三笘薫がブライトンで活躍している理由。ビッグクラブに移籍する選手とクラブの揺るがない補強方針。
大きな一歩を、踏み出そうとしている。
ブライトンが好調を維持している。昨季、プレミアリーグを9位でフィニッシュ。勝ち点51を獲得して、クラブレコードの記録を樹立した。
だが今季のブライトンはそれを上回る勢いだ。プレミアリーグで19試合を消化して勝ち点31を積み上げた。欧州カップ戦出場権の獲得を射程距離に捉えている。
■躍動する三笘
ブライトンでは、三笘薫が躍動している。FAカップのラウンド16で、ブライトンはリヴァプールを撃破。その試合で決勝点をマークしたのが三笘だった。
ただ、三笘が活躍できているのには理由がある。ブライトンの確固たる組織が、選手たちのハイパフォーマンスにつながっている。
■ビッグクラブの草刈り場
一方、問題がないわけではない。
「会長は私の意見を知っている。トロサールを失った。カイセドまでいなくなったら、我々がヨーロッパのカップ戦の出場権を争うのは難しくなる。カイセドには、シーズン終了までブライトンに残って欲しい」
これは冬の移籍市場終盤のロベルト・デ・ゼルビ監督の言葉だ。
この冬のマーケットで、モイセス・カイセドにオファーが届いていた。移籍金8000万ユーロ(約112億円)を準備して、アーセナルがカイセドを狙っていた。
すでに、移籍金2400万ユーロ(約33億円)で、レアンドロ・トロサールがアーセナルへの移籍を決めていた。トニー・ブルーム会長はデ・ゼルビ監督の意見を尊重して、カイセドを売却せず、チームに留めさせた。
トロサールやカイセドだけではない。近年のブライトンはビッグクラブのある種の「草刈り場」になっている。
マルク・ククレジャ(移籍金6530万ユーロ/約91億円/チェルシー)、イヴ・ビスマ(移籍金2920万ユーロ/約41億円/トッテナム)、ニール・モペイ(移籍金1180万ユーロ/約15億円/エヴァートン)…。この夏の移籍市場で、多くの選手が狙われた。
2021年夏の移籍市場においては、ベン・ホワイト(移籍金5850万ユーロ/約81億円/アーセナル)、ダン・バーン(移籍金1500万ユーロ/約21億円/ニューカッスル )が引き抜かれた。
それでも、ブライトンは強さを維持している。
「すべてはアカデミーから始まっている。素晴らしい施設を作ることが大事だった。そして、マーケットでの賢い立ち回りが必要だった」とはブライトンのポール・バーバーCEOの弁である。
「我々は無限にお金を使えるクラブではない。ブライトンで成長できる、あるいは他クラブにローンで貸し出せるような若い選手を探している。また、価格とクオリティの観点から、少し力の劣るリーグ戦やコンペティションに目を向けている。市場について、よく知らなければいけない。誰かの移籍に備えて、その時にどの選手の獲得に動くかを考えておく必要がある。ここは牢獄ではない。我々はこの数年、そのように働いている。他のチームよりクレバーにならなければいけない」
■補強方針と活躍の背景
バーバーCEOが語るように、ブライトンの補強方針は明確だ。
三笘(移籍金300万ユーロ/前所属川崎フロンターレ)、アレクシス・マク・アリステル(800万ユーロ/ボカ・ジュニアーズ)、パスカル・グロス(400万ユーロ/インゴルシュタット)、ペルビス・エストゥピニャン(1780万ユーロ/ビジャレアル)らは決して高額な移籍金で加入したプレーヤーではない。
しかし、彼らはブライトンで大活躍している。
「選手はブライトンから移籍していっていい。すでに、そういった経験はある」と語るのはアダム・ララーナである。
「ビスマ、ククレジャ、ベン・ホワイト、バーン、モペイ…。トロサールが移籍した後も、僕たちは問題を解決していく。これまで、そうしてきたようにね」
誰が抜けても、大崩れしない。そういうチームだから、三笘を筆頭に、選手たちは輝けるのかもしれない。