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新型コロナ ~年末年始に実践したい 基本的な感染対策~

坂本史衣聖路加国際病院 QIセンター感染管理室マネジャー
(提供:イメージマート)

まもなく2022年を迎えます。日本では、全国的に新型コロナウイルスの感染者数が少ない日が続いていますが、一部の地域では、学校や工場、医療機関などでデルタ変異ウイルスによるクラスターが発生しており、これからオミクロン変異ウイルスの流行が拡大する懸念もあります。

このように先行きが不透明ななか、年末年始に実践することが勧められる基本的な感染対策を3つ挙げました。推奨の理由や押さえておいた方がよいポイントについて【豆知識】で解説していますので、あわせて参考にしてください。

1. ワクチン未接種の方は早めに2回接種する。

 【豆知識】

新型コロナウイルスは免疫のない未接種者を選り好みするかのように拡大します。2021年夏の第5波のピークには、未接種者の感染リスクは2回接種完了者の約17倍となり、海外でも同様の傾向が見られました。このとき主流だったデルタの感染力は従来株の約2倍ですが、オミクロンの感染力がデルタ以上に高いことを示すデータが揃いつつあります。例えば、デルタが主流だったイギリスの首都ロンドンでは、11月27日にオミクロンが初めて確認されてから約3週間で、検出される新型コロナウイルスの約9割を占めるようになりました。また、オミクロンの新規感染者数は、2日~3日で2倍になる速度で増加しています。デルタが主流になるまで数か月を要したのに比べて、オミクロンが極めて速いペースで市中に拡大する現象は、アメリカ、カナダ、デンマークやノルウェーなどの複数の国々でも見られています。日本国内でも、オミクロンが短期間のうちに感染者の急増をもたらすおそれがあります。

オミクロンの病原性(重症化させる力)については、デルタに比べて低いのではないかという推測がありますが、世界保健機関(WHO)は結論を出すのは時期尚早だとしています。南アフリカからはオミクロンに感染後、酸素投与や集中治療を要する人の多くはワクチンを未接種であるとの報告があります。オミクロンは再感染のリスクも高くデルタの約5倍)、アメリカでオミクロンに感染後、死亡したケースは基礎疾患があり、ワクチン未接種で、過去に感染したことがある50歳代の男性でした。仮に重症化する人の「割合」が小さかったとしても、感染者が短期間で急増すれば、重症化する人の「数」は増えますし、そうなると、医療体制が再び逼迫する恐れが生じます。こうしたことを踏まえて、今後は未接種者の感染や重症化のリスクがさらに高まることを想定した準備が必要です。

ワクチン2回接種で得られるオミクロンに対する感染・発症予防効果は、デルタに対する効果よりもさらに低下しているものの、重症化を防ぐ効果が急激に落ちるということはなさそうです。例えば、ファイザー製を2回接種後の感染・発症予防効果と重症化予防効果は、デルタではそれぞれ約80%と90%以上でしたが、オミクロンでは約30%と70%に低下したという南アフリカからの報告があります。オミクロンに対する各種ワクチンの中和活性(細胞への感染を阻害する効果)を評価した実験では、モデルナ製も効果は低下しましたが、ファイザー製と比べると平均的に高かったとの結果が得られています。これらのことから、2回接種だけではオミクロンによる感染や発症を防ぐのは難しいものの、重症化のリスクは未接種の場合に比べると、低く抑えられるのではないかと考えられています。

2. 2回接種が完了している方は、追加接種(3回目)を受ける。

 【豆知識】

ワクチンを2回接種したあと半年以上経過すると、デルタに対する感染予防効果は50%を下回っていきます。幸い重症化予防効果は半年後も90%以上に維持されますが、特に高齢者ではそれを過ぎると低下するとの報告があります。一方、3回目の追加接種によって、感染および重症化予防効果は再上昇することが知られています

オミクロンに対する追加接種の効果は現在評価が進んでいるところですが、これまでにファイザー製の追加接種後に中和抗体価が25倍に上昇するという報告があるほか、ファイザー製を2回接種した人が3回目を接種した場合、感染・発症予防効果が76%に上昇するという報告もあります。また、モデルナ社からは、1回目と2回目で使用した量の半量(50µg)を追加接種後に、オミクロンに対する中和抗体価が37倍に増加したとのプレスリリースが出ています。追加接種による感染・発症予防効果がいつまで続くのかは現時点で分かっていませんが、免疫学的なモデルを使ったシミュレーションでは、ファイザーワクチン追加接種後60日目まではオミクロンによる重症化予防効果が80~85%程度で続くと試算されています。重症化を防ぐための新薬も開発されていますが、感染を防ぐものではなく、使うことができない方もいるので、ワクチンに代わるものではありません。従って、感染性が極めて強いと考えられているオミクロンの拡大を防ぐ対策として、追加接種の重要性高まっています

追加接種では、ファイザー→ファイザー→モデルナのように、最初の2回とは違う種類のワクチンを接種することができます。追加接種に関する詳しい情報については、こちらを参照してください。

3. 基本的な感染対策を継続する。

ワクチンの効果が100%ではなく、デルタやオミクロンといった感染力が強い変異ウイルスが流行していることから、以下のような基本的な感染対策の継続は必要です。

同居者以外と話をするときや、人が集まる場所に行くときには、顔にフィットする不織布マスクを着ける

【豆知識】

マスク素材のフィルター性能が、日本のJIS規格や国際的なASTM規格に基づいて保証された不織布マスクが販売されています。特にBFE(注1)やPFE(注2)とよばれる指標が95%以上または98%以上の製品には、飛沫やエアロゾル粒子の拡散や吸い込みを防ぐ効果が高い素材が使われています。ただし、これらはあくまでも素材の品質に関する指標ですから、期待される効果を得るには、顔とマスクの間になるべく隙間ができないように着けることが大事です。呼吸をしているだけでも、エアロゾル粒子は出て行きますので、黙っていたとしても、周りに人がいるところではマスクで鼻から顎まで覆った方が互いに安全です。

注1)BFE:バクテリア飛沫捕集効率(%)着用者から放出される飛沫を遮断する性能

注2) PFE:微小粒子捕集効率(%)空気中を浮遊する微小粒子を捕集する性能

混雑した場所に行かない・お互いの距離をあける

【豆知識】

ウイルスを含む飛沫を浴びたり、エアロゾル粒子を吸い込んだりするリスクは感染者に近いところほど高くなります。またオミクロンは従来株やデルタに比べて、気管支でより早く増殖しやすく、これが感染性を強めている一つの要因ではないかとの指摘がありますマスクを着けている場合でも、着け方や声の大きさによってエアロゾル粒子が隙間から漏れることがあるので、互いに1メートル程度は距離をあけることが勧められます

換気が悪い場所に行かない・換気を図る

【豆知識】

大規模商業施設などは、ビル管理法上の「特定建築物」として定められた基準に則って換気を行うことが求められています。また特定建築物に該当しない施設でも、同等の換気を行うよう努力すべきとされています。商業施設等では通常、機械換気を行いますので、窓やドアから外気を取り入れる自然換気とは違って、自分がいる空間で基準に則った換気が行われているのか分かりにくいことが多いと思います。そのため、料理やたばこの匂いがこもっている場所や、多くの人が近くで話し込んでいるような空間は避けるのが無難かと思います。また、職場など人が集まる場所で換気を図る方法についてはこちらの資料を参考にしてみてください。

ただ、換気は屋内空間に滞留する微粒子を減らす対策であって、感染者の近くで飛沫を浴びたり、微粒子を吸入するリスクを減らしたりする効果はそれほど期待できません。従って、マスクの着用や距離をあけるといった上記の基本的な対策とあわせて、バランスよく行うことが重要です。

体調が悪いときは休む・よくならなければ早めに受診する

【豆知識】

新型コロナウイルス感染症の症状として発熱や咳が良く知られていますが、発症後間もない時期やワクチン接種歴のある方では、高熱がみられないことや、鼻水やのどの違和感といった軽い症状しか出ないことがあります。症状が軽い場合でも感染力を発揮するため、いつもの体調と違うときは人と会わないようにすることや、改善しない場合は、あらかじめ電話をしたうえで、早めに医療機関を受診することが勧められます。体調不良のときに市販の検査キットで検査をすることは、厚生労働省が承認した製品を使うのであれば良いと思いますが、症状が改善しない場合は、結果が陰性であっても早めの受診が強く勧められます。

最後までお読みいただきありがとうございました。オミクロンの流行状況やその特徴に関する情報は日々更新されていますので、感染対策に影響を及ぼすようなことが明らかになった場合は記事の内容を更新します。

※この記事は2021年12月21日現在の情報に基づいて執筆しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

聖路加国際病院 QIセンター感染管理室マネジャー

専門分野は医療関連感染対策。1991年 聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業、1997年 コロンビア大公衆衛生大学院修了。2003年 感染管理および疫学認定機構Certification Board of Infection Control and Epidemiologyによる認定資格(CIC)を取得し、以後5年毎に更新。日本環境感染学会理事、厚生労働省厚生科学審議会専門委員などを歴任。著書に「感染対策40の鉄則(医学書院)」、「基礎から学ぶ医療関連感染対策(南江堂)」など。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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