは誰もが同じ。
就活から離れるのもいいでしょう。
が、あまり落ち込みすぎて就活から完全に離れてしまうのも考えものです。
就活は行動量を増やさないことには内定に行きつかないので。
パターン2:古い情報に振り回される
7月以降の選考なんてほぼないですよね
求人があるのはどうせブラック企業だけ
これも無い内定学生の多くが該当するパターン。
勝手に判断しやすく、その根拠となる情報は古いものが多いのです。
確かに就職氷河期には選考解禁以降の求人は多くありませんでした。ブラックとまではいかなくても、学生から敬遠されやすい企業が多かったのは確かです。
が、ここ数年の売り手市場においては、大手企業も含めて選考解禁以降も採用を続ける企業が増えました。
特に今年はゴールデンウィーク10連休の影響もあって、選考を前倒しする企業が続出。その結果、早期に内々定を出し、内定辞退・選考辞退をする学生も増加しています。そのため、今年は例年以上に採用を続ける企業が多い見込みです。
こうした話を知らないまま、「どうせ就活を続けてもダメだろう」と判断してしまうのは早計というものでしょう。
パターン3:情報入手先を限定してしまう
××ナビはもうほとんど掲載していない
大学就職課の求人情報はほぼなかった
パターン2の変化球とも言えます。大学就職課の掲示板にしろ、就職情報サイトにしろ、情報はどうしても選考解禁後は少なくなりがちです。
ただ、就職情報サイトによっては求人情報をまだまだ掲載している、というところも。
今年だと、リクナビ・マイナビなどの大手ナビにはまだまだ求人情報が掲載されています。
プラスチック原料や土木資材を扱う商社であるフジモリ産業の採用担当・吉田真和さんによると、
弊社は今年、4人採用予定で今のところ(6月15日現在)2人です。
例年、内定が予定数に満たない場合は、OBのいる大学キャリアセンターと出身ゼミの先生に学生の紹介を依頼しています。その他に新卒紹介エージェント(アイデムやベネッセ、ディスコなど)を利用することもあります。
とのこと。
こうした企業側の動きを無い内定学生は把握していません。もちろん、そう簡単に把握できるものではないのですが、広く情報を取ろうとする学生であればまだチャンスがあります。
無い内定学生が損をしてしまいやすいのは「今まで使っていたものに求人情報がなければもうダメだろう」と勝手に考えてしまうところ。
たとえば、私が6月に会った無い内定学生は関西の大手企業を受けようとしていました。付言すれば、関西出身ではなく、しかも、就活では一度も関西企業を志望企業候補に入れていません。
その理由はこの学生が普段から利用していた就職情報サイトにありました。
このサイトは外資系や大手企業が中心の小規模なサイトです。
早期に動く学生にとっては便利なのですが、選考解禁以降は求人情報が極端に減る、という特徴があります。この特徴を知らないまま、サイトを利用していて
「大手企業で求人情報を出していたのが関西のこの企業だったので」
とのこと。リクナビやマイナビなどは見ていないとも話しました。
そこでその場でリクナビ・マイナビを検索してもらったところ、大手企業の求人情報が多数出てきたのです。
「こんなに求人情報があるのですね。知りませんでした」
ナビサイト以外にも、新卒応援ハローワークや就活カフェなどもあたってみる価値はあります。
就活カフェの一つ、キャリぷら東京のカウンセラー、竹村昌芳さんは「キャリぷらは街ナカのキャリアセンター」と話します。
キャリぷらには、信頼できる大人のスタッフが、要望があれば親身に相談に乗りますし、ESの添削や模擬面接もできます。就活中の学生、就活が終わった学生、これから就活に本格的に取り組む学生など、様々な事情を持った学生がたくさん集まっています。
同じ境遇の学生同士で話すのもいいですし、一人で黙々と作業しても誰も邪魔をしません。
イベントは、グループディスカッション、模擬面接など就活を1日で体験できる「モギ就」を毎月開催しています(キャリぷら大阪=第三土曜日、キャリぷら東京=第三金曜日)。キャリぷら参画企業の人事が実際の面接さながらに模擬面接をし、面接のフィードバックをしてくれますので、自分の就活スタイルを見直すにはうってつけです。
就職情報会社主催の合同説明会も、リクナビは7月6日(大阪)、13日(福岡)、14日(名古屋)、15日(東京)で「合同面接LIVE」を開催。
マイナビは「就職EXPO夏の陣」を東京(7月1・2日)、静岡(1日)、福岡(16日)で開催。他、中小規模の合同説明会も7・8月以降を含め多数。
あさがくナビは「就職博」を東京(7月9・10・23・24日)、大阪(9・10・23・24日)、名古屋(29・30日)、福岡(18・19日)などで開催。
これに中小企業関連の合同説明会なども含めると、実はまだ機会は多いと言っていいでしょう。
パターン4:相談先を敬遠しすぎ
あれだけお世話になったのに結果を出せずに恥ずかしい
顔を合わせるのも申し訳なくて
これも多いパターン。私も例年、このパターンに陥った学生に遭遇しています。
一生懸命、就活について相談に乗ってもらったのに、結果を出せずに恥ずかしい、と無い内定学生は考えてしまいます。
そうかもしれませんが、うまく行っていないときこそ、普段から相談していた就職課・キャリアセンターなり、就活カフェなりを使うべきでしょう。
特に就職課・キャリアセンターは補充採用の求人が寄せられます。そうした情報を取るためにも就職課・キャリアセンターは利用した方が得をします。
「今までよく通っていた学生が急に来なくなったと思ったら、『お世話になったのに結果が出せなくて恥ずかしい』。恥とは思わないし、結果が出ないなら出ないでサポートするから、と何とか口説き落としてキャリアセンターに来てもらったこともある」(首都圏私大・キャリアセンター職員)
パターン5:1・2次選考で落ちやすい
就活がもう怖い
何をやってもダメ
1・2次選考で落ちてしまう学生は、企業が求めるレベル(適性検査のスコア、社会常識など)に達していない、そもそも適性が合わない、などの特徴があります。
キャリぷら東京の竹村さんは、「身だしなみ、クセ、表情など、第一印象の見直し」「働く姿を描きながらの企業研究」「自己PR、ガクチカでは『再現性』のあるエピソードを」の3点を挙げます。
初期の選考に通過しない学生の特徴に「三無」があります。三無とは「無表情」「無関心」「無反応」です。面接官は、「取引先に学生を新入社員として連れてあいさつする姿」や「他部署の人間に新入社員を紹介する姿」を想像しています。その時に、笑顔が出ない「無表情」や、身だしなみに気を使わない「無関心」や、心を込めた挨拶ができない「無反応」な学生は、採用することが難しい。マイナスの「再現性」をそこに見てしまうからです。特に、笑顔は「相手を受け入れるサイン」です。無理やりの笑顔でもいいから、出せるようにしましょう。
それから、会社説明会が重なり時間がないという事情もあるでしょうが、企業研究が足りない、もしくは企業理解が浅い学生も見受けられます。企業研究ができていないと、面接官は「志望度が低い」と思ってしまいます。1次選考で受かっても、2次選考で企業研究が1次より進んでいなければ、やはり志望度が低いと思われます。その企業に入りたいと思うならば、それだけの時間を企業に使わなければいけません。
面接で聞かれていることはただ一つ、「あなたはどういう人?」です。面接官は自分の頭の中に学生の動く姿を思い浮かべたいのですが、「私は積極的な人間です」だけではその姿を描けません。「50人に話しかけた」「朝一番に行ってグラウンド整備した」という具体的行動を伝えましょう。積極性が歩かないか、判断するのは面接官ですから。
フジモリ産業の吉田さんは、自己分析を再度やってみることを勧めます。
これからのリスタート、まずは一旦冷静になって、今一度、自己分析をしてみてください。
その際に『憧れ、やりたいこと』で企業・仕事選びをするだけでなく、自分自身の『得意なこと』と仕事を結びつけて企業選びをしてみるのもひとつの考え方です。
なお、大学キャリアセンターからは1・2次選考で落ちやすい学生の傾向として、
無謀な大企業狙いが多い。それもろくに社会常識・情勢などの勉強もしないで。イメージだけで受かるほど甘くない。
マスコミ、広告やスポーツ、食品など人気業界のみ志望する学生は、はまらないと就活が長期化することもある。
などを列挙。そのうえで、企業の規模や業界変更なども含めて検討するべきではないか、との意見が多数ありました。
パターン6:最終選考で落ちやすい
あれだけ頑張ったのにどうして内定まで行かないのだろう
最終選考で落とされた
1・2次や中盤の選考はうまく行っても、最終選考でことごとく落ちる、という無い内定学生もいます。
キャリぷら東京の竹村さんは、「内定がゴールになっている学生は最終選考で落ちやすい」と話します。
数々の選考を乗り越えてやっとたどり着いた最終選考だからこそ、ここを通過すれば内定が出るとなれば、どうしても内定がほしいという気持ちが強くなってしまうのも仕方がないでしょう。
しかし、ここに落とし穴があります。一次、二次選考と最終選考の違いは、前者が「問題がなければ次の選考に進ませる」のに対し、後者は「採用する理由がなければ落とす」ことです。
この違いは大きく、一次選考や二次選考では、選考に進める学生は「選考枠」のうちの一人ですが、最終選考は「〇〇部の△△課長の部下に1名」というように、その部署に合う「特定個人」に内定が出ます。その時、面接官は学生から「その部署で働いている姿」を見ようとしています。内定がゴールになっている学生は、働いている姿を面接官が描けないことが多いのです。
働く姿を描くためには、自分が配属を希望する部署の働き方を知る必要があります。OB訪問をしたり、懇談会で社員に業務内容を詳細に聞いたりすることで、働く姿を描きやすくなります。もし、その時間が取れないならば、採用情報の先輩社員情報から、共感する働き方をしている社員の姿を自分の中に描いてみましょう。
パターン7:総合職から一般職転換で極端すぎ(女子)
総合職で無理だったので一般職志望に変えました
いっそ契約社員にしようかと思います
女子の無い内定学生でときどきいるのが、総合職から一般職への転換です。
理由は総合職より一般職の方が簡単そうだから、というもの。
実はこれが大きな落とし穴です。
大手企業の一般職は採用者数が減少傾向にあり、その一方で、根強い人気を誇ります。
では、地方企業や大手企業地方支社の一般職は、と言えばこちらはこちらで激戦です。
つまり、総合職がダメなら一般職に、という戦略はそもそも勝算が薄い、と言えるでしょう。
留学帰国者は大学を頼れ
上記7パターンの例外として、留学帰国者が挙げられます。
長期間、留学した学生が5月下旬から6月にかけて帰国。そこから就活を始めるので就活を続けてきた「無い内定」学生とはちょっと違います。ただ、内々定を得ていない、という点では同じ。
それから、内定を得ていない、という焦りも似ています。
とは言え、留学帰国者、それも長期間の留学を経験した学生は他の学生にない強みがあります。それは他でもない、留学経験です。
留学経験者が増えているとは言え、長期留学に踏み切る学生は多くありません。そのため、グローバル企業を中心として、留学経験者は別枠で採用する、あるいは、採用時期をずらして選考をする、という企業が多いのです。
長期留学者が多い大学やグローバル・外国語系学部だと、そうした企業を集めて学内合同説明会を開催する大学もあります。
他の学内合同説明会と違うのは、説明会と初期選考(面接や適性検査)を兼ねているところでしょう。
一般的な学内合同説明会だと企業の説明を聞いて終わりなのですが、長期留学者向けの学内合同説明会は、説明終了後に初期選考も実施します。
もちろん、面接であれば志望動機などを聞かれるわけがなく、留学経験などを中心に話が進みます。
この学内合同説明会・選考会は、長期留学者にとってとても便利です。その反面、一般就活生以上に、選考が早く進行する、という点は注意が必要です。
一度、受けた企業への再チャレンジは?
では、一度、選考に参加して落ちた企業への再チャレンジはどうでしょうか。
採用担当者に取材したところ、「歓迎」「1・2次選考落ちなら可」「無理」と対応が分かれました。
初期選考段階で落ちた学生でも、選考途中に辞退された方でも応募は大歓迎です。(フジモリ産業・吉田さん)
「1・2次選考で落ちていれば、再チャレンジは可。ただし、最終選考落ちだと、社長・役員が『うちに合わない』と判断をしているので、再チャレンジしてもらっても、おそらくは同じ」(人材)
「再チャレンジしてもらっても、書類選考の段階で落とす」(商社)
再チャレンジが可能かどうかは企業と選考落ちのタイミング次第のようです。
気になる企業への直接連絡は?
ナビサイトなどに求人が出ていなくても、ダメ元で気になる企業に連絡するのはどうでしょうか。
これも対応は各企業で分かれました。
「急な内定辞退で補充をどうしようか、と考えていることもあるので直接、連絡を貰うのは歓迎」(医療)
「正直、迷惑。求人情報を出していないのであれば連絡してほしくない」(商社)
「断られてもアポを取る電話営業にも通じる話。そのガッツは買いたい。もちろん、それで内定まで行きつくかどうかは別だけど」(人材)
「連絡大歓迎です。いきなり電話やメールよりもまずはHPからエントリーしてください。まだ、会社説明会を開催しますので予約フォームをご連絡いたします。もし、説明会の前に話を聞きたい場合もスケジュールが合えばお会いすることも可能です」(フジモリ産業・吉田さん)
無い内定学生の皆さん、明けない夜はありません。もう少しだけ就活を続けてみてください。あなたに合う企業が必ず見つかります。