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宇宙太陽光発電に向けた地上実証実験に成功、高度7000メートルから航空機による無線送電を実施

マイクロ波方式宇宙太陽光発電システム 出典:JAXA

地上の10倍以上の効率で発電が可能な「太陽光発電衛星」もし実現できれば世界のエネルギー問題を解決できるほどの革新的な進展となるでしょう。本記事では、先日に日本で実施された無線送電実験の内容をご紹介します。

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■宇宙太陽光発電衛星ってどんなもの?

レーザー方式宇宙太陽光発電システム 出典:JAXA
レーザー方式宇宙太陽光発電システム 出典:JAXA

宇宙太陽光発電とは、軌道上に太陽電池を搭載した衛星を配置し、発電した電気をマイクロ波に変換して地上に送信するシステムのことを言います。

地上ですと夜は発電できませんが、宇宙では太陽の光を常に浴び続けることができます。更に、雨や曇りなども宇宙では存在しないため、発電できない日が存在しません。宇宙には空気による太陽光の吸収がないため、発電効率は地上の10倍と言われています。

最初の構想は、1968年に米国のピーター・グレイザー博士が提唱したのが始まりです。石油や天然ガスなどの化石燃料はあと100年を経たずして枯渇してしまうと言われています。一方で宇宙太陽光発電は、持続可能な社会を実現できるエコエネルギーとも考えられています。最近では、電気自動車やSDGsなど、多くのエコ関連の言葉が行き交っていますが、宇宙太陽光発電は究極的な方法となるかもしれません。


■高度7000メートルからの無線送電実験に成功

宇宙太陽光発電システム 出典:JAXA
宇宙太陽光発電システム 出典:JAXA

太陽光発電衛星を実用化するには、発電した電力を電波に変えて、地上へ無線送電する技術が必要となります。今までの実験では、ドローンを使った数十メートル程度の距離からの無線送電までしか実証はされていませんでした。

そして今回、宇宙システム開発利用推進機構の研究グループは、地上7000メートルを飛行する航空機から地上のアンテナ受信部へ無線送電を行う実験を行いました。地上に設置されたアンテナ受信部は13か所あり、等間隔で並んでおり、航空機は姿勢を制御しながら精度良く電波を送信します。

そして、実験の結果は見事成功。いずれの計測地点でも電波を受信したことが確認されました。

2025年には小型の人工衛星を宇宙に打ち上げ、宇宙と地上間での無線送電実験を実施する見通しとのことです。夢のような太陽光発電衛星ですが、まだ世界的に実用化はされていません。やはり、太陽電池パネルの大型化や送電技術などの技術的な課題や、大型構造物であることから巨大なコストも問題の一つです。将来的には2040年代後半の商用利用を目指しており、いつか実現する未来が楽しみですね。

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