カワサキが導入を決めた安全運転支援システム そのメリットとは!?
国産メーカーで最初に採用
EICMA2019開催中にビッグニュースが飛び込んできました。カワサキがボッシュの二輪車向け先進安全運転支援システムを採用、2021年から量産開始が決定したというではないですか。すでに同システムをドゥカティやKTMが採用することは発表されていましたが、国産メーカーで最初に取り組んだのがカワサキだったとは、少し驚きました。
カワサキも最新モデルに電子制御システムを積極的に導入していますが、KCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクション)など、これまで独自のテクノロジーを全面に押し出していたからです。ただ、その中枢部であるIMU(慣性計測装置)などはボッシュ製ということです。つまり、ボッシュのシステムを基に各メーカーや機種に応じてカスタマイズされるということでしょう。
電子の目がライダーの安全を見守る
さて、先進安全運転支援システム(アドバンスト ライダー アシスタンス システム)とはどういうものなのか。実は幸運なことに、自分はボッシュのテストコースでこのシステムを搭載した試験車両に乗る機会を得ることができました。試験車両はカワサキ車ではありませんでしたが、システムとしては基本的に同じ仕組みになるはずです。
システムの大きな目的としてはバイクの安全性と快適性の向上にあります。これは元々4輪で既に先行している同様の技術を応用したもので、その要にあるのがミリ波レーダーというものです。基本的には飛行機などで使われるレーダーと同じですね。バイクに搭載されたレーダーから照射されたミリ波の反射をセンサーで検知し、距離や相対速度、加速度などのデータをコンピュータが瞬時に演算、エンジン出力やブレーキを制御するものです。
いわば「電子の目」で我々ライダーを見守ってくれるわけです。システムの作動状態はHMI(ヒューマン マシン インタフェース)、つまりメーターディスプレイなどを通じてライダーに伝えられる仕組みになっています。
高速クルーズで特に有効な3つの機能
2輪向け先進安全運転支援システムの内容ですが、具体的には「ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)」、「衝突予知警報」、「死角検知」の3つの機能から成っていて、それらは複合的に機能しています。
それぞれを簡単に説明すると、ACCはライダーが任意に設定した速度で前走車を自動的に追尾する仕組みで、車間距離なども速度に応じて最適化されるため主に高速道路を巡行しているときなどに威力を発揮します。
たとえば、疲労による集中力の低下やバイクでも居眠り運転などの危険もありますし、雨などによる視界不良時にも大きな助けになるはず。ちなみにミリ波レーダーは悪天候でも機能するそうです。
また「衝突予知警報」は前走車との距離が異常に詰まったときにブザーやメーター表示などでライダーに危険を知らせる仕組みで、主に追突リスクの低減に役立ちます。「死角検知」はいわゆるブラインドスポットに他の車両が入ってきた際にミラーなどに警告表示することで、安全な車線変更を支援するもの。死角にいる車両だけでなく、後方から急接近する車両も検知するそうです。
クルマに詳しい人ならご存じと思いますが、これらのシステムは最近の4輪にはかなり普及していますよね。ボッシュの話では、2輪向けシステムは30km/h~160km/hぐらいの速度域を想定しているそうで、開発はテストコース以外にも日本を含む世界中の道路やドイツ本国のアウトバーンでも行っているとか。ただし、これらのシステムは自動運転や衝突低減ブレーキではなく、あくまでもライダーの安全と快適を支援するものなので過信・慢心は禁物です。
2輪事故の7件に1件を防げる
ボッシュの調査によると、2輪の死亡事故リスクは4輪の20倍も高いとのこと。一方で、レーダーベースの安全運転支援システムを採用することで2輪事故の7件に1件を防ぐことができるそうです。これはバイクに乗るすべてのライダーや車両メーカー、そして交通環境そのものにとっても非常に大きなメリットと言えるでしょう。バイクライフを安全に長く楽しむためにも事故防止は欠かせないものです。まずはカワサキ車への導入が楽しみですが、今後は他メーカーでもどんどん取り入れられていくといいですね。
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※原文より筆者自身が加筆修正しています。