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北朝鮮軍事代表団団長が訪露中に水死!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
平壌空港で送迎する軍幹部らと握手する背広姿の金琴哲総長(朝鮮中央通信から)

 ショッキングなニュースが飛び込んできた。なんと、ロシアの複数のメディアが「北朝鮮の高位人物がモスクワ近郊の湖で溺死状態で発見された」と伝えていたのである。

 この高位人物の名前が現在モスクワを公式訪問中の金日成軍事総合大学の金琴哲(キム・グムチョル)総長と同姓同名だったということで俄然、金総長の水死の可能性が取り沙汰されている。

 ロシアのメディア「モスクワタイムズ」が昨日(16日)、伝えたところによれば、この高位人物は7月11日にモスクワ近郊のアングステルム湖で一人で水泳中に行方不明となり、翌日に水死体で発見されたとのことである。

 現地の報道によれば、この高位人物は暑さを避けるため通訳を連れて同僚らと共にこの湖を訪れていたようだが、一部のメディアは現地の警察情報として「水泳中に心臓発作を起こしたため湖から出られなかったようだ」と報じている。

 この高位人物がロシアを公式訪問中の金琴哲総長と同一人物であるかは最終的にはまだ確認されていない。現在、明らかになっているのは名前と労働ビザを所有していたことだけである。

 北朝鮮には出稼ぎ労働者を含め多くの滞在者がおり、また姓名が3文字であることから韓国同様に北朝鮮にも同姓同名はいくらでもいる。また「高位人物」、それも軍事代表団の団長に「労働ビザ」の発給というのも何か不自然である。それでも現地では発見された当時の状況や湖から引き揚げられた時の遺体の外見が今年64歳になる金琴哲総長と似ていたことからその可能性が取り沙汰されている。

 金琴哲総長がモスクワを訪問していることは北朝鮮も朝鮮中央放送(9日)付で「朝鮮人民軍軍事教育代表団の団長である金琴哲金日成軍事総合大学総長が8日にロシアに向け出発した」と伝えていたことからも明らかだ。一行の訪問先や滞在期間などは一切言及されてなかったが、ロシア連邦軍参謀本部軍事アカデミーなどロシア軍事教育機関との交流、協力が目的であることは十分に予測が付く。

 金日成軍事総合大学は中隊長級以上の軍事指揮官に対する職務別教育を施す最上級の軍事教育機関であり、韓国に例えると、韓国の陸・海・空軍大学と国防大学院を合わせたものと匹敵する。ちなみに金正恩(キム・ジョンウン)総書記はこの大学を卒業している。金総書記は2002年から2007年までこの大学の特設班を通い、後継授業を受けていた。

  金日成軍事総合大学の総長は国防相や軍総政治局長を歴任した金正角(キム・ジョンガック)次帥ら軍を退役した将軍らが歴任しているが、金琴哲氏の前任者もまた、前海軍司令官の鄭明道(チョン・ミョンド)大将で、2013年から今年5月までこの地位にあった。

 大学総長に就任したばかりの金琴哲氏は野戦軍出身で、軍の階級は上将。江原道・元山に駐屯する第10軍団の軍団長のポストにあった。

 北朝鮮とロシアはプーチン大統領が24年ぶりに訪朝した折に「包括的戦略的パートナーシップ条約」を結んでいたが、今回の北朝鮮の軍事訪問団の訪露は条約締結後であっただけにこの水死体が金琴哲総長ならば北朝鮮にとっては大変な不祥事となる。

 ロシア当局による報道規制が敷かれたのか定かではないが、続報がないため今はまだ「未確認」のままである。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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