おーい、こちら灯台【保育士書店員が選ぶ絵本】絶海の孤島で仕事・出産・子育て

リビング書店では、ときどき近所の子どもたちを集めて、お話し会をしています。
夏休みのお話し会で、小学1,2年生の子どもたちが、とても興味を持って聞いてくれた本を紹介します。
電気も水道もない無人島の灯台の管理人、灯台守のお話です。
おーい、こちら灯台
ソフィー・ブラッコール 作 山口文生 訳
評論社

2019年に米国で最も権威ある絵本賞『コールデコット賞』を受賞。
灯台ってなあに?
この絵本を小学校低学年の子たちに読むには、前もって少し説明が必要です。
「灯台って知ってる?」と聞くと、10人の子どものうち、何人かの手が上がりました。
「海にあるもの」「光るよ」
「どうやって光ると思う?」
「電気で」
「電気がない昔なら?」
「・・・」
読み手のわたし自身も電気のない生活をしたことがないので、想像を交えながら話します。
・昔の灯台はランプを使っていた。油が切れないようにつぎたさなければならない。
・ランプを回すためには、ゼンマイを巻く必要がある。
これらが灯台守の仕事だということを、子どもたちに説明していきます。
しかしランプやゼンマイも、子どもたちにはなじみのないものです。さらに説明が必要です。
でも、わたしが全部説明しなくても、
「キャンプでランプを使ったよ」とか「おもちゃのゼンマイなら知ってる」など、次々と声が上がります。
子どもの言葉で語ってもらったほうが、ほかの子にもわかりやすいですね。
こんな感じで事前説明を終えてから、絵本のお話に入ります。

一人っきりの暮らし
電気も水道もガスもない無人島の灯台に、一人の灯台守がいます。
仕事は、ランプやゼンマイの保守と灯台日誌を書くこと。
一人っきりの生活ってどんな感じ?
迫力のある絵に、興味ある話が進むにつれ、聞き手も読み手もお話に引き込まれていきます。

ある日奥さんがやってきた
数ヶ月に一度やってくる補給船が運んできたのは、燃料と食料とそして・・・奥さんでした!
一人っきりの寂しい灯台守の生活が、花が咲いたように明るくなりました。
難破船の救助、病気の看護など、夫婦二人で灯台のさまざまな苦労を経験しながら、灯台の中で赤ちゃんが産まれ育つ様子も描かれています。

子どもにも知的な話を
小学1,2年生の子どもには、ちょっと難しい話かな?と少し思っていましたが、それは杞憂でした。
子どもたちが知らないことには読み手の大人が説明を加え、知っている子、話したい子には説明に加わってもらう。そんなお話し会のやり方で、子どもたちは自分の知らない知的な世界へ、どんどん引き込まれていきます。
いろんな分野の絵本のお話し会があっていいと思いますが、(日本の絵本界では主流とは言い難い)自然、環境、戦争などの社会問題を扱った絵本を読むのがわたしは好きです。
子どもの知的好奇心を引き出し、子どもたちが自分の知らない、自分以外の立場から物事を考えるきっかけになればいいなと思うからです。