「売り手市場」の裏側にある、就活生が陥る「格差」という現実
就活ルールの廃止など何かと話題となる就職活動で「売り手市場」という言葉の裏側にある現実を就職活動をしている学生は捉えなければならない。
売り手市場の実態
確かに2019新卒採用は8月1日時点で内定率が85.5%、就職活動を終了したのは全体の78.5%(ディスコ調査)、大卒求人倍率1.88倍、その数字を見れば、世間が「売り手市場」というのも理解ができる。ところが、従業員規模別に求人倍率をみてみると300人未満企業(中小企業)では9.91倍、5,000人以上では0.37倍となっている(リクルートワークス研究所調査)。
つまり、学生がどこでも入社するということであれば、求人総数は約80万人、民間企業就職希望者数約43万人なので「売り手市場」となる。
早期内々定と格差市場
しかし、近年の学生の大手・ブランド志向や間違えた「売り手市場」の理解をしているケースは多く、本来は選考がスタートする6月には既に内々定を獲得している学生が多数で選考企業が少なくなってしまう。入社後の早期退職などから読み取ると、学生が行きたいと思えるような大手ではまだまだ「買い手市場」であり、現実的には「格差市場」がうまれている。19就活を経験した学生なら良く理解できることだろう。
企業の採用早期化に加え、昨今の就職活動では企業の評価ポイントも変化している。
3月1日に広報・会社説明会がスタートして6月から選考解禁になるというのが本来だが、前年8月のインターンシップから選考がスタートして本来の広報スタート時には内々定を出している企業が増加している。
企業の評価ポイントの変化
多くの採用責任者が学歴よりも価値観・能力という表現をするようになってきている。ここに「格差市場」のヒントが隠されている。つまり、企業はこれまでの古い就活での王道であった過去の自分の経験を綺麗にまとめてアピールする時代から、どんな人柄でどんな価値観を持っているか、さらには、社会で必要とされる能力を開発して来たのか? 入社後の研修を経て活躍できるイメージがあるか? ここに評価の軸を寄せている。となると、大学3年生の夏のインターンシップから始まる就活では価値観変革や社会で必要とされる能力を身に付けることはできないため、企業にアピールすることすら難しくなる。
大手・ブランド企業で複数内定を獲得する学生
一方、大学1年生から社会に興味を持ち、多くの社会人からリアルをインプットされ、自分自身の力量を理解し価値観変革を経験して、必要とされる能力を開発してきた学生は大手・ブランド企業から内定を複数獲得することになる。
ここで言う「格差」とは、古い就活を理解して「売り手市場」という言葉に安心感を持ち、企業が何を期待しているかを理解できず過去の経験ばかりアピールしてしまい、企業の評価は得られないばかりか他と一緒に見られてしまう学生と、新しい就活、企業の期待を理解して価値観変革や能力開発を意図して行っているため、大手・ブランド企業をはじめどこからでも評価される学生の格差のことである。
過去ではなく未来志向
就職学生だけではなく大学生全体に言えることは、世間が騒ぐ市場についての話は疑ってかかるくらいに自分で理解を深めてリアルを掴むこと。そして先輩からのアドバイスや周囲の動きに乗っかるのではなく、自分には何が今必要なのか? 過去ではなく未来志向で今の自分と向き合うこと。
なぜなら、今は企業が学歴や適性検査で評価をする時代ではなく、その学生にどんな価値や能力があるのか? 社会で活躍できるのか? をイメージできるかどうかが採用選考のカギになっている。学生の過去の経験ではなく、価値観の変革や社会で必要な能力開発をどれだけ進めてきたのかに期待しているからだ。
「売り手市場」や「買い手市場」という言葉に囚われることなく、社会・就活のリアルを掴み、正しい大学生活での学びを進められれば、自分にとって本当に何が大事で、今、何をすべきなのかを理解することができる。なぜはたらくのか? 今一度、考え抜いてみてほしい。
はたらくを楽しもう。