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日銀の利上げは12月か1月か1月以降か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 12月5日の中村審議委員による広島県金融経済懇談会における挨拶後に行われた記者会見の様子が日銀のサイトにアップされた。気になる利上げの行方について、中村審議委員は下記のように答えていた。

 「別に何というか、まだ12月とか1月とかもっと先かとかいうことを決めているわけではないので、データ次第と先ほどから申し上げているんですけど、どちらかというと市場がボラタイルになっていて、上がったり下がったりしているんですけど、それはアメリカでも同じようなことが起きているので、決して私と大きな変化が出ているのかどうかはちょっと分かりませんけど、もう少しきちんとデータをみてファクトに基づいて意思決定をしたいと考えているので、今の状況は別に12月でなくなったというわけではないし、12 月でやるということでもないし、もうちょっと時間が経って、経済データのファクトを確認しながら、いろいろ市場も動いて来るのではないかなと思いますので、私としてはまだニュートラルにいるということです。」

 「どちらかというと市場がボラタイルになっていて、上がったり下がったりしているんですけど」という状況がまさに9日から10日にかけて起きている。

 時事通信の報道も影響してか「日銀が利上げをまったく急いでいない」という観測が高まっていたようで、6日に円債は中期債主体に買われていた。

 これは米長期金利の低下などを受けて、ドル円が150円割れとなるなどしたことで、円安対応のための日銀の利上げは見送られるとの観測によるものとの見方が出ていた。

 ところがドル円は今度は151円台半ば、ユーロ円は160円台を回復するなど今度は円安が再び進行している。

 こちらは中国政府が2025年に積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を進める方針を示し、中国の景気回復期待の高まりが影響しているとの見方もある。

 債券にしろ為替にしろ、中央銀行の金融政策だけによって動くものではない。このため、こういった動きとなっているのであろうが、中村氏の指摘しているように、市場がややボラタイルになっていて、上がったり下がったりしているのもたしかである。

 市場の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)では5日、12月18~19日の会合で日銀が利上げする確率を37%織り込んでいる。11月29日の66%と比べると、市場関係者の利上げ観測は大幅に低下した格好だ(5日付ブルームバーグ)。

 OISというのは、市場参加者の肌感覚を数値化したものであり、これをもってどうのこうのという判断はできない。これは市場参加者の予想を数値化したものであり、これも揺れ動くものとなる。

 日銀の利上げは12月なのか、来年1月なのか、それとも1月以降なのか。

 これについては、いまのところ確定的な見方はできない状態にある。これは中村委員の下記の表現からも窺える。

 「今の状況は別に12月でなくなったというわけではないし、12月でやるということでもないし、もうちょっと時間が経って、経済データのファクトを確認しながら、いろいろ市場も動いて来るのではないかなと思います」

 個人的な予想としては、年内に政策金利を0.5%まで引き上げ、来年もタイミングを計りながら、0.25%の利上げを2回行うことで、政策金利を1%にすると引き続きみている。

 政策金利については0.50%への引き上げよりも、0.75%の引き上げの方が慎重さが必要となる。これは前回の2006年から2007年にかけての利上げが0.50%止まりとなっていたためである。

 来年度の予算編成などは気になるものの、12月の日銀の利上げを妨げるものは現状あまり見当たらない。市場もややボラタイルといっても今年8月あたりの荒れようとは異なり、むしろ落ち着いている。

 1月の金融政策決定会合の開催のタイミングが、トランプ次期米国大統領の就任直後ともなり不透明感の強まりにより、市場がボラタイルとなっている懸念もある。

 13日に発表される日銀短観などを確認の上、18日~19日に開催される日銀金融政策決定会合にて0.50%への利上げを決めると個人的には予想しているのだが。


金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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