【ジャズ後】ギラ・ジルカ@赤坂区民センターを観終わって
自宅に帰って湯船につかりながらノホホンと感想を書きとめようかな、という感じのヌル〜いライヴ・レポート。今回は、ギラ・ジルカが開催した赤坂区民センターでのホール・コンサート。
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2010年リリースのファースト・アルバム『All Me』で遅咲きのデビューを飾り、以降はその圧倒的な技量とキャリアの厚さを見せつけるかのような破竹の勢いで活動を展開しているギラ・ジルカが、本人曰く「久しぶりのホールコンサート」を開催した。
会場となったのは、赤坂見附と青山一丁目を結ぶ青山通りのちょうど真ん中あたりに位置する赤坂区民センター内にある、400席のキャパシティを有する区民ホールだ。
ファースト・セットが始まると、暗転したステージにドラムの加納樹麻が登場してドラム・ソロをスタート。続いてベースの中村健吾が現われて掛け合いに発展し、ギターの竹中俊二、ピアノの深井克則が加わってようやく1曲目のイントロの輪郭が見えてきたところへ、ギラ・ジルカの登場だ。そこからアップテンボの「ラヴ・フォー・セール」で会場をジャズのベールで包み込んでしまう。
“区民ホール”という、近隣住民あるいは港区民にとって敷居の低い場所での開催とあって、“ジャズ・ヴォーカル・ナイト”と副題の付いたこのコンサートには、ギラ・ジルカはもちろん、ジャズの生演奏に接する機会もほとんどないという人の来場もあったようだが、“名刺代わり”としてはこの上ない極上のパフォーマンスを初っ端から惜しみなく披露するといったオープニング。いかにもギラ・ジルカらしい。
プログラムは、5曲ずつで休憩を挟んだ2セット。ジャズ・スタンダードと、彼女の作詞や作曲によるオリジナル曲、そして“ギラ山ジル子プロジェクト”で取り上げている唱和歌謡曲カヴァーなどがバランスよく組まれていた。
ジャズ・ヴォーカルのライヴといえば、なんとなく耳にしたことがあるような気がするというスタンダードを重点的に歌うのが一般的なイメージだとすれば、ギラ・ジルカの(特に今回の)ライヴは“異質”に感じるものだったかもしれない。
カヴァーというアプローチでジャズ・アレンジに対応できるスタイルを身につけることがジャズ・ヴォーカルの第1歩だとすれば、ギラ・ジルカはその域を大きく逸脱して、シンガー・ソングライターとジャズ・ヴォーカルのハイブリッドを具現してしまったと言える。
“ギラ山ジル子プロジェクト”についてはあえて触れないが、今年(2016年)の後半には、レコーディングを含めて大きな展開が期待できるようだ。当夜は、ちあきなおみの名唱で知られる「喝采」の日本語&ジャズ・アレンジ・ヴァージョンがピックアップされたが、MCではそのほかの気になるタイトルがゾロゾロ挙げられていたので、追って取材したい。
アンコールは、「この素晴らしい世界」をスローなグルーヴに乗せて朗々と歌いあげて締めくくった。
ウィスパリングとフォルテ・ヴォイスでは別人と勘違いしかねないほどの異なる表現力を備え、過剰なまでのサービス精神を発揮するギラ・ジルカのステージは、100席ちょっとのジャズクラブのキャパが400席のホールになっても、いや、なったからこそ余計にパワーアップして、その空間を埋め尽くしていたことを実感できたステージになった。