おつきさま こんばんは・英語版【保育士書店員が選ぶ絵本】日本の名作をロバート・キャンベルさんが英訳

以前に、優れた寝かしつけ絵本としてごご紹介した『おつきさまこんばんは(林明子 作 福音館書店)』には、ロバート・キャンベルさんによって翻訳された英語版があります。
おつきさまこんばんは 英語版 (出版社リンク)

単に英語に翻訳されただけでなく、絵本作品全体としての魅力もブラッシュアップされていますので、それらの点も含めてご紹介します。
大きくなった
1986年初版のオリジナル版の大きさは、縦18センチ横18センチの正方形です。それに対して2020年に発行された英語版は縦21.6センチ横20.6センチと、一回り大きくなっています。
サイズアップしたことで、林明子さんの美しいお月様の絵を、さらに大きく眺めることができます。これは林さんのファンにとっても、とてもうれしいことです。
そして、わずかに縦長の絵本になり、下の余白が大きくなったことで、ページがめくりやすくなりました。こんな細かなところにも、読み手に対しての気配りを感じます。
YouTubeでも2冊の絵本の魅力と違いを詳しく紹介しています。
紙質の変更
オリジナル版の表紙以外はツヤ消しのマットな絵でしたが、英語版はツヤありの絵になりました。
個人的には、オリジナルのツヤ消しの絵をとても気に入っていました。しかし、英語版のツヤありの絵にもまた違った魅力を見出しました。
月を描いた絵本はいくつもありますが、この絵本の月は他に類を見ないものです。
すっきりとした独特のお月様の表情と、マットな暗闇の中から鈍く光を放つ力強い輝きが相まって、強烈に読者の心を掴みます。
それが英語版ではツヤありの紙になったことで、お月様の輝きがオリジナル版とはまた違った魅力を醸し出しているのです。
それはどちらかというと、お月様自体を輝かせるよりも、輝きが増したことによってその周りに登場する猫、雲、親子たちをより生き生きと描写しているように思います。
オリジナル版ではぼんやりと描かれていた脇役たちに、より明るい光が当たることで、その存在感が増したのです。
視力が発達していない赤ちゃんは、はっきりした色の絵本により反応すると、近年言われるようになりましたので、お月様の輝きを増して見やすくしたことは、それに対応した変更なのかもしれません。
そして、主人公のお月様の光量が増したことで、他の登場者が生き生きとしたことは、作品の魅力をさらに引き出したようにわたしは思います。
日陰者の存在に光を当てる、そんな新しい時代のお月様のイメージを感じました。
読みやすい英語
この絵本は『英語でたのしむ 福音館の絵本』シリーズの一冊で、小学校の外国語活動での活用を目的としているそうです。
英語の絵本を読んだときにたまに感じる(ある種の文学的な)持って回ったような表現もなく、わたしのように英語が苦手な大人でも十分に楽しめます。
文字の大きさや、フォントの形状も絵本にぴったりマッチしており、デザイナーのセンスの良さを感じさせます。
お月様は男だった!?
そして最後に、英語版を読んでわかったことは、お月様は男だったんですね。
Good Evening Mr.Moon.
おやすみなさい、ミスタームーン。
おやすみなさい、皆さん。
良い眠りにつけますように!