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頻度からみる地域性、関西で2005年から今日まで 、ほぼNO1の頻度を誇る食べ物とは・・・

池田恵里フードジャーナリスト
パン粉は粗目ではなく、細かいものが・・・(写真:アフロ)

今なお進化し続ける惣菜

中食産業(惣菜)は9兆円産業となり、今やスーパー、コンビニには欠かせない商品となっている。

平成27年度、スーパーマーケット年次統計調査報告書によると、惣菜の商品数、所謂、SKUを前年度と比較すると44%多くなっていることからも、まだまだ伸びるカテゴリーと言われている。

 一般社団法人日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会「平成27年 スーパーマーケット年次統計調査報告書参照」
 一般社団法人日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会「平成27年 スーパーマーケット年次統計調査報告書参照」

社会変化もさることながら、惣菜商品を見ると、経時劣化への対応、日常食であることを踏まえた味作り、そして地方に根差した商品を各社、打ち出しており、スーパー・コンビニの商品は日々、進化を遂げ、これが中食産業を大きく成長させた。

関東・関西の地域性

さて地域の味の違い、中でもよく知られているのが、出汁、みそ、そしてしょうゆ。関東は、鰹節、赤みそ、濃口しょうゆ、関西は、昆布、白みそ、薄口しょうゆと大きく分かれる。出汁とこれらの調味料を使った商品では、卵焼き、うどん・蕎麦・天ぷらのつゆなどがあり、地域の味に則して、変更がかけられている。この他に寿司酢。関西ではお寿司を「ライスケーキ」と言われるほど、甘味仕上げが多い。意外にあまり知られていないのが中華惣菜。商品によって、関西・関東と違いがある。そしてソースは、関西ではカレー、天ぷらとあらゆるものにウスターソースをかける。天ぷらにソースをかける関西人は60%、なかでも和歌山が88%と言われている(「天ぷらのソースをかけますか?」野瀬奏申参照)。

ということで、まだまだ関西・関東の違いを述べたいが、今回は、頻度で見る関西の地域性を取り上げたい。

食べる頻度でみる関西の特徴

以前、一般社団法人日本惣菜協会「惣菜白書」で「半年に食べる惣菜の頻度」を調べたことがあり、関西ではコロッケがどの年もNO1となっていたような・・・とはいえ、うろ覚えだったこともあり、再度、手元にある資料を調べてみることにした。しかし、近々の資料しかなく、図書館で調べても、わからない。

困り果て、今回、一般社団法人日本惣菜協会の方にお聞きしたところ、2005年から2016年の11年間、関西における半年で食べる頻度(3回以上)の資料をご提供頂いた。本当に有難うございました。

資料を見ると、この11年間、関西ではコロッケが2006年を除いて1位となっている。

関西における半年での購入頻度上位(3回以上の購入した人の割合)

日本惣菜協会「惣菜白書」 2005年~2016年参照
日本惣菜協会「惣菜白書」 2005年~2016年参照

5位までをみると、1位のコロッケ以外は全部、主食に該当する。

他の地域に目を転じると、関東での頻度NO1は、その多くは弁当となっている(2005年、2012年、NO1はおにぎり)。ということで、関西のように主食ではないコロッケがほぼNO1に君臨しているのは大きな特徴と言える。

では何故、これほどまでにコロッケが不動の1位なのか。江戸時代から食べられている牛肉の文化、そしてコロッケの味と密接にかかわっているのではないだろうか。

関西の牛肉文化 そしてコロッケ

関西は、ご存じのとおり、牛肉の文化はすっかり根付いている。その歴史をさかのぼると、江戸時代から例外的に近江の彦根のみが、牛肉を摂取することを公認されており、これが後の食文化につながったと言われている。

江戸時代から幕末の近江牛の生産と消費を中心として、諸国各地の牛肉食状況に至るまでの膨大な記述がみられる。近江の彦根においては、例外的に公認されたおり、味噌漬けや乾肉にして幕閣有力者に献上が行われていた。19世紀になると、牛肉は滋養・強壮として「薬食い」が半ば、公然となり、それに伴って近江商人が各地に渡り歩き、広めたという。

出典:「日本人の食文化と牛肉」京都橘大学文化政策部教授吉田忠氏引用

この他に関西では農耕に牛を使い、関東では馬だったことから、関西は牛肉の文化となったとも。

現在、牛肉の消費量を見ると、奈良県がNO1となっており、2位に京都、3位に大阪となっており、関西地方はいずれも10位以内にランクインされている。このことから今も関西は、牛の文化が根強い。

コロッケは肉文化、甘い味付けで関西人に定着

さてコロッケの肉について、関西で製造販売されているメーカーに問い合わせしてみたところ

「やっぱり関西は、牛肉文化もあって、コロッケの肉は原価も考えてですが、牛筋、もしくは牛肉で製造していますよね、合挽ではなくて・・・」とのこと。

と同時に、コロッケの消費量を見ると、平成26年度、1個を60gで計算して算出すると、全国平均が12.4個。消費量のNO1は京都20・6個 2位に奈良19.6個、3位富山県18・6個となっている。地域的な大きな特徴はないと言われているが、関西地方が上位にランクインする傾向が強い。

26年度、コロッケの消費量

25年度、コロッケの消費量

さて関西のスーパーを見ると、関西中心に展開しているスーパーでは、コロッケを牛肉売り場、そして惣菜売り場と価格を変え、2種類販売したり、関東にも進出している関西系スーパーでは関西と関東では味を変えているところもある。関西のいずれのコロッケも、他の地方より甘く仕上がっており、これが特徴と言われている。

健康的に食べるコロッケ、高齢者にも人気のコロッケ

甘い味付けは、関西らしさでもあり、その一方、病みつきにもなる。甘味は、油 中でも脂肪酸と合わさると、旨味を引き出し、食べる頻度は増すとされるからだ。とはいえ、油の摂取が多すぎることは健康的とはいえない。関西の串カツを見ると、きめの細かいパン粉が付けられている。きめ細やかなパン粉で薄衣にすること、これにより油の吸収率を少なくする。これをコロッケにも応用し、開発することも大切なのかもしれない。

揚げ物の中でもコロッケは、戦前から大衆の商品として親しまれ、その歴史は古く、日常食としてすっかり定着している。柔らかい食感もあって、高齢者にも人気がある。そして関西の食文化と併せても、まだまだNO1であり続けるのではないだろうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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