ドイツ人が一番羽目をはずす第五の季節 ケルンカーニバルの無礼講
生真面目で話しかけにくい、愛想もないみたいでとっつきにくそう。ドイツ人にそんなイメージを持っていませんか?
ところが、その堅苦しい印象を見事に覆すのがカーニバルで目にするこの上なく愉快なドイツ人です。(画像撮影はすべて筆者norikospitznagel)
第五の季節・カーニバル期間
第五の季節と呼ばれるカーニバル期間は11月11日11時11分に始まり、灰の水曜日(Aschermittwoch・今年は3月5日)に終了する。
神の意思が記されたモーゼの10戒、イエス・キリストの高弟12使徒は有名だが、その間にある11という数字はキリスト教に深く根付き、道化を意味するといわれている。
もともとカーニバルは寒い冬を追い払い、春の到来を祝う伝統的なお祭りとしてカトリックの影響が強いマインツ、ケルン、デュッセルドル、ボンを中心とした古い風習だ。
カトリック教会が復活祭(イースター)の前の46日間を断食期間(Fastenzeit)に入る前に、肉や美味しい料理をたらふく食べておこうという意味から、食べ納めの祭りとして発足したとか。
老若男女が仮装して思いっきり羽目をはずす、ドイツ人のもっとも陽気になる時期、これがカーニバル・carne vale(ラテン語で「肉よ!さようなら」の意味)である。
カーニバルのハイライトは灰の水曜日の6日前「汚れた木曜日」から「灰の水曜日」までの1週間。普段は生真面目なドイツ人も、目一杯羽目をはずし、無礼講が許され、お祭りは最高潮に達する。
カーニバルの詳しい歴史は改めて紹介するとして、まず百聞は一見にしかず、カーニバルで浮かれる人で溢れるケルンの街の様子をご紹介。
仮装してビールを飲めば、ドイツ人がもっと身近に感じられる!
ケルン中央駅を出るといきなりユネスコ世界遺産のケルン大聖堂が出迎えてくれる。完成までに630年ほどの歳月を要したこの壮大な大聖堂は、何度訪れても見ごたえがある。
高さ157メートルの大聖堂は入り口近くでは全体像が1枚におさまらないほど壮大だ。
この時期ケルンを訪れる人たちの目的は、ただただカーニバルを楽しむこと。大聖堂前は、待ち合わせの場所として最適の場所だが、話題はもっぱらどこのパーティへ行く?と楽しむことで頭が一杯の人達で溢れかえっているといっても言い過ぎではないだろう。大聖堂の前に立ち、カメラで捉える被写体は世界遺産よりも仮装した人たちというのもカーニバルならではの風景だ。
市内に足を踏み入れると、さらにびっくりするシーンが目に飛び込んできた。
高級宝飾店ブルガリの前になんと簡易トイレが4つも設置され、お店がトイレの後ろに隠れてしまっていた。ビールをがぶ飲みする人たちが、カーニバル中おそらく一番足繁く通う場所の確保のためで当然といえば当然なのだろう。
グロッケン通り(Glockengasse)に入ると、ケルン生れのオーデコロン専門店に到着。
オーデコロン(EAU DE COLOGNE)はフランス語で「ケルンの水」という意味で、18世紀にケルンで誕生した。その後、ナポレオン軍にケルンが占領されると、ナポレオンをはじめ兵士たちがこの香水を好んで、愛する妻や恋人のためにフランスへ持ち帰リ、それ以来オーデコロンは大人気となったそうだ。商標の4711は、ナポレオン占領下の住所表示番号をそのまま店名にしたというエピソードはあまりにも有名だ。
街の旧市街中心部にあるノイマルクトへ。ここではケルンカーニバルグループのお披露目が繰り広げられており、身動きできないほどの見物客が集まっていた。ビール一杯買うのにもなかなか前に進むことが出来ないほど大変な人だかりだ。なかにはビール売り場の前を陣取ったままビールを飲み続ける人もいるほど。
カーニバルグループの演奏に合わせて、見物客と肩を並べ、歌って踊ってビールを飲みながら「アラーフ」と掛け声で盛り上がると、なんだか見知らぬ人との距離もぐっと縮まるように感じ、思わず笑みがほころぶ。
ケルンのカーニバルは、19世紀前半にカーニバル組織委員会を設立。同市のカーニバルグループは400とも500とも言われるほど多数あるそうだ。カーニバル特有の軍服風の衣装や、護衛部隊、軍服を着て歌い踊るグループはナポレオン時代の護衛部隊に遡るという。
お昼は、ケルン地元のビール「ケルシュ・Koelsch」自家醸造ビール店Peters Brauhaus にて。
やや苦味があるケルシュは200ml入リの細長いグラスで供される。ビアホールのように500mlや1リットルのビアマグではなく、200ml入リのグラスを用いている理由は、新鮮な注ぎたて生ビールを一気に味わってもらいたいという思いが込められているとか。
ビールに酔い、のほほんとしていては駄目。グラスにビールがなくなると次から次へと新しいビアグラスが目の前へ運ばれるからだ。「もう飲めません!」という意思表示は空になったグラスの上にコースターを置くことを忘れずに。
カーニバル客にも人気絶大の「愛を誓う橋」
大聖堂と並んで人気の高い観光スポットは、愛を誓う橋として知られるホーエンツォレルン橋(Hohenzollenbruecke)だ。大聖堂正面右側にある、ルードヴィヒ美術館沿いに歩いていくと、ライン川にかかるこの橋に行き着く。橋のフェンスには数え切れないほどの愛の証である南京錠(Liebesschloesser)がつけられており、見るだけでも心が躍ってくる。
2008年頃からケルンで注目を浴び始めた愛を誓うセレモニーは、イタリア・フィレンツェの橋からはじまったという説もあるようだが、ドイツの専門家に言わせると、なぜケルンのホーエンツォレルンで橋で流行り出したのかは不明とのこと。
ここで、片道2時間以上をかけてやって来たというカップルに運よく遭遇。マルティナさんとオリバーさんは、独大企業に勤めるビジネスパーソン。二人の名前を彫ってもらった南京錠を一緒にフェンスにかけ満足そう。その後、二人は手を握り合い、ライン川に鍵をほうり投げた。これで、カップルの永遠の愛が叶うという訳だ。
夜は、1904年発足の伝統あるカーニバルグループ「ブルーゴールド・Blau-Gold」主催のパーティに参加した。ライン川沿いのイベント会場で地元の人と一緒に歌って踊って飲んでと夜のひと時を満喫。カーニバルパーティは市内のパブやレストランでも開催されているので、是非体験してみたいものだ。
カーニバルのハイライト1週間は飲食店を除き、大聖堂、デパートや美術館などの営業時間は短縮になったり閉鎖することもあるので事前に確認を。
参考記事・ケルン市観光局
取材協力・ドイツ観光局