Yahoo!ニュース

イニエスタの後継者は? 世界サッカーをリードするMF

小宮良之スポーツライター・小説家
スペイン代表ではデビュー戦でゴールを決めたダニ・オルモ。(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 ”メッシ・ロナウド時代”は、いつか終わりを告げる。今年、リオネル・メッシは33歳、クリスティアーノ・ロナウドは35歳。肉体は衰えるのだ。

 十代の選手が、その後を継ぐことになるだろう。新時代の主役は誰か?中盤で世界最高と言われたのは、シャビ・アロンソ、アンドレス・イニエスタだが…。

ネクスト・カゼミーロ

〇アンカー(DFとMFをつなげ、重しとなり、チーム全体のかじを取る)

 このポジションで期待されるのは、フランスU―20代表エドゥアルド・カマビンガ(レンヌ、17歳)だ。

 カマビンガは、アフリカ系選手独特の体の使い方とリズムが特徴的。体をくねらせ、関節を外すように足を延ばし、ボールを絡めとる。奪った後、持ち上がるダイナミズムも長所だろう。カウンタータイプのチームで、至高の仕事ができる。同胞のフランスとしては、かつてのマケレレ、あるいはカンテに近いか。レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督も、カゼミーロの後継として熱望していると言われる。

 もう一人、スコットランドU―21代表のビリー・ギルモア(チェルシー、18歳)も面白い。小柄な選手だが、相手を外すだけの技術とスピードと度胸がある。最大のセールスポイントは、ロングパスの精度か。世界有数のセンターハーフとして名を鳴らしたフランク・ランパード監督が高く評価し、デビューさせていることが才能の証左だ。

今シーズンの殊勲者

〇センターMF(中盤全域を制圧しつつ、攻守のバランスを取る)

 今シーズン、最も目覚ましい活躍を見せているMFは、ウルグアイ代表フェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード、21歳)だろう。

 バルベルデはアンカー、ボランチ、攻撃的MF、どのポジションもこなせる。Todo Terreno(四輪駆動)と言われるタイプのMF。身体的に屈強で、とにかく1対1で負けない。際立った戦闘力によって、どのポジションでも起用できるのだが、やはりディフェンスラインの前にいるときの存在感は群を抜いているか。

無名ながら楽しみ

〇インサイドハーフ(4-3-3の布陣で、攻守の両輪となるような動きをする。サイド、中央、さらにゴール前まで動き、プレーを作り出す)

 スペイン人ロベルト・ナバーロ(レアル・ソシエダB、17歳)は、世界的には無名だろう。レアル・ソシエダでは、トップデビューも飾っていない。しかし今シーズン、現役時代に世界最高のMFだったシャビ・アロンソの指導を受け、著しい成長を遂げている。

 そのボールタッチの良さは出色。FCバルセロナの下部組織ラ・マシアで育てられただけに、基本が違う。久保建英の一つ下の世代。トップに昇格せず、2018年7月、モナコとプロ契約を結んだ。同シーズンはティエリ・アンリが監督を務め、16歳だったナバーロはトップでの試合に抜擢されている。チーム史上最年少デビューだった。

 ボールコントロール、ターンは芸術性すら感じさせる。アンドレス・イニエスタに最も近い十代かもしれない。アンリ監督が昨年1月に解任された後で出場機会を失い、レアル・ソシエダに新天地を求めたが、そのセンスは白眉だ。

もう一人のイニエスタ

 もう一人のインサイドハーフとして推したいのは、スペイン代表のダニ・オルモ(ライプツィヒ、21歳)。オルモもラ・マシアで育っているが、やはりユースに昇格しなかった。16歳でクロアチアの名門ディナモ・ザグレブとプロ契約し、同年にトップデビュー。着実にプレー経験を積み、一昨シーズンはレギュラーを確保し、昨シーズンは主力として12得点を記録した。今シーズンはエースとしてチャンピオンズリーグにも出場し、その活躍で今年1月にライプツィヒへ移籍している。

 バルサ育ちだけにボールスキルの高さは一目瞭然。十代でプロの舞台で揉まれてきたことで、ひ弱さもない。ボールをつなげるだけでなく、持ち上がり、向かっていくプレーが身についている。それが、得点力の高さにつながっているのだろう。スペイン代表のデビュー戦でいきなりゴール。シャビ・エルナンデスやセスク・ファブレガスに匹敵するプレーメイク&ゴールセンスだ。

 余談だが、バルサはナバーロ、オルモだけでなく、ベティスに期限付き移籍させた22歳のカルレス・アレニャ、そしてバルサBを主戦場にする20歳のリキ・プッチ、同じく20歳のアレックス・コジャードなど、MFだけでも世界に誇る人材を育てている。先日、バルサBで得点を挙げた16歳のMFイライス・モリバも頭角を現しつつあり、外国人選手を大枚を叩いて獲得する必要はないように見えるが…。

 他には、レアル・ソシエダで目覚ましい活躍を見せる21歳のノルウェー代表マルティン・ウーデゴールも期待大。左利きで、その攻撃センスが開花した。レアル・マドリードからの期限付き2年契約だが、来期は復帰が囁かれる。

(次回はアタッカー部門、前回のディフェンダー部門は以下のリンク)

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20200403-00170740/ 

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

小宮良之の最近の記事