Yahoo!ニュース

日本代表に追加招集で初選出。奥川雅也とはどんな選手なのか。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:アフロ)

森保一監督が率いる日本代表はオーストリアのグラーツでパナマ、メキシコと対戦しますが、ドイツのビーレフェルトでプレーする堂安律がクラブ事情で辞退に。同時の追加招集はリリースされませんでしたが、1日遅れでオーストリアのザルツブルク(JFAのリリースではザルツブルグ)に所属する奥川雅也が初選出されました。

*今回の招集メンバーは前回の記事「11月パナマ戦、メキシコ戦の日本代表メンバーから起用法を読み解く」を参照。

新型コロナウイルスの影響で欧州内でも出入国の規制が厳しくなっている中で、同じオーストリアからの合流がしやすい側面もあるかもしれませんが、能力的にはここまで招集されなかったことが不思議なぐらいのタレントです。

リバプールに移籍した南野拓実が在籍していたザルツブルクはオーストリアの最名門クラブで、かつてはガンバ大阪の宮本恒靖監督もプレーしていました。

京都サンガのアカデミー時代から”古都のネイマール”とも呼ばれていた奥川はトップ契約して間もなくザルツブルクに移籍。そこからリーフェリング、マッテルスブルク、ドイツ2部のホルシュタイン・キールと武者修行を積んでザルツブルクのトップチームに定着すると、南野拓実、ファン・ヒチャン(ライプツィヒ)、ハーランド(ドルトムント)らと創造的な攻撃を生み出し、そうした選手たちが評価を高めた昨シーズンのCLでも存在感を見せました。

そして欧州にその名を轟かせたのが11月3日(日本時間4日)に行われたバイエルン・ミュンヘンとの試合。終わってみれば2−6という大敗でしたが、途中出場の奥川はカウンターからのパスに鋭く反応すると、鮮やかなファーストタッチで右足のシュートを決めました。

奥川という選手が面白いのは左利きでありながら、本人もその自覚がないほどに両方の足を自在に使えること。一般的に左利きの選手というのは小さい頃からその特性を生かすべく、ボールタッチやキックが偏る傾向にありますが、奥川は事実上の両利きと言えるほどに左右の足を器用に扱うことができます。

ストライカーであれば左右両足のキック、サイドハーフなら逆足のキックも練習する選手は多いですが、ボールコントロールはどうしても利き足に偏る傾向があります。しかし、奥川はファーストタッチ、ドリブル、パス、シュートとあらゆるシチュエーションで左右の足をそん色なく扱えるというのが彼のスペシャリティです。

2列目と前線のどこでも自在にプレーできる理由の1つもそこにあります。右サイドならカットイン、左サイドなら縦に突破してのクロスといった形で左右のサイドハーフ、ウィングをこなす選手は少なく無いですが、どっちサイドからでも両方のプレーを繰り出すことができ、ゴール前にも顔を出せる。

ネックは2014年をAFC U-19選手権を最後に代表チームで活動していないことですが、異国の地でオフザピッチも含めて挑戦してきた選手であり、そう苦もなく溶け込むのではないかというのが筆者の予想というか期待です。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事