【ハッケン!土浦まち歩き】城下町・中城界隈その5・矢口家住宅(矢口酒店)~土蔵造りの建物探訪~
「ハッケン! 土浦まち歩き」中城界隈のラストは、県指定文化財の「矢口家住宅(矢口酒店)」です。
通りに面した町家建築の趣ある建物は土蔵造り。今から約170年前、天保12年(1841年)の大火後に建て替えられたものです。1981年に県指定文化財になりました。
黒漆喰の壁と格子戸のコントラストが美しく、フォトスポットとしても人気です。
170年以上前から続いた、土蔵造りの酒屋さん
矢口家住宅は、江戸時代より続く町の酒屋さんとして地元の方々を中心に重宝されていましたが、2011年に発生した東日本大震災で大きな被害を受けることに。
店蔵、袖蔵、元倉の3棟は、約5年の歳月をかけて解体修復工事が行われました。建物は完成したものの一部未完成な部分があり、元の生活を取り戻すことは難しいままに。
酒屋さんとしての機能は裏手に造られた店舗に移されましたが、修復後の建物は土浦市観光ボランティアガイド協会が主催する見学会(予約制)で見ることができます。
ちなみに上の写真は、矢口家住宅をフルに活用してイラストレーターのかえるかわる子さんが個展をされたときに撮影したものです。
酒屋だった当時の面影が今もなお色濃く残っています。
建物は、商品の売り買いをする店蔵と売り物のお酒を保管する袖蔵、奥には元蔵もあります。
2階部分は矢口さんご家族の住居になっていました。この急な階段を上って2階へ。
先ほどの階段を上がっていた女性は、矢口酒店の娘さんでイラストレーターとして活躍する「かえるかわる子」さんこと、矢口祥子(やぐちあきこ)さんです。
昨年より、お父様の許可がやっとおりて、長年の夢、そして念願でもあった自宅を舞台に定期的に個展を開催しています。
2022年8月には「土浦市民ギャラリー」で大展示会も開催予定です。
かわる子さんが構成・文・絵を手がけているイラストエッセイ「矢口新聞」で取り上げられた「矢口家住宅」がこちら。
また、かわる子さんが小学生時代には、県指定文化財にまつわるこんなエピソードも。
中城通りを歩いて感じる歴史のかけら
素通りで歩くと4か所で10分にも満たない程度の短いルートにもかかわらず、1か所ごとのディープな物語や伝説が面白すぎて1時間でも足りないくらいの充実度でした。
木塚さんにお伺いしたところ、中城通りには現在も個性あふれるお店が点在していますが、江戸時代に始まって昭和時代の戦前くらいまでは通り一面に店がずらりと並び、肩をぶつけないで歩くのが難しいくらいの人出があったといいます。
土浦の町の人たちは、商都としての誇りを持っていました。その拠点となっていたのがここ中城通り。明治28年(1895年)に土浦駅が開業したことにより人の流れは徐々に変わっていき、通りの様子も変わっていきましたが、今も昔も変わらずにあるのは、商人の町としてのプライドと誇りです。中城通りでその歴史のかけらにぜひ触れてみてくださいね。
<矢口家住宅(矢口酒店)>
住所:茨城県土浦市中央1-6-13 MAP
<かえるかわる子さん>
茨城県土浦市在住のイラストレーター。絵も字も構成もすべて自身で手がけるイラストエッセイ「矢口新聞」を発行中。2020年第24回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)入選。2011年3月11日をきっかけに「一度きりの人生、心の奥から本当にやりたいことをやろう」と、長年勤めた会社を退職。当時はネット、TV中毒であったが、現在は携帯・PC・TVを持たない、見ない生活を送り、日々を楽しく過ごしている。