焼鳥と水炊きをうたう恵比寿の新店。充実の完全個室はお忍びにも◎【櫛田/東京】
今回、冒険するのは東京・恵比寿の「櫛田(くしだ)」。ここ数年、恵比寿という町は若者向けの焼鳥屋が勢いを増している。といってもそれは大衆店というよりも、デートや会食向けが多い。昨年オープンしたばかりの「櫛田」は、同じく恵比寿に構える「喜鈴」の姉妹店。それだけでも安心感があるというもの。
1本目は抱き身(むね肉)から
ここ「櫛田」は珍しくも〝個室がメイン〟の焼鳥屋。4席が二つ、あとは6席と8席が一つずつ。ふだんの食事会はもちろん、お忍びや密談? にもってこいだ。どうやら焼鳥以外にも水炊きがウリのようだから、なるほど、個室で……というのは理にかなっているのかもしれない。
ただ、こちらはいつだって「焼鳥の口」。個室でまったり味わうのもいいけれど、焼き手を臨む4席だけのカウンターこそ、プレミアムシート! しかもこの日は「喜鈴」の焼き手、神戸さんが助っ人に入る日だった。
頼んだのは焼鳥以外に前菜や肴、〆に甘味まで付く「堪能コース」(税込6800円)。まずは前菜と鳥刺しを肴にビールをくいっといく。多種多彩なものだから、これだけで何杯もいけるというもの。
さぁ、待ちに待った1本目は……
「京紅地鶏」の抱き身(むね肉)だ。若めの地鶏ではあるけれどバランスがいい。このたっっぷりとボリュームをもたせた串打ち。噛めばむっちりとして、しっとり……。
焼鳥屋の「1本目の1貫目がうまい」というのは、幸せなこと。それに神戸さんの焼きはいつもながら丁寧で安心感がある。これは、最高のスタート。
2本目の丸ハツもプリッと弾けるような味わい。これまた、1貫目がちゃんとうまい。
焼き鳥の合間に一品。出されたのは、オーソドックスな茶碗蒸し。これが見た目以上に卵の味が濃いものだから驚いた!
舌に吸い付くようなこの高密度&好密度。んん。まるでプリンのようじゃないか。どちらかといえば出汁を効かせた茶碗蒸しを出す店が多いだけに、これはいい個性。
「焦がしたねぎを盛りました。これが合うんですよ」と神戸さん。お、自信の笑み。差し出されたのは、せせり。
ピッと効かせた塩と、ねぎの甘みのコントラスト。確かに大衆店でもせせりにねぎを盛るネタはあるけれど、これは随分と品がいい。一体感もある。よく考えるもんだ。
ソリはひと手間かけて、一夜干しに。ちょっとしたことではあるけれど、京紅地鶏のうまみがほどよく凝縮される。
緩急を付けるように現れたのはなすの一品。独自に配合した中華調味料を使うこだわりよう。いいね。和からの中華。こういう展開、嫌いじゃない。
終盤に現れたのは、名物レバー
さぁ、コースも終盤。もっちりとしてうまみの濃いうちももに、とろんとろんのレバーがお出まし。
とくにレバーの立体的な串打ちが目を引く。1貫目と2貫目とで表情も食感も微妙に違うのが面白い。タレの絡み具合もよく、まさに「喜鈴」仕込みの1本。
もしもレバー好きなら「追加串」必須だ。
そして、〆。
水炊きがウリだというから、鶏スープを使った雑炊を予想していたところ、まさかの担々麺。肉味噌をスープに溶かし、ゆっくりとすすってみる。こっくりとした味わいのなかに、ほのかな辛み……。
よくある担々麵は濃厚な〝ごま感〟が前面に出るけれど、これは後味すっきり。だから〆で食べても重さも感じない。焼鳥屋のスープをベースにしているので、味も言うことなし、だ。
〆も食べ終わって、さぁ帰り支度でもしようかと思ったら自家製プリンの登場。ややかためで、濃い味わい。ちょっとレトロで、どこかほっとする。
前菜、鳥刺し、焼鳥、一品料理、麺料理にデザートと、王道のフルコース。「京紅地鶏」も食べ疲れない鶏だから、これならきっと焼鳥ビギナーにもハマりやすいと思う。
大衆店と高級店の間を突くような、いい塩梅。そういう使い勝手のよさも「櫛田」のいいところ。
~冒険のおさらい~
①京紅地鶏の抱き身(むね肉)とレバーが秀逸
②焼鳥だけでなく水炊きが付くコースもある
③接待やお忍びに使える個室が充実している
店舗情報
【店名】焼鳥と水炊き 櫛田
【最寄り駅】恵比寿駅
【住所】東京都渋谷区恵比寿4-10-8
【予約】03-5422-7660
【定休日】日曜、祝日
【串のアラカルト】あり
【鶏メモ】京紅地鶏ほか