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「取り返す」。10/13に再起する京口紘人

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 10月13日のビンス・パラス戦を控えた京口紘人。今回の試合が、プロ21戦目となる。彼のキャリアの中で、この25歳のフィリピン人選手と拳を交えるのは、3回目だ。

撮影:筆者
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 2018年5月20日、京口は当時保持していたIBFミニマム級タイトル2度目の防衛戦としてパラスを迎え、判定で勝利した。

 「若く、ハングリーな選手と聞いていましたが、あの頃はパワーに頼っていて、あんまり引き出しが無い印象でした。勢いはありましたが、キャリアも浅かったですよね。無理なく上回れました」

 パラスとの初戦では、第3ラウンドに左フックを喰らってダウンを喫した。

 「自分のちょっとした隙を突かれました。ダメージは無かったんですが。自分にとっては、いい経験をさせてもらったと感じています。その後、しっかり立て直せましたから」

撮影:筆者
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 その後WBAライトフライ級タイトルを奪取し、2階級を制した京口だが、2022年11月1日、同級WBC王者、寺地拳四朗との統一戦に敗れる。プロ生活初の黒星だった。

 「自分のボクシング生活も最終章。新たなチャレンジとして、フライ級でベルトを狙う」と再び走り出した京口。2024年5月11日のパラス第2戦は、フライ級での3試合目だった。

 「5月11日のパラスは、自分との1戦目から月日が流れていましたし、それなりにタフな経験をしてきたなという印象でした。パンチ力も駆け引きも、スキルアップしているなと。でも、こちらが気を抜かなければ怖いパンチをもらわずに戦えるとも思いました。彼の成長ぶりやパンチは想定内でしたね。

 リードを突いて目を腫らして、空振りさせて、初戦とは違った形で圧勝することをテーマにしていたんです」

撮影:筆者
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 序盤は右クロス、中盤以降は京口の十八番である左ボディーアッパーを随所に決め、ポイントアウトしたかに見えたーーーー。が、判定は、0-3でパラスを支持する。

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 「チャンスが来れば、もちろん倒しに行きましたよ。でも途中からは、変に相手に付き合わずに上回ればいいと考えました。僕のジャブを嫌がっている素振りは感じましたね。とはいえ、意識を刈り取るようなKOは難しかった。

 試合後は、ポイントを失ったのは3〜4ラウンド程度だろう。スコアが読み上げられている最中も『そうか、4ポイントくらいの差だな』と耳にしていたら、勝者が向こうだったので、無茶苦茶驚きました。『えっ? 僕が取ったラウンドが3〜4なのか』って」

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 京口本人も、陣営も、開催国となった韓国を“敵地”とは認識していなかった。

 「フィリピンで行われた試合なら、そういう意識が出ていたでしょうが……。蓋を開けてみたらジャッジは全員韓国の人で、アグレッシブに攻めることを評価する傾向なのかと、今は感じます。そういう考えに至らなかったのは、こちらサイドの落ち度だったかもしれません……」

 試合直後は、失望感から一度は「引退」も口にした京口。しかし、このままでは終われないとパラスに3戦目を呼びかける。

 「試合の映像を2回くらい見ました。この結果で止めたら、後悔すると思いましたね。再起するなら、パラス以外は考えられなかったんです」

撮影:筆者
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 京口は即、<取り返す>をテーマに、動き始めた。

 「自分が持っていたランキングを、彼が今持っているので、初心に戻るじゃないですが、取り返すために取り組んでいます。パラスの大きいパンチに気を付けて、自分のボクシングをしますよ。

 見ていて面白いファイトをしますので、ファンの方には取り返しに行く自分の姿を楽しんで頂きたいですね」

 

 今回、京口はWBAフライ級王者のユーリ阿久井政悟とも12ラウンドのスパーリングをこなし、準備万端だ。10月13日は、彼らしいファイトを期待したい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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