ゆれるLINEやフェイスブック等のSNSサービス ~ユーザの権利かサービス保護(通信の秘密)か~
本人に成り済まして、フェイスブックを開設したということで、成り済ました発信者を訴える為にフェイスブック側の通信ログの開示を求めた訴訟で、東京地裁がそれを認め、フェイスブック側がその開示を行った事が明らかになりました。誹謗中傷を含めて、明らかに犯罪に利用された場合は今までも開示に応じていましたが、それ以外で、個人の要求に応じた判断が成されたのは珍しいことです。そのファイスブックも含め、ツイッターやLINEといったSNSは今、そのサービスにおいて転換点にあるかもしれません。
フェイスブックに限らず、様々なネットワークサービスにおいて、通信ログを開示する事は困難です。数年前から警察等捜査機関との協力において開示するようになりましたが、一般には裁判所の判断、命令によって開示される事になります。なぜ、ネットワークサービス側は通信ログの開示には慎重なのでしょうか。それは「通信の秘密」という電気通信事業法という法律の前提もありますが、安易に開示する事によってサービスが成り立たない可能性があるからです。通信ログを解析する事によって、誰が何を書いているかだけでなく、誰がどのような記事を読んでいるか等、何を行っているのかがわかるからです。すなわちユーザのプライバシーや個人情報が外部に流出する事になりサービスが成り立たなくなるのです。
グーグルにとって検索結果を歪めることは、そのサービスにおいて死活問題です。理由はともあれ、個人や組織からの要求によって検索結果を左右させる事は検索サービスとして成り立たなくなるからです。しかし、「忘れ去られる権利」を始め、様々な問題が顕在化する事によって、事態が大きく変わろうとしています。上記のように成り済ましの問題や誹謗中傷、それに詐欺への利用、プライバシーや個人情報の漏えいといった問題に積極的に対処しなければ、通信の秘密や検索の公平性といったサービスとしての本質に関わらず、利用者が離れていく事態に陥るからなのです。
LINEも国内で登録者数が5,400万人を超え、サービスとしての転換期にあると考えられます。何らかの方法でアカウントが乗っ取られ、詐欺等の目的で頻繁に悪用されるようになり、またLINEいじめの問題もあり、その対策を講じる必要があります。対策はSNSとしての本質、つまり「つながり」を容易に、しかも堅実に構築できるということを阻害する可能性があります。しかし、それ以上に、利用者個人が被害を受けるという危機意識を募らせるかもしれないのです。