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仕事で「ワクチン」を接種できない! 会社が配慮しない場合の対処法とは?

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス感染の感染拡大が未曽有の規模で広がっている。すでに都市部では医療崩壊が広がっており、救急隊による「医療機関への受入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞. 在時間30分以上」の「救急搬送困難事案」は1週間に3,361件にも上っている(8/9~15、消防庁

 ワクチン接種が受けられずに不安な思いをしている方が多いだろう。そうした中で、企業が労働者にワクチン接種の時間を与えず、ワクチンが受けられないでいるケースも見られる。

ワクチン接種の配慮をしないのは違法

 問題となるのは、就業日の接種を会社が許可していない場合だ。予約の日と休日が合わなければ、接種が受けられない。また、職域接種の場合でも就業時間後では接種会場までたどり着けないため、ワクチン接種が受けられないでいるという事例もある。

 ここでまず確認しておきたいのは、「労働者の命はすべてに優先される」という大前提だ。どんな会社も労働者を雇用し働かせている以上は、その労働者の健康や安全を守る義務を労働契約の前提として負っている(安全配慮義務)。

 コロナが命の危険のある疾患であることも、医療崩壊している地域では医療を受けることが困難なこともすでに周知の事実になっている。今の状況では、ワクチン接種を希望する人に使用者が就業時間等で配慮しないことは、もはや違法行為(安全配慮義務違反)であると考えてよいだろう。

 厚生労働省も、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」で「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいもの」とし、労働者がワクチン接種のために有給で休める制度を整えたり、副反応に伴う体調不良にも対応することを求めている。

 働く人のワクチン接種について配慮しない会社は、厚労省の意向にも反することになる。

繁忙期でワクチンを接種できずに、コロナ感

 ワクチン接種を進めるためには、会社が積極的に業務よりワクチン接種を優先するよう呼びかけ、そのために遅れた仕事のフォローもすることを通知することなどの対応が必要だ。

 ところが、大手企業の職域接種でも問題が生じている。職域接種会場は土日にのみで、接種を受けるには仕事を早上がりするなどの措置が必要だが、繁忙期と重なり、ワクチンに時間を割くことがとてもできなかったという相談事例が存在するのだ。

 結局、この労働者は会社の配慮が足りず、ワクチンを受けられない状態でいた結果、新型コロナに感染してしまったという。

実際にどうしたらよいか

 ワクチン接種が受けられるよう配慮しないことが違法である可能性が高いとはいえ、この違法行為を取り締まる機関は残念ながらどこにもない。解決方法は、自分の権利行使だけだ。

 権利行使は、様々な企業の労働者が個人で加盟する労働組合(個人加盟ユニオン)を通して行うのが最もよいだろう。例えば、誰でも個人加盟できる「総合サポートユニオン」では、業務時間の都合でワクチン接種ができない状態の会社に対し、労働時間をずらしてワクチン接種できるよう求めている事例がある。

(労働組合による問題解決について、詳しくは下記参照)。

 参考:「労働組合はどうやって問題を解決しているのか?」

 労働組合の良いところは、団体交渉権や争議権などを使って、会社としっかりと話し合いができることだ。会社が誠実に要求に応じない場合には、社会的宣伝もできる。ワクチンを打たせない会社は社会的にも強い批判を受けるはずなので、要求は通りやすいだ。

 どうしても会社がワクチンの時間を取らせない場合はストライキを実施しワクチンを受けてしまうという手段もある。

 ワクチン接種の時間が取れないことに悩んでいる労働者は、各地にユニオンがあるので、まずは下記の相談窓口に相談をしてもらいたい。専門家からより詳しくアドバイスを受けることもできるはずだ。

常設の無料労働相談窓口

NPO法人POSSE

03-6699-9359

soudan@npoposse.jp

*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。全国各地のユニオンも紹介します。

総合サポートユニオン

03-6804-7650

info@sougou-u.jp

*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。

介護・保育ユニオン

03-6804-7650

contact@kaigohoiku-u.com

*関東、仙台圏の保育士、介護職員たちが作っている労働組合です。

NPO法人POSSE 外国人労働サポートセンター

メール:supportcenter@npoposse.jp

仙台けやきユニオン

022-796-3894(平日17時~21時 土日祝13時~17時 水曜日定休)

sendai@sougou-u.jp

*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。

労災ユニオン

03-6804-7650

soudan@rousai-u.jp

*長時間労働・パワハラ・労災事故を専門にした労働組合の相談窓口です。

ブラック企業被害対策弁護団

03-3288-0112

*「労働側」の専門的弁護士の団体です。

ブラック企業対策仙台弁護団

022-263-3191

*仙台圏で活動する「労働側」の専門的弁護士の団体です。

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。

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