【ハンバーガーの歴史】サンドイッチに詰まった歴史の香り!ハンバーガーの起源についての論争
世に広まるハンバーガーの誕生を巡っては、世界中で数多くの物語が語られています。
それらは1885年から1904年のわずか20年の間に集中し、いずれも遊園地や見本市、地元のフェスティバルといった賑やかな場所で生まれたという点で共通しているのです。
しかし、その発明者や初めての一口を提供した人物については、いまだに論争が絶えません。
オハイオ州のメンチス兄弟が1885年、ニューヨーク州バッファロー郊外のエリー・カウンティ・フェアで提供した「ひき肉のサンドイッチ」がその一つです。
豚肉の在庫切れに直面し、急遽牛ひき肉を使用したサンドイッチが誕生しました。
この料理は、新たなメニューとして成功し、開催地ハンブルクの名にちなみ「ハンバーガー」と名付けられたのです。
この話は1970年の書籍 Tanbark & Tinsel にも記録されており、現在でも「ナショナル・ハンバーガー・デー」として祝われています。
また、ウィスコンシン州のチャーリー・ネイグリーンも有力な候補の一人です。
彼は同じ1885年、ハンブルクステーキをパンに挟むことで食べ歩きが可能なサンドイッチを考案しました。
自由にフェスティバルを楽しみたいという客のニーズに応えたこの発明は、彼を「ハンバーガーチャーリー」として知らしめ、現在でも故郷シーモアのバーガーフェストでその功績が称えられています。
もう一つの伝説には、テキサス州アセンズの料理人フレッチャー・デイビスの名が挙げられます。
彼は「オールド・デイブ」の愛称で知られ、1880年代後半にハンバーガーを定番メニューに取り入れたとされているのです。
さらに1904年のセントルイス万国博覧会で提供されたデイビスの「ハンバーガー・サンドイッチ」は、多くの観客に印象を残しました。
一方、コネチカット州ニューヘイブンでは、ルイ・ラッセンが1900年頃に「ハンバーガー・ステーキ・サンドイッチ」を提供したとの記録があります。
彼のレストラン「ルイス・ランチ」は今もなお営業を続け、発明当初の調理法を守り続けているのです。
垂直鋳鉄製グリルで焼かれるハンバーガーは、ラッセンの遺産そのものといえるでしょう。
ハンバーガーの発明は一つの地域や人物に限定されるものではなく、時代と文化の交差点で生まれた多様な発想の産物といえます。
それぞれの伝説が示すのは、パンとひき肉を組み合わせるというシンプルなアイデアが、人々の生活に革命をもたらしたという事実です。
今日、ハンバーガーは国境を越えた普遍的な料理として愛されています。
その一口には、発明者たちの創意工夫、歴史の軋轢、そして祭りの賑わいが詰め込まれているのです。
どの物語が真実であれ、ハンバーガーが人々の空腹と想像力を満たす料理であることに疑いの余地はありません。
参考文献
アンドルー・F・スミス著、小巻靖子訳(2011)『ハンバーガーの歴史 :世界中でなぜここまで愛されたのか?』スペースシャワーネットワーク