「新・ガザからの報告」(32)24年12月6日―前編・国連機関からの緊急の小麦粉支援―
【人質の遺体発見と2つの空爆】
(Q・今週は何が起こりましたか?)
今週はガザ地区の状況に関するいくつかの最新情報とニュースがあります。
まず、イスラエル軍が2日前にイスラエル人の人質の遺体1体を回収しました。これは3ヵ月前の8月下旬以来、初めてのことです。その場所はハンユニス市とデイルバラ町の間の地域です。
イスラエル軍特殊部隊が5階建ての建物を攻撃し、その家を守っていたハマス戦闘員を拘束しました。その後、彼らをイスラエルに連行し、人質の死体を回収したのです。遺体が冷蔵庫の中で凍っていたのか、それとも地下に埋められていたのかはわかりません。この事件についてはまだ詳しい情報がありません。他の情報では、建物の周辺での衝突で、何人かのハマスの戦闘員が死亡したと伝えています。
現在、残っている人質の数は96人です。
これは2日前に起こった非常に重要な事件です。
もちろん、人質の救出や身柄の確保が行われるたびに、生存者であれ遺体であれ、パレスチナ人とイスラエル人の双方に直接的な影響を与えています。解放や救出の成功は、イスラエル国民、イスラエル軍の精神を高揚させます。逆にハマスには衝撃を与え、戦意を低下させます。
もう1つ事件があります。
2日前(12月4日)の夜、イスラエル軍が、ハンユニス市の西部一帯を急襲しました。この急襲は非常に集中的に行われ、被害も甚大な攻撃でした。指名手配されているハマス戦闘員グループが標的でした。もちろん、ハマスは実際の死傷者数を公表していませんが、イスラエルの報告によると、この空爆で5~7人のトップクラスの戦闘員が死亡したとのことです。
またマワシ地区でも空爆があり、さらにガザ市西部も空爆されました。正確にはシャティ地区つまりシャティ(ビーチ)難民キャンプキャンプです。この空爆も非常に大きな被害が出ました。
指名手配中の複数のハマス幹部が殺害され、その中にはシャティ難民キャンプ大隊の司令官も含まれています。彼の名前はマジディ・イティランです。彼とともに、ガザ市西部のハマスの大隊の著名なメンバーを殺害されました。
この2回の空爆、1回目のマワシ地区、2回目のシャーティ難民キャンプへの空爆はとても大きな被害がでました。これはハマスの軍事部門に的を絞った攻撃でした。
【イスラエル軍の狙い】
前回、私はハマスには統一された指揮系統が存在しないと言いました。この分裂は、イスラエルによるガザ地区の地理的な分割によるものです。北部にはイズディーン・ハダードがいます。現在、彼は北部に残るハマス戦闘員の残党を率いています。ガザ市と北部のジャバリアとその周辺の戦闘員です。
そして、中部と南部には、ハマスの最高指導者だったヤヒヤ・シンワールの弟、モハメド・シンワールがいます。
2つの空爆を考えてみると、イスラエル軍は双方を弱体化させようとしていることがわかります。イスラエル軍は南と北の両方で同時に、司令官シンワールの支配とハダードの支配を弱体化させようとしているのです。つまり、イスラエル軍は同時に両方の支配を弱体化させようとしているのです。
次にガザ北部について話をします。
イスラエル軍はベイトラヒヤ町から完全に住民を避難され、町内に人は誰もいないと宣言しました。そして今、イスラエル軍はベイト・ラハヤに対する地上作戦を拡大しています。
ジャバリア難民キャンプのほとんども破壊されました。つまりイスラエル軍のジャバリア難民キャンプとベイトラヒヤ町での作戦はほぼ終了したのです。私たちは今後、何が起こるのかを見守っています。両地域にまだ少数の戦闘員が残っているかもしれませんが、イスラエル軍はジャバリア難民キャンプとベイトラヒヤ町の両方でハマスの軍事的存在をほぼ破壊しました。
今後数日のうちに、イスラエル軍第162師団が行動を起こすでしょう。おそらくこの部隊が、ジャバリアとベイトラヒヤに残る少数の戦闘員を一掃すると思います。またトンネル内に埋められた人質の遺体の捜索を開始するでしょう。
次に何が起こるのか?第162師団がガザ北部の地区からガザ市に侵攻するのか、それともベイトハヌーン町に侵攻するのか、私たちにはわかりません。ベイトハヌーン町はガザ北部への侵攻以来、包囲されています。しかし、現在、ベイトハヌーンの町の中に戦車が侵攻した様子はありません。
【国連世界食糧計画による小麦粉の無料配布】
(Q・食料、水、医薬品など、人びとの生活についてもっと教えてください)
この件について話す前に、非常に重要な問題について話をしなければなりません。支援物資をめぐるハマスと一族の衝突です。
先週は平穏な週で、あまり大きな事件は起きませんでした。以前のような22人が死亡した事件や、ジャルゴン一族とハマスの衝突のような事件はありませんでした。ただ、3日前に1件だけ事件があり、4人が負傷しました。ハマスとギャングの間の支援物資をめぐる争いです。この衝突により4人が負傷しましたが、ここ2、3週間に起きたことと比べると、非常に小さな事件です。
もう1つ、小麦粉についてお話します。
先週、パン屋の前で群衆が押し合い圧し合いになり、8人が死亡したと報告しました。8人のうち6人は女性で、2人は子どもでした。
この問題について、いくつか最新情報があります。今週は群衆が減少したため、パン屋の前で群衆が押し合い圧し合いになり、人が死亡するという事態は発生していません。WFP(国連世界食糧計画)がガザ地区の全世帯を対象に小麦粉の無料配布キャンペーンを開始したからです。これは「緊急配布」と呼ばれています。
パン屋の前での民間人の死傷を防止するために決定されました。小麦粉の緊急配布が開始されたのです。彼らはまず大きな家族に配布を始め、徐々に小さな家族にも配布する予定です。
まず、10人以上の家族に配り始めました。今日、金曜日は、8人以上の家族に配りました。明日か明後日には、7人家族に配るでしょう。家族の人数に応じて、徐々に配っているのです。
この活動、つまりWFPによる配給は、本当に問題を解決しました。今、パン屋の前には人だかりができていますが、以前のような大混雑ではありません。人だかりは縮小しています。これは非常に重要な問題だと思います。
(Q・WFPの小麦粉をトラック輸送することをハマスやギャングらが妨害し略奪するのではないかと私は懸念しますが、どうですか。盗難の問題はありませんか?)
小麦粉のトラックがハマスとギャングによって盗まれるということが起きましたが、残りのトラックは配布されています。だから、「徐々に配布している」と言ったのです。ハマスとギャングが本当に多くのトラックを盗んでいます。
しかしWFPは新しい良いアイデアを見つけました。小麦粉のトラックを北部のネツァリーム回廊から搬入する方法です。そうなれば、ハマスはそれらのトラックに対して手を出すことができません。なぜなら、イスラエル軍の砲兵部隊とドローン(無人機)がそこに安全地帯を作っているからです。ヌセイラート難民キャンプやブレイジ難民キャンプは、ネツァリーム回廊に近い。WFPがとったこの方法が、盗まれるトラックの量を減少させています。
これまでガザ地区の中部と南部をめざすすべてのトラックが、エジプトとの国境近くのケロムシャロム検問所から入ってきていました。ご存知のように、中部のデイルバラ町など目的地に着くまで、幹線道路のサラディン街道に沿って非常に長い距離を移動しなければならず、とても危険です。
しかし、今では距離が短くなり、そのほとんどがイスラエル軍の安全対策、無人機、大砲などで守られています。それでも強盗はありますが。
(Q・WFPは何台のトラックで食糧を輸送したのか、そして何台のトラックが略奪されたのか、わかりますか?)
WFPはそれを公にしていません。しかし何百台ものトラックを投入しています。私の、推定ですが、300台くらいだと思います。これも私の個人的な推定ですが、盗まれたトラックはおそらく数十台です。
(Q・盗んだのはマスですか?それともギャングですか?)
ハマスとギャングです。ただ、それらのギャングの多くは、正直に言えばハマス自身によって設立されたものです。
数ヵ月、ハマスは単独ではケロムシャロム検問所近くまで行くことができませんでした。ハマスの戦闘員が直接、そこに行こうとした場合、イスラエル軍の無人機に狙われます。
それで、ハマスは支援物資の強盗のためにギャング団を作りました。ですから、それらのギャング団の一部はハマスによって設立されたのです。
しかし今ではそのギャング団がハマスに対して背を向けているのです。ハマスが最大の分け前を得ているのを見て、自分たちも分け前を取ろう、自分たちの取り分を増やそうと言い始めたのです。ハマスは盗んだ物資の分け前を増やすことを認めませんでした。それが、一部のギャングがハマスに反旗を翻す理由です。
繰り返しますが、ハマスが直接的であれ間接的であれ、戦争の初期に、ギャング集団を設立したのです。(続く)