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【オートバイのあれこれ】棺桶デザイン!? カワサキ流カフェレーサー・Z1-R

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「棺桶デザイン!? カワサキ流カフェレーサー・Z1-R」をテーマにお話ししようと思います。

数ある絶版バイクの中でもとくに人気の高い、カワサキの空冷Zシリーズ。

「Z1」こと『900SUPER4』に始まり、ラストジェネレーションの『GPz1100』に至るまで、様々なZが現れてきたわけですが、今回は『Z1-R』にフォーカスしてみます。

◆「角Z」のはじまり

Z1-R最大の見どころは、なんといってもそのルックスでしょう。

上の画像のとおり、ポリゴンチックな角形デザインとなっていますね。

カワサキは1972年にZ1をリリースして以降、丸みを帯びたデザインを維持してモデルチェンジを施してきましたが、Zシリーズの誕生8年目にして大胆な「イメチェン」を敢行。

▲Z1では「ティアドロップ」タンクなど、流麗な形状の外装が使われていた
▲Z1では「ティアドロップ」タンクなど、流麗な形状の外装が使われていた

Z1-Rにおいては、それまでの曲線デザインをスパッと止め、直線基調のフォルムを新たに採用することにしました。

また当時、カフェレーサーカスタムがイギリスを中心に流行しており、そのトレンドを汲み取ってカフェレーサー風のビキニカウルも装備することに。

直線が織り成す角形フォルムにビキニカウルという全く新しい佇まいで、Z1-Rは世に出ることとなったのでした。

開発の途中には「棺桶みたい」と言われるなど、実はカワサキ社内ではあまり良い評価を得られていなかったZ1-Rでしたが、いざ発売するとその斬新な外観がアメリカ市場を中心に大ウケ。

Z1の流線型デザインも厚い支持を集めましたが、Z1-Rのこの「角」スタイルもまた、多くのZファンを生むこととなったのです。

◆カッコよさと引き換えに…

その独創的な佇まいから注目を集めたZ1-R。

しかしこのZ1-Rには、デザインを優先しすぎたがゆえのウィークポイントというのもありました。

分かりやすいのが、燃料タンクの容量。

Z1-Rのタンク容量は、なんと13ℓしかありません(ちなみに初期型Z1は18ℓ)。

これは、カワサキが実用性よりもスリムなシルエットを優先しタンクを設計したからです。


’72年に登場した『250SS マッハⅠ』でさえ14ℓのタンク容量がありましたから、Z1-Rはリッターマシンでありながら250ccのバイクよりも小ぶりなタンクを装備していたことになります。

▲マッハシリーズの末弟・250SSマッハⅠ
▲マッハシリーズの末弟・250SSマッハⅠ

また、Z1-Rは操縦安定性のほうにも問題を抱えていました。

直進性やハンドルの挙動に不安定な部分があったのです。

原因は、18インチの前輪。

Z1-Rは’76年登場の『Z1000』をベースに作られているのですが、このZ1000は前輪が19インチであり、そのシャシーは当然19インチに最適化されていました。

▲Z1-RのベースとなったZ1000
▲Z1-RのベースとなったZ1000

しかしカワサキはZ1-Rの開発時、シャシーの改編をほとんどしないまま(=19インチ用の設定のまま)、見た目の良さばかりに気を取られて前輪の小径化を行ってしまいます。

すると案の定、車体のディメンションはチグハグになり、結果的にZ1-Rは走行時に前輪の急な切れ込み等を示すようになってしまったのでした。

ただ、そうしたネガも今となってはZ1-Rならではの「味」として一つの価値になっているようです。

◆スタイルに振り切ったカワサキの潔さ

実用性や操縦性にやや難があり、さらに価格も元々のZ1000より30%ほど高かったZ1-Rですが、先ほどもお伝えしたように、Z1-Rはヒット作となりました。

やはりその唯一無二のスタイリングが、バイクファンたちのハートを射抜いたのだと思われます。

ネガティブ要素をチャラにしてしまうほどのカッコよさが、Z1-Rにはあったということなのでしょう。

画像引用元:カワサキモータースジャパン

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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