【ハンバーガーの歴史】刻まれた肉が辿った長い旅路!ハンバーガーの源流についての物語
ハンバーガーという一品がどのように誕生し、世界の胃袋を虜にしたのか。その起源を紐解くと、一つの料理の背後に重ねられた文化と歴史の豊かさに目を奪われます。
最古の記録は、古代ローマの料理人アピシウスによる「isicia omentata」という料理です。
ブドウジュースで煮詰めたひき肉をカウル脂肪で包んだもので、これがひき肉料理の始まりとされます。
一方で、タルタルステーキも無視できません。
19世紀、ジュール・ヴェルヌが小説『ミハイル・ストロゴフ』で描いたのが、タルタルステーキに言及した最初の記録とされています。
この生のひき肉料理はドイツのラブスカウスやメットとも近い存在です。
また、17世紀のドイツでは「フリカデッレ」と呼ばれるひき肉料理が広まり、19世紀には「ハンブルク・ルントシュテュック」という料理が人気を博しました。これは現代のハンバーガーの先駆けとされています。特筆すべきは、1763年の料理本に登場する「ハンブルクソーセージ」です。ナツメグやクローブ、黒胡椒などのスパイスを効かせたこの料理は、トーストに添えられるのが一般的でした。この伝統が広がり、ミートローフやコフタといった世界中のひき肉料理が誕生したのです。
19世紀、ドイツ北部の港町ハンブルクは、ヨーロッパからアメリカへの移民が集う出発点でした。
ニューヨークのレストランでは移民たちの好みに応じ、「ハンブルクスタイルのステーキ」が提供されたのです。
初めてハンブルクステーキがアメリカでメニューに登場したのは、1873年、ニューヨークの名店デルモニコスにおいて。
11セントという高価格で提供されたこの料理は、当時の牛肉の切り身の倍の値段でしたが、すぐに評判を呼びます。
刻んだ肉に卵や玉ねぎを混ぜて焼き上げたこの一皿は、調理の手軽さから多くの家庭やレストランで親しまれるようになり、次第に大衆化していきました。
ソールズベリーステーキという変種も生まれました。
1897年以降は、特製グレービーソースを添えて供されるこの料理がアメリカの食卓を飾りました。
そして1930年頃には、「ハンバーグステーキ」が「ハンバーガー」という略称で広まり、さらにチーズバーガーやベーコンバーガーといった新たな派生形も登場します。
今日、ハンバーガーは単なる料理以上の存在となりました。
一つの皿に詰め込まれたその歴史は、国境を越え、時代を超えて、人々を結ぶ架け橋であり続けています。
参考文献
アンドルー・F・スミス著、小巻靖子訳(2011)『ハンバーガーの歴史 :世界中でなぜここまで愛されたのか?』スペースシャワーネットワーク