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「勝共連合」の名称で今も日本保守政界に食い込む“統一教会” 元公安調査庁幹部が警鐘(動画付き)

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
統一教会教祖の故・文鮮明(ムン・ソンミョン)と妻の韓鶴子(ハン・ハクチャ)の両氏(写真:ロイター/アフロ)

安倍晋三元首相銃撃暗殺事件をきっかけに、自民党議員をはじめとする政治家と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係が次々と明らかになり、世論の不信と批判が高まっている。

安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者の犯罪は決して許されるものではない。しかし、先祖の因縁話を使って壷や多宝塔などを法外な値段で売りつける「霊感商法」や合同結婚式など、数々の社会問題を引き起こしてきた宗教団体と政治の癒着は看過できない。10日の参議院選挙でも旧統一教会の全面支援を受けて当選した議員がいるなど、憲法20条で定められた「政教分離の原則」がますます軽視されてきてはいないだろうか。

政治と旧統一教会の関わりが問題視される中、朝鮮半島情勢に精通し、統一教会の情報分析を担当したことがある菅沼光弘・元公安調査庁調査第2部長(86)に話を聞いた。菅沼氏は、インテリジェンスオフィサーとしてあらゆる方面に人脈を構築し、今も旧統一教会とのパイプを持つ。

菅沼氏は19日、筆者の取材に応じ、憲法で保障された「信教の自由」の下でのカルト宗教に対する公安調査の難しさや、統一教会の永田町への資金還流、同教会の保守系政治団体「国際勝共(しょうきょう)連合」の活発な活動などについて詳細に語った。御年80代半ばにして、実に矍鑠(かくしゃく)としてジェスチャー交じりで、1時間半にわたってインタビューに応じた。菅沼氏へのインタビューの詳しい内容について、ぜひ以下のYouTube動画2本をご覧いただきたい。菅沼氏には今の若者にも分かりやすいように話していただいた。

山上容疑者のようないわゆる宗教2世問題について、菅沼氏は「全国で、昔の霊感商法のようなトラブルは今も続いている。そういうトラブルは問題にならないだけで無数に起こっている。(山上容疑者は)それを安倍元首相に結びつけた」と述べた。

自民党と旧統一教会の関係については、「これが問題だ」と重大視。特に旧統一教会が国際勝共連合との名称で政界をはじめ、日本にいろいろな形で食い込んできたと指摘した。そして、「おそらく自民党の右派の国会議員のほとんどは統一教会の息がかかっている」と述べた。国際勝共連合は、統一教会の教祖、文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が1968年4月に日本で創設した保守系政治団体だ。

「もとをただせば、勝共連合を誰がつくり、なぜ日本にあるのか。それを辿っていくと、山上容疑者が言っているように、(元首相の)岸信介さんにたどり着く」

菅沼氏は、この背景には、60年安保闘争の学生運動が盛り上がり、政治家や大物右翼など保守勢力が日本の「共産革命」を恐れ、共産主義や左翼に強く対峙する必要があったと説明した。

1959年に統一教会が日本に進出した際の本部は東京都渋谷区南平台町(なんぺいだいちょう)の岸氏の邸宅の隣にあったことが知られている。1964年に宗教法人として認証された。

菅沼氏は東西冷戦中に共産主義打倒を掲げていた「勝共連合」が、今では中国やロシアのような専制主義の国々との戦いを大義名分にして活動していると指摘した。これは、アメリカのバイデン大統領が中露を念頭に置く「民主主義と専制主義の戦い」に呼応する形だ。

●「統一教会が悪いのはカネの集め方」

菅沼氏は「統一教会の何が悪いのかと言えば、カネの集め方だ」と指摘。「そして、そのかき集めたカネを韓国に持っていってしまう。ここが問題だ。そして、その韓国はそのカネをアメリカに持っていっている。アメリカではワシントン・タイムズといった有名な新聞まで持っている。アメリカの上下両院の有力な国会議員はみんな統一教会の手先みたいなものになってきた」と述べた。

菅沼氏は、日本の旧統一教会が韓国本部から資金集めを求められていると指摘した。そして、その背景には、1910年からの36年間の日本の朝鮮半島植民地支配による贖罪意識があると説明した。

同教会の日本から韓国へのカネの流れをめぐって、旧統一教会こと「世界平和統一家庭連合」の韓国にある本部の郭錠煥(クァク・ジョンファン)元会長が19日、ソウルで記者会見し、日本の教団が献金を作り出す「経済部隊」となっていたと述べた。12日付の米紙ワシントンポストの記事によると、日本は旧統一教会の世界最大の資金源と化し、この教団の富の7割を生み出す「金脈」だという。これに対し、日本の教団は「(韓国)本部の一方的な指示やノルマがあるわけではない」などと反論している。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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