ノーベル平和賞の前日、現地での反応 ノーベル平和センターで「性暴力としての兵器」写真展
ノーベル平和賞の授賞式が10日、オスロ市庁舎で開催される。
前日、オスロにあるノーベル委員会では記者会見が開催された。
コンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏と、人権活動家イラク人ナディア・ムラド氏は、兵器としての性暴力根絶を訴える。
ムラド氏は、「ノーベル平和賞で女性に対する暴力を全て根絶することはできないが、起こっていることを止めるように政府や世界に訴えかけていくことはできる」と語る。
「ノーベル平和賞により、女性に対する暴力にスポットライトを当てることができる。私たちはもう、知らなかったと言うことはできない」とムクウェゲ氏は賞の重要性に触れた。
EV普及の国ノルウェー、ムクウェゲ氏はEV市場を批判
ムクウェゲ氏は、コンゴでの紛争は鉱物資源を巡る紛争が原因だとも指摘。電気自動車「EVの先進国」として知られ、そのことを誇りに思っている現地ノルウェーでは、「ムクウェゲ氏がEV市場を批判、コンゴでの紛争には皆に責任がある」と国営放送局NRKが報じた。
ノーベル平和センター「戦場となった身体」写真展
オスロ市庁舎から徒歩2分ほどのところには、ノーベル平和センターがある。人気の観光スポットともなっており、平和賞受賞者に関連するテーマにあわせて、展示テーマが毎年変わる。
今年は「戦場となった身体」。スペイン出身の写真家Cristina de Middel氏が、受賞者2人、性暴力を受けた女性たちや、その結果で生まれた子どもの姿などを撮影した。
ノーベル平和センターには、世界中からの観光客のほかに、ノルウェーの学校の子どもたちが社会科見学の場として訪れる。
今年のテーマは過激なものも含まれるため、保護者には英語とノルウェー語でその旨を伝えるパンフレットを配布するなどして対応する予定。
「被爆者の遺品は来場者に大きな衝撃を与えた」
毎年およそ25万人が訪れる同センターでは、昨年の受賞者が核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)であったことから、広島や長崎の被爆者の遺品を1年間展示していた。
「被爆者の遺品は、来場者に強い衝撃を与えました」と語るのは、リーヴ・トレス館長。
兵器としての性暴力に関するテーマで、これほどの大きな規模での展示は初だそうだ。
性暴力を考えさせる写真
「写真展が、人々の意識や考えを揺り動かすものであって欲しいと思っています」。
「私たちは戦争写真は見たことがありますし、それは世の中で受けいれられている写真です。けれど、性暴力の写真を直接撮影するというのは、まず不可能です。展示のために、写真家は性暴力を直接撮影することなく、問題点を掘り起こす写真を撮影しました」。
無料コンサートに1万2千人
9日夜、オスロ市庁舎前では受賞者2人を迎えて、無料の野外コンサートが開催された。
これまで開催されたコンサートは有料だったが、資金難で中止に。別の形で資金が調達され、無料コンサートは平和賞受賞者を歓迎する市民の式典となって生まれ変わった。会場にはおよそ1万2千人が集まった。
10日、オスロ市庁舎での平和賞授賞式後、夜は受賞者が宿泊するグランド・ホテルに向かって市民のトーチライト・パレードが開催予定。
Photo&Text: Asaki Abumi