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JUJU 映画『母性』主題歌「花」に込めた思い「自分は自分でいいんだ、自分の心に正直に生きてきたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

夢が叶ったツアー『不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語-』完走

JUJUが5月から全国で43公演行なった『JUJU HALL TOUR 2022 不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語-』は、JUJUの日(10月10日)に開催した『不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- JUJUの日スペシャル 演出:松任谷正隆』で完結。このコンサートでも披露した最新曲で、話題の映画『母性』(監督・廣木隆一/11月23日公開)の主題歌にもなっている42枚目のシングル「花」を11月23日にリリースし、好調だ。

JUJUが映画主題歌を歌うのは4年10か月ぶりで、主演の戸田恵梨香が「JUJUさんの強さと包み込むような歌声からこの曲を聴き終わってようやく『母性』という作品が完成するのだと実感しました」と語っているように、映画にもどこまでも寄り添う名バラードだ。この曲について、そしてJUJUの夢が叶ったツアー『不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語-』についてインタビューした。

「自分のコンサートで、ここまでコンセプチュアルなものは初めてで、リハーサルが始まってから、最初は戸惑うこともありました。でもそれは(松任谷)正隆さんの思う『不思議の国のジュジュ』にとって必要であることもわかるし、正隆さんがずっとおっしゃっていたのは『やったことがないことなんだったら、とりあえずやってみようよ』ということでした。その言葉を信じて、バンド、スタッフ全員で一緒に作り上げてきて、ツアーがスタートしてからは毎日が幸せな時間でした」。

ユーミンのライヴに出演しているダンサーが参加するなど、プロデューサー松任谷正隆がユーミンの世界と、JUJUが大好きなユーミンの曲ばかりで構成され、JUJU自身が深いところまで入り込んだ世界観を交差させた、“不思議な”世界を作り上げた。公演が進むごとに、その内容は日々進化していった。

「本当に楽しいツアーで、終わりたくないからみんなで『終わらないんだ』って勝手に思い込んで、現実逃避をしていました」

「衣装も着て本番と同じように行うゲネプロを通して、初めて見えることがたくさんありました。それで緊張の中、初日公演を迎えて、さらに2日目に(松任谷)由実さんが観に来てくださってまた緊張して(笑)。全国を回らせていただく中で、私とバンド、出演者で『ここって、こういう方がよくない?』とか、『ここにこんな音を入れてみようよ』って色々更新をしていって、それを正隆さんが『また進化した?いいね、どんどんやって』と楽しんでくださって。毎公演観てくださった皆さんの拍手にどんどん背中を押されて、日本全国を回らせていただいて、気づいたら10月10日を迎えていたという感じです。本当に楽しいツアーで、終わりたくないから、みんなで『終わらないんだ』って勝手に思い込んで、現実逃避をしていました。でも本当に終わってしまって、今淋しさが押し寄せてきています」。

「歌いたい曲はまだまだあるので、このコンサートまたやりたいです!」

10月10日のステージにはユーミンも駆け付け、JUJUとのデュエットに客席は熱狂した。JUJUは、色々なところに導いてくれ、女性として、人としての気づきや発見を与えてくれたユーミンと、ステージで一緒に歌っている瞬間瞬間を大切にしながら、感極まっていた。

「誰よりも私が感動していたと思います。終わった後はまさに腑抜け状態になりました。由実さんと一緒に歌えたこと、いただいたメッセージは一生の宝物です。歌いたい曲はまだまだあるので、このコンサート、またやりたいです」

「映画の一番最後の余韻を絶対に邪魔しないように、ということを心がけ歌っています」

今回のツアーのアンコールで披露していたのが最新曲「花」だ。JUJUにとっては「東京」(映画『祈りの幕が下りる時』主題歌/2018年)以来、4年10か月ぶりの映画主題歌への書き下ろし楽曲になる。様々なドラマと映画、これまで両方の主題歌を担当してきたJUJUにとって、それぞれに臨む時の心持ちは違うのだろうか。

「私昔からテレビっ子だったので、ドラマが大好きですし、音楽は、回を追うごとに進化していく物語の最後に寄り添って、その次の回への期待が膨らむ何かであるといいなっていつも思っています。映画はエンドロールや、一番最後の部分で流れることが多いので、その映画が観た方の心に一番いい状態で残るお手伝いができる曲であるべきだと思うんです。ドラマと違って次はないし、一番最後の余韻を絶対に邪魔しないように、ということは心がけて歌っています」。

映画『母性』(公開中) 戸田恵梨香、永野芽郁
映画『母性』(公開中) 戸田恵梨香、永野芽郁

大ヒット中の映画『母性』は湊かなえ原作の、ある未解決事件に秘められた真実を、「娘を愛せない母」と「母に愛されたい娘」という二人の語り手によって炙り出してゆくサスペンスミステリー。主演の戸田恵梨香は「JUJUさんの歌でこの映画が完成する」とコメントし、同作品のプロデューサーも「清佳(永野芽郁)の未来は、自分らしく自然体で生きて欲しいという想いから、それを体現されている JUJU さんにお願いしようと考えました」と語っていて、「花」は映画の一部として、その肌触りや温度感を音楽で薫り立たせ、感じさせてくれる。

「湊かなえさんって本当にすごい作家さんで、人の一番奥にある陰の部分、どす黒いところを突きつけてくるというか、色々なことに気づかされるというか、その作品に触れた人全員を『考えること』にいざなってくれるというか。この曲は今の私にも必要な言葉が詰まっているし、この映画を観た方、曲を聴いてくださった方が、どんな状況であれ、それでも自分は自分でいいんだと思えるところに帰結して欲しい。それによっても少しでも多くの人に、もっと楽な気持ちになって欲しいし、この曲ができあがったことも、歌わせていただいていることも本当に良かったなって思います」。

「自分がいいと思う色の花でいいし、自分が咲きたいところで、自分のタイミングで咲く花のように、私も生きていきたい」

「花」は、<すべての花が 日差しを浴びたいわけじゃない>等、強くて優しい“芯を食った”言葉が並んでいる楽曲だ。

「色々な花があって、わかっていることだけど、花って可憐で、すぐ散るように見えて、実はすごく強くて。その花が散ったとしてもまた違う花が咲いていたり、日差しの下だけじゃなくて、日陰で咲く花があったり、日を当てると枯れてしまう花もあったり…。だから人間だって本当に自分が一番いいと思う場所だけで、自分が一番納得する生き方をすればいいんだということを、改めて教えられました。特にここ何年か、色々なことが起こりすぎて、世界全体が不安に苛まれて、余計なことに心を惑わされている場合ではないと実感していて。だから余計に自分の心にだけに正直に生きていこうって思うし、そんな時にこの曲に出会って、さらにその思いを強くしました。自分がいいと思う色の花でいいし、自分が咲きたいところで、自分のタイミングで咲く花のように、私も生きていきたい。そして全部を欲しがるのではなく、その扉の向こうに誰かがいる、自分が思う誰かがそこにいてくれるだけで十分だと思う。本当にこのタイミングでこの曲を歌えることは幸せです」。

切なさのその先にあるのものを、聴き手の心に届けるJUJUの歌と島田昌典のアレンジ

「花」(11月23日発売)
「花」(11月23日発売)

JUJU節が炸裂し、この曲の全体を包む切なさの、さらにその先にあるものを聴き手の心に届けるのが島田昌典のアレンジだ。JUJU作品では何度もタッグを組んでいる名手が、このミディアムバラードのJUJUの歌に寄り添い、島田節をさらにJUJUが掬い上げ、感動的な作品になる。

「島田さんのマジックがいつもどこかに潜んでいて、それが聴いてくださる方の心を震わせるのだと思います。この優しくて強い感じは、島田さんそのものだと思います。頑なさはあるけど(笑)。ファーストコンタクトは優しそうで、その優しさに手を伸ばして触れに行くと、すごく頑なな強さが隠れていて、この曲も、今まで手がけていただいた作品のアレンジにも、それが全部出ている感じがします」。

もんた&ブラザーズの「ダンシング・オールナイト」をカバー。「昭和歌謡や当時のポップスのイメージはたばこの煙や紫色。その雰囲気を大切にしました」

カップリングでは、昭和世代の音楽ファンにはおなじみのもんた&ブラザーズの『ダンシング・オールナイト』をカバーしている。イントロや間奏も含めてオリジナルに近いアレンジで、JUJUが表現している。

「この曲は必要以上にオシャレにしたくなかったんです。私の中で特に昭和歌謡とかこの時代のポップスには、たばこの煙や紫色のイメージが強くて。私が好きなスタンダードなジャズの世界観も、やっぱり1950年代、60年代のジャズクラブのイメージがあって、そこでも葉巻の紫色の煙がくゆっているんです。ジャズクラブも大好きなスナックも昭和歌謡も、煙が自分の中ではキーワードになっているから、『ダンシング・オールナイト』もその雰囲気を消したくなかったんです」。

5月から『ジュジュ苑スペシャル「スナックJUJU 2023」~47都道府県出店!!“あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~』がスタート

来年は6年ぶりにスナックJUJUのママとして、全国47都道府県を回るツアー『ジュジュ苑スペシャル「スナックJUJU 2023」~47都道府県出店!!“あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~』を、5月13日の埼玉を皮切りに53公演開催する。

「全国のスナックのママや、スナックが大好きな人に聴きたい曲をリクエストしていただいて、それを元にセットリストを考えていきたいと思います。老いも若きもみなさんちょっと着飾って遊びに来ていただきたいです。その頃には歌を一緒に口ずさめるような世の中になっていることを祈っています」。

この時季恒例のブルーノート東京でのジャズライヴ『JUJU JAZZ LIVE 2022「MAKE IT ALL DELICIOUS IN DECEMBER!! 」at BLUE NOTE TOKYO』を、3年振りに有観客で開催

JUJUはこの冬、恒例となっているブルーノート東京でのジャズライヴ『JUJU JAZZ LIVE 2022「MAKE IT ALL DELICIOUS IN DECEMBER!! 」at BLUE NOTE TOKYO』を、3年振りに有観客で開催する(12/14~15、17~19)。

様々なスタイルで歌を届けるJUJU。JUJUがユーミンの音楽に手を引かれて、色々な世界を心の旅で楽しんだように、JUJUも多くの人を様々な世界に連れ出し、音楽の素晴らしさをこれからも伝えていく。

JUJUオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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