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唯一の日本人NHL選手、福藤豊。PS戦までゴール前に立ち続けた、40歳の誕生日

沢田聡子ライター
筆者撮影

NHLでプレーした唯一の日本人選手である福藤豊の40代は、PS戦までもつれこむ接戦で幕を開けた。

9月17日、GK福藤が所属するH.C.栃木日光アイスバックスは、ホームリンクの日光霧降アイスアリーナにレッドイーグルス北海道を迎え、今季5試合目を戦った。ここまで全勝で走ってきたバックスは、この試合でも第2ピリオドに先制点を挙げる。続いて第3ピリオドにもゴールを決め2点リードするが、昨季王者のイーグルスは簡単に勝たせてはくれない。バックスのペナルティで得たパワープレー(数的有利の状況)をきっちりと生かして得点したイーグルスは、試合終了まで1分を切ってから6人攻撃による同点ゴールを決めてきた。延長戦では両チームともゴールを決めることができず、突入したPS戦で得点したイーグルスが接戦を制している。

バックスの記者会見には、1ゴール1アシストで全得点に絡んだFW寺尾勇利が出席した。地元放送局からの「今日は福藤選手の誕生日だが、そんな話題が出たか」という質問に対し、寺尾は試合前、福藤にプレゼントを渡したことを明かしている。

「イソップのフレグランスをあげて『これで、もっといい男になってください』って」

「喜んでいました」としつつ、寺尾は「勝てなかったので、ちょっと申し訳ないんですけど」と付け加えている。

福藤には、リンクサイドで話を聞くことができた。

――今日、40歳になりました。ここまでプレーしていることは予想していましたか

「いやー、想像できなかったですね。こうしてまだ現役でできていて幸せですけれども、18歳で当時のコクドに入社した時は、まったく考えていなかったです」

――メンテンナンスをしていればこの年齢までできる、という手応えも感じていますか

「そうですね、ここ数年成長できている部分も自分自身で感じていますし、まだまだ楽しみな部分は自分の中でありますね」

――今日は40代最初の試合で、いきなりPS戦までもつれるハードな展開になりました

「負け方が負け方なので、悔しかったですね。勝てた試合だと思いますし、最後の失点はすごく悔やまれるところがあります。勝ちたかったですけど、これが勝負といえば勝負なので。まだまだ明日がありますし、切り替えて頑張りたいなと思いますね」

――優勝候補のイーグルスを相手にいい試合ができたという、手応えもある敗戦だったのでは

「そうですね、イーブン(5対5)では、うちがパック支配している時間の方が多かったですし。ちょっとした反則で向こうに流れを持っていかれましたけど、そういった部分以外では僕達もイーグルス相手にいい戦いができているので。そこは若いチームメイトの自信になったと思いますし、明日がすごく楽しみですね」

――チームはいい雰囲気でしょうか

「やっぱり、勝っている時は雰囲気がいいですし。僕達が上に行くためには(対イーグルスの)明日の試合がすごく重要になると思うので、この負けをどう受け止めて明日どういう気持ちでリンクに来るかが大事だと思います」

筆者が福藤のプレーを初めて見たのは、2001年9月22日である。鳴り物入りで日本リーグの名門・コクドに入った福藤は、19歳になったばかりのルーキーだった。デビューしたプレシーズンマッチもPS戦までもつれており、接戦を制して勝ち取った初白星を喜ぶ福藤は、初々しいガッツポーズを見せている。

それから約21年を経た今、世界最高峰の舞台にも立ってきた福藤は、18歳で選出された日本代表メンバーに、今春の世界選手権でも名を連ねている。後輩が香水を贈りたくなるような風格は、積んできた経験から醸し出されているのだろう。今もなお成長する自分を楽しみつつ、40歳の挑戦は続く。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。2022年北京五輪を現地取材。

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