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香港の緊迫 騒然とした西灣河での実弾発射 現場目撃者たちの怒りと恐怖

堀潤ジャーナリスト
事件があった西灣河で聞いた 撮影:キセキミチコ

11日朝、道路を封鎖し抗議行動を始めた若者たちに対して交通警察官が複数発砲。若者は腹部に直接被弾し病院に運ばれた。重体と報じられたが、現在、回復に向かいつつある。現場の香港市内、西灣河駅前をその日のうちに訪ねた。7月から住み込みで現地で取材を続ける写真家のキセキミチコさんと合流し撮影を進めた。

現場を上から 画面の右下は千羽鶴  撮影:堀潤
現場を上から 画面の右下は千羽鶴  撮影:堀潤

駅前の交差点に残る、足元の血痕を見つめる17歳の少年が話を聞かせてくれた。朝、若者が撃たれる瞬間を目の前で目撃していた。「撃った警察官は何も言葉を発することなく彼を撃った。男性は武器を持っていなかった。4、5発くらいだったか。何もすることができなかった。警察官が大勢いたので身動きが取れなかった」と唇をかむ。

少年少女、若者たちの抗議は続く 撮影:堀潤
少年少女、若者たちの抗議は続く 撮影:堀潤

また、同じく現場にいた16歳の少年は「怒りしかありません」と答えたが、「怖さはなかった?」と尋ねると「怖かった。少しだけれども。それでも怖さに勝る怒りを抱く」とまっすぐ私の目を見つめて答えた。

現場、深夜まで警察と向き合い抗議行動を続けていた16歳、17歳の少年少女たち。祈りを捧げ、不安や怖さと向き合い、暴力に対して怒りの声をあげる。何を一番求めているのか?そんな質問には「五大要求だ」としながらも「普通選挙がない。民主主義といっても私たちの選択には制限がある。本当はそこを変えたい。平和的な行動を望んでいるが、政府は私たちの声に耳を傾けない。道路の封鎖は政府へのプレッシャーだ」と、今回の実弾発射の背景となる抗議活動の意味を教えてくれた。

祈りを捧げる、静かに 撮影:堀潤
祈りを捧げる、静かに 撮影:堀潤

皆が大切にする、香港人のアイディンティとは何を指すのか?と最後に尋ねると、「表現の自由、言論の自由だ。それが脅かされている」と涙を浮かべて19歳の女性が答えた。

翌日、再び現場を訪ねた。

警察との攻防は今も続いている。キセキカメラマンが女性に尋ねると「とても怖かった。自分が住んでいる街でこんなに恐ろしいことが起きてしまうなんて。日本に戻ったら伝えてほしい、例え皆が関心を示さなかったとしても、今香港で起きていることを伝えてほしい。民主主義の精神にとって危機的な状況が、ここで起きているから」と涙を流し、声を詰まらせながら答えた。

□実弾発砲から一夜空け、香港各地で続く抗議活動

さらに、キセキカメラマンはきょう、金融街での抗議行動を取材するとともに、香港郊外にある、中文大学での警官とデモ隊の衝突についても注意を促している。13日、わたしも再び香港を訪ね、現地で取材をする。

8bitNewsのキセキさんの記事を引用しておきたい。

11月12日。実弾発砲があった昨日に引き続き朝から、各地でストライキが行われた。

陣地戦ではない為、デモ隊の姿は発見しにくく一般市民がいる中で、今日も催涙弾が何発も放たれた。デモ隊による破壊行為や道路封鎖の行為は許される行為ではないが、彼らは捕まる覚悟を持ち罪を償う覚悟で戦っている。そこには平和的に抗議活動をしても一切の耳を傾けない政府の姿勢に対して「聞いてほしい」という切なる思いと、強引な法律や、過度な武力行使による抑圧にたいする抗議、そして、他国に対しての SOSなのだと思う。

午後16時過ぎ、セントラルでまた催涙弾が発砲されたとのこと。急いで現場へ行くと路面電車が運転停止しており、警官隊と一般市民との言い合いになっていた。

そして、一般市民に向けて、催涙弾とゴム弾を発砲し威嚇しながら後退する警官隊。去り際にデモ隊がいない一般市民と記者に向けて散弾式の催涙弾を数発投げつけて、17時頃退去していった。(散弾式の催涙弾の中には10発ほどの催涙弾が入っており、爆発と共に催涙弾が飛び散る)その際に女性記者が1名負傷。警察側も日々のストレスでリミッターが切れかけているのだろうか、最後に放った散弾式催涙弾は、市民から言われた警察への非難に対し、怒りの発散のようにも感じた。

また、中文大学では昨日から異常事態が起こっており、絶え間なく警官隊と学生が戦っている。

無数の催涙弾が構内に発砲され、多くの逮捕者がでている。

なぜ今中文大学がここまで異常事態とも思える状況になっているのか?

現地の情報によると、中文大学内に香港のネットワークの8割を占めている大型通信機があり、香港のインターネット管理を大学内で行っている。警察はそのネットワークをコントロールする為、またデモ情報と発信者を探す為に大学への侵入と攻撃をしている可能性が高いとのこと。

これにより、言論の自由がさらに奪われるのだろうか。

また、政府は今日公安令の元では、学校は私有地ではない為令状がなくても逮捕することが可能と発表。警察と同大学校長の話し合いがなされても攻防は終日続き、今日だけで60人以上の逮捕者がでている。

11月11日に実弾発砲があった現場(西灣河)では、引き続き市民、デモ隊が警察に対して抗議活動が行われていた。そんな中で何人かのデモ隊、市民に話を聞くと、「警察は大きなミスを犯した。」「僕たちは怖いけれど、仲間がいる。彼の為、未来のために戦う」「政府が僕たちの声を聞かないことで、このような事態になっていること。僕たちの10代の若者の未来に価値はない。だから戦う」と。夜22時なると撃たれた交差点に多くの人が集まり、戦う意思の確認、そして香港の復活を願うスローガンが叫ばれ、デモ隊が動き始めた。

今、また香港が大きく変化しています。この数日で、毎日のように記者の負傷のニュース、平日昼間の一般市民に向けての発砲、実弾発砲、中文大学での異常な攻防、そして今まで支援側にいた人たちがスーツ姿のまま抗議活動に参加している様子。改めて今の香港の内戦化していること、香港の未来に、不安と恐怖を覚えました。

また現場で待機しているとFirst Aidの方がメディアのためにハンバーガーの差し入れをしてくれ、通りすがりに「気をつけてくださいね。ありがとうございます」と声をかけられ改めて香港人の結束と、助け合い、優しさに心が温まり、彼らは決して大きな力に飲み込まれてはいけないと思っています。

当日事件映像

「copyright : Cupid producer」

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2016年(株)GARDEN設立。現在、TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」キャスター、Amazon Music「JAM THE WORLD」、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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