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リビアに「バレーボール球」サイズの降雹 世界で3つ目

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:アフロ)

中世フランスの物語に出てくる巨人「ガルガンチュア」。その名のついた、途方もなく巨大な雹が、先日アフリカ北部のリビアに降りました。この雹は、世界で観測された3本の指に入る大きな雹とのこと。一体どのようなものだったのでしょうか。

雹のサイズ

日本では、空から降ってくる直径0.5センチ未満の氷を「あられ」、それ以上を「」と呼んでいます。

しかし世界に降る雹はそんな小さなスケールでは分類できません。アメリカの気象学会は、10センチ以上の雹を「ジャイアント」サイズ、15センチ以上を「ガルガンチュア」サイズと名付けています。この「ガルガンチュア」という名前は、中世フランスの物語に出てくる巨人に由来します。

アメリカ気象学会出典の表を元に筆者作成
アメリカ気象学会出典の表を元に筆者作成

これまでガルガンチュアサイズの雹は、アメリカアルゼンチンでしか見つかっていませんでした。ところが今年10月27日、砂漠地帯のアフリカ北部リビアの首都トリポリで3つ目が発見されるに至りました。リビアといえば、その国土のほとんどが砂漠地帯。雹とはあまり縁のないような国なので、二重に驚きます。

リビアで降った「ガルガンチュア」雹

上の写真がその雹です。子供の両手に巨大な突起のついた氷が乗っているのが写っています。しかも、その手の下にも同じような大きさの雹がゴロゴロと置かれています。まさか空から降ってきたとは想像できないほどの大きさです。

残念なことに、現地でその雹の直径や重さは測定されなかったので、本当のところ正確なサイズはわかりません。しかしポーランドのMateusz Taszarek教授は、この雹の直径が20センチに及ぶと推定しています。バレーボールの球とほぼ同じような大きさです。

この雹は、先の分類では「ガルガンチュア」クラスに相当し、世界で3本の指に入る巨大な雹であったと考えられます。

過去の2つの「ガルガンチュア」雹

では、その他のガルガンチュアの雹とはどのようなものだったのでしょうか。

アメリカに降った雹(出典: NWS)
アメリカに降った雹(出典: NWS)

まず1つ目は、2010年アメリカ・サウスダコタ州ビビアンで降った直径20.3センチの雹です。重さは0.88キロに及び、雹が地面に落ちて25センチも穴が開いたと伝えられています。

2つ目が、2018年アルゼンチン・コルドバ州ビラカルロスパスで降った直径23.6センチの雹でした。下がその写真です。撮影者によると「この雹はぶつかった衝撃で割れ、少し溶けたので、写真を撮る前はさらに大きかった」とのことで、本当はもっと巨大であったようです。

リビアの雹はこれら2つの雹に続き、世界三本の指に入る巨大な雹であった可能性があります。

(↓アルゼンチンに降った雹)

非公式の巨大雹

ちなみに、1917年には埼玉県で直径29.5センチのカボチャ大の雹が降ったという記録がありますが、残念ながら証拠が残っておらず、公式な記録とはなっていません。

雹のあれこれ

巨大な雹はどのくらいのスピードで空から落ちてくるのでしょうか。

たとえば野球ボールサイズの雹が空から落ちてくる速度は、メジャーリーグのピッチャーが豪速球で球を投げるのと同じだそうです。

リビアの雹は、それより大きいうえにギザギザした突起まで付いていましたから、刺さっても刺さらなくてもホラー映画です。死者が出なくて本当に良かったと思います。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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