Yahoo!ニュース

【富田林市】LGBTQ+の取組みで富田林市が最高ランクGOLD認定!そもそもLGBTQ+はどんな意味

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

現在すばるホールでは、恒例のクリスマスツリーが並んでいます。いろんな団体がそれぞれに彩ったクリスマスツリーの飾りつけを行っていて、これを見るといよいよ師走がきたものだといつも感じます。しかし、今回はクリスマスツリーの見学が目的ですばるホールに来たわけではありません。

現在富田林市役所が改修工事を行っている関係で、一部の部署がすばるホールの4階に事務所を構えています。今回はその中の市民人権部人権・市民協働課の担当者に直撃取材をするためにすばるホールに来たのです。

なぜならば、富田林市では先日職場におけるLGBTQ+に関する取り組みを評価する「PRIDE指標2024」(一般社団法人 work with Pride)において、最高ランクであるGOLD認定を受賞したとの発表があったからです。受賞に関した取り組みの一例には次のようなものがあります。

  • LGBTQに関する職員研修の実施
  • 「性の多様性に関するガイドライン〜職員のためのハンドブック〜」の作成
  • 市民や職員にかかわらず、だれでも参加できるLGBTQコミュニティスペース『にじいろブーケ』の開催
  • 市民向けの電話相談『にじいろホットライン』や職員向けの電話相談窓口の設置
  • ALLYを増やす、また顕在化するための『ALLYカンパニー制度』
  • 他の団体などとの共同コミュニティでの活動
  • 職員の希望する性で健康診断を受診することや、通称名の使用など、本人が希望する性を選択することができる
  • 同性パートナーがいる職員も、婚姻している職員と同様の人事制度や福利厚生を利用することができる(休暇の取得や福利厚生イベントへの参加など)

これは、一般社団法人 work with Prideによって2016年から開始された制度で、以下の5つの分類された指標で3段階(ゴールド、シルバー、ブロンズ)で評価されるものです。

  • 「Policy(行動宣言)」
  • 「Representation (当事者コミュニティ)」
  • 「Inspiration (啓発活動)」
  • 「Development (人事制度・プログラム)」
  • 「Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)」

最近LGBTQ+の問題はいろいろなところでクローズアップされ、この問題は非常に奥が深くて簡単に理解するのは難しいと思っていました。とはいえ、GOLD認定を受賞したという富田林市の取り組みがとても気になりました。

富田林市の公式ページ(外部リンク)にLGBTQ+についての詳しい説明があります。表の英単語の頭文字を採った造語で、日本でも10人に1人が当事者(左利き、血液型AB型の人と同じ比率)と言われているとのこと。

世界中のLGBTQ+の人が使用しているレインボーフラッグ
世界中のLGBTQ+の人が使用しているレインボーフラッグ

また最近は、従来のLGBTQに「+(プラス)」が付くようになりました。意味を調べると上記のセクシュアリティ以外のセクシュアリティをさしているとのこと。

  • アセクシュアル(他者に対して恋愛感情や性的関心を抱かない人)
  • パンセクシュアル(あらゆる性別の人に対して恋愛感情や性的関心を抱く人)
  • エイジェンダー/Xジェンダー(自らの性を男女いずれかに限定しない人)

などが該当するそうです。

そこで、現在はすばるホールの4階にある市民協働課の方たちに直撃取材を行ったのです。

すばるホール4階にある打ち合わせスペース
すばるホール4階にある打ち合わせスペース

まず、work with Pride(ワークプライド)とは、LGBTQ+の人が働きやすい職場環境であるかの指標で、民間企業などでも付与されるものです。富田林市では2016(平成28)年からLGBTQ+に関する職員研修を始めました。

LGBTQ+の当事者に話を聞くなど、職員の間での偏見をなくそうと長いスパンで努力を重ねました。詳しくは後述しますが、広報誌の掲載や絵本の読み聞かせ、コミュニケーションスペース、パートナー・ファミリーシップ宣誓制度などの活動を続けているうちに、富田林市の職場がwork with Pride認定のラインに到達していたことがわかったのです。

そこで、LGBTQ+の当事者で、富田林市を含め各地で精力的に活動している藤原直さんに相談したところ「ぜひ申請しましょう」となり、申請した結果、今回のGOLD認定を受賞したとのこと。つまり狙って取りに行ったのではなく、すでにその水準に達していたということなのです。

受賞した感想について、担当の皆さんも「今までの成果が認められた」と嬉しそうです。タイミング的にはクリスマスプレゼントのように感じました。それ以上に富田林のLGBTQ+や人権に関しての取り組みの先進性を感じました。

ここで私は以前から抱いていた素朴な疑問を最初に投げかけました。なぜ富田林市はLGBTQ+にしてもですが、いろんな意味で人権系への取り組みがいち早く行われているのかです。

そんな疑問を持った背景には、富田林駅近くにTONPAL(多文化共生・人権プラザ)が、今年の4月1日に誕生したのもあるのかもしれません。

それについて、担当の皆さんは富田林市は早い段階から人権問題に取り組むベースがあったと語りました。

TONPAL2階には外国人相談窓口がある
TONPAL2階には外国人相談窓口がある

やがて今は、外国人移住者や障がい者など、様々な人権の問題が出てきていますが、人権問題に対するノウハウがある分、富田林市ではいち早く対処できるようになったとのこと。LGBTQ+のことも、数多くある人権問題のひとつとして自然に取り組むテーマだったのです。

富田林市公式ページより
富田林市公式ページより

そんな中、LGBQ+について、まだ世間でも注目を浴びていない段階で、2006(平成18)年12月号の広報とんだばやしに「多様な性の問題」として記事を掲載したのです。現在も公式ページに当時の記事内容が紹介(外部リンク)されています。「当時は、内部からも異論がありました。『これは正直なところタブーな内容だ。広報に載せるのはいかがなものか?』と、言われましたね」と担当者の方は当時を懐かしんでいました。

12年ぶりにLGBTQ+の記事を掲載した広報とんだばやし平成30年12月号
12年ぶりにLGBTQ+の記事を掲載した広報とんだばやし平成30年12月号

そんなハードルが高い問題について、「昔からあった問題だから出しましょう」と、広報担当の方とのやり取りを通じで掲載にこぎつけました。オブラートに包むような表現上での大幅な修正はあったものの、当時としては非常に画期的なことだったのです。

広報とんだばやし平成30年12月号
広報とんだばやし平成30年12月号

それから次にLGBTQ+の問題に触れたのは8年後でした。2014(平成26)年にとんだばやし人権フェアで、東小雪さんを講師に迎えての講演会を行いました。そして2018(平成30)年に再び広報誌(広報誌への掲載は12年ぶり)に載せたそうです。

LGBTQ+について、広報誌の掲載や講演などで理解してもらうための活動は行っていましたが、具体的な問題としての取り組みは令和の時代からとのこと。きっかけは、当事者である市民からの相談でした。当事者の方の話ではどうしても「偏見」があるため、社会で生き辛いということだったのです。

数回の相談を受け、市としてもどうにかしなければならないと思っていました。そして2019(令和元)年11月に多様性に関する絵本の読み聞かせを不定期で開催します。

さらに東京ではLGBTQ+のに関するパートナーシップというのをすでに行っている事例があることから、富田林でもやってみることになりました。こうして2020(令和2)年7月に多様な家族のあり方を尊重するパートナーシップ宣誓証明制度を導入します。

ちなみにパートナーシップ宣誓証明制度は、一歩進んで、現在はパートナーーシップ・ファミリーシップ宣誓制度となっています。これは、従来ふたりだけの制度だったものを、それに両親や兄弟と言ったファミリーの範囲含めた証明書を発行するようになりました。残念ながらまだ法的な根拠はありませんが、利用できる行政サービス(外部リンク)はあります。取材時点では富田林市内では9組のパートナーシップ、うち1組はファミリーシップの証明を受けています。

11月23日に行われたにじいろブーケのチラシ
11月23日に行われたにじいろブーケのチラシ

市として、当初はLGBTQ+関連では予算もあまりなかった時代から試行錯誤でいろいろなことに取り組みました。そのうちのひとつが、2020(令和2)年8月からのコミュニティスペース。藤原直さんをアドバイザ-に迎えて、初回は市外からの応援の意味もあって、30人が参加したとのこと。

Youtubeで藤原直さんがLGBTQ+について解説しています

この活動は「にじいろブーケ」(外部リンク)として継続し、Youtubeチャンネルで解説したり、「Instagram」アカウントの開設をするなどの活動を行ったりしながら、一定数のリピーターもいるとのこと。現在は2ヵ月に1回の割合で行われているそうです。

LGBTQ+の問題は、心だけでなく、服装や化粧を好んでいる人の問題も無視できないことから、実際にバッシングも多いそうです。性転換の手術した人やしたいけど迷っている人、そもそもしたくない人で分けるといった杓子定規に考えるのではなく、多様性のひとつとして考えなければならないとのこと。

「ひとつの性の表現」と考えないといけないとしつつ、当事者以外の方に地道な活動で理解していただく必要が大切だろうといいます。「性はデジタル的なオン/オフで考えるのではなく、アナログ的なグラデーションと考えた方がよいのでは?」と担当の皆さんは語りました。

TONPALにあるみんなのトイレ
TONPALにあるみんなのトイレ

そのようなこともあり、新しくできたTONPALの2階と3階にLGBTQ+の人が気軽に使える「みんなのトイレ」を設置したとのこと。

みんなのトイレの内部
みんなのトイレの内部

最近は男女とは別にバリアフリートイレもありますが、バリアフリートイレはあくまで「障がいを持つ方向け」との認識から、LGBTQ+当事者の人が使用を遠慮してしまうとの配慮から設置しました。

このほかにも富田林市ではLGBTQ・ALLYカンパニー認定制度(外部リンク)があります。引用すると次の通りです。

すべての市民が自分らしく、安心して暮らすことができるまちの実現をめざし、LGBTQ当事者が抱える課題の解決や理解の促進をALLY(アライ・LGBTQ支援者)として行う企業・団体等を市が ALLYカンパニーとして認定する制度です。

最後に担当者の方から今後の予定についてお話を伺いました。直近では12月14日土曜日にすばるホール展示室で人権フェアが行われます。当日は展示に加え、様々なステージの催しや映画上映もあるとのこと。

人権フェア当日に行われる映画「こどもかいぎ」
人権フェア当日に行われる映画「こどもかいぎ」

にじいろブーケの予定を紹介しましょう。1月25日土曜日14:00~16:00までTONPALで、映画「心の性を生きる」上映&交流会が行われます。当日はみのりさん(MixRainbow)をゲストに交えて行われます。

3月ににじいろブーケが行われるカフェ・ユーさん
3月ににじいろブーケが行われるカフェ・ユーさん

さらに3月23日日曜日14:00~16:00ではカフェ・ユーさんで行われるとのこと。内容はタカミネギター愛好会さんをゲストに「カフェで音楽に触れながら交流しよう」というものです。

1月18日にすばるホール小ホールで行われる山田亮さんの講演
1月18日にすばるホール小ホールで行われる山田亮さんの講演

取材を通じて感じたことですが、今回取り上げたLGBTQ+は、簡単に意見を言うことも躊躇(ためら)うような非常に難しい問題です。しかしながら、避けずに意識すべきことではないかと感じました。私もまだまだ学ばなければならない問題ではありますが、富田林市のLGBTQ+への取り組みは今後も注視したいと思います。

すばるホール4F(富田林市市民人権部人権・市民協働課)

住所:大阪府富田林市桜ケ丘町2-8
TEL:0721-25-1000
アクセス:近鉄川西駅から徒歩11分
---------------------------------

奥河内から情報発信のおすすめ記事がLINEに届きます!

奥河内地域に住んでいる人たちに役立つ情報を毎週水曜日の10:00にお届けします。

ぜひご登録ください!

<友だち追加の方法>

■下記URLをクリックして友だち登録してください

LINEアカウントメディア(外部リンク)

※本リンクはYahoo!ニュース エキスパートとの取り組みで特別に設置しています

---------------------------------

※記事へのご感想等ございましたら、プロフィール欄にSNSへのリンクがありますのでそちらからお願いします。

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事