42歳ブッフォンの契約延長が記録狙いの「エゴ」!? 引退しない理由は少年へのリスペクト
ひと足先にスパイクを脱いだ3歳下の盟友からは、偉大なキャリアに終止符を打つように繰り返し勧められている。だが、ジャンルイジ・ブッフォンはまだグローブを捨てていない。
ユヴェントスは42歳の守護神との契約を1年延長する見込みだ。かつては40歳で現役を退くつもりだった。だが、ブッフォンは少なくとも43歳になるまでゴールマウスに立ち続けるつもりだ。
◆マルディーニ超え目前
2018-19シーズンを最後に引退するはずだったブッフォンは、パリ・サンジェルマンでの1年を経て、昨年夏にユヴェントス帰還を果たした。以前とは役割が違う。もう絶対のレギュラーではない。ひと回り年下のヴォイチェフ・シュチェスニーの控えだ。
もちろん、年齢からくる衰えは避けられない。「トップ・オブ・ザ・トップ」だったのが過去なのは、本人がだれよりも分かっているだろう。それでも、今季のセリエAで出場7試合、公式戦で出場11試合は、ブッフォンがまだ信頼に値する守護神であることを裏付ける。
昨年12月には、パオロ・マルディーニが持つセリエA通算出場試合数記録(647)に並んだ。無事にシーズンが再開され、残り12試合で一度でも出番があれば、ブッフォンはその偉大な記録リストに新たな1ページを刻むことになる。再開後の過密日程を考えれば、十分にあり得ることだ。
◆中には懐疑的な見方も
42歳という年齢は動かしようのない事実だ。ともに黄金期を支え、今季途中までコーチングスタッフを務めたアンドレア・バルザーリも、毎日ブッフォンにやめろと言っていたそうだ。ロックダウン中にファビオ・カンナヴァーロとのリモート対談で――冗談めかしてだが――明かしている。
常識的に考えれば、欧州の頂点を競うイタリアの絶対王者が、43歳になる選手と契約を更新するのは異例のことだ。中には、懐疑的で厳しい表現もある。ファブリツィオ・ボッカ記者は、『レプッブリカ』で次のように記した。
「自分に多くを与えたユヴェントスへの感謝と惜しみなさからくる行動か、サッカー史に残る高齢選手として記録をつくるためのエゴイズムや極端な個人的喜びの行為、手中にしたすべて以上の歴史を望む意欲か分からない。越えないほうが良い限界は存在する。おそらく、我々はすでにその限界を越えた。だが、サッカー界の象徴に触れてはならないのは絶対であり、議論の余地がない」
◆チームに重要な「偉大なる模範」
しかし、やはり元チームメートのクラウディオ・マルキージオは、『Radio24』で契約延長に驚きはないと話している。
マルキージオは、ブッフォンがレギュラーではなく、ロッカールームでチームを支える裏方の役割を受け入れたと指摘。その存在が重鎮であるベテランイタリア人にとっても、新加入の外国人選手やこれからチームを背負うイタリアの若手にとっても重要と主張した。
かつて控えを務めたルビーニョも、『Tuttomercatoweb』で「偉大なプロフェッショナルの模範。プレーする意欲と闘志がある限りはやるべき」と、ブッフォンの現役続行に賛成している。
◆なぜ、続けるのか
そして、ブッフォン本人はその意欲を失っていない。ロックダウン中の3月、クラブ公式チャンネルのオンラインインタビューで、ブッフォンは現役を続ける理由に言及した。調子が良いことはもちろんのこと、「ジジ少年が抱いていた夢をリスペクトしているからだ」という。
「7、8歳のころに、セリエAとかユヴェントスとかじゃなく、セリエCであってもGKをやれると言われたら、喜んで感泣しただろう。その少年を尊重しなければいけないんだ。人はその年齢のころに最も健全で清い考えを持つと思うからね」
ブッフォンは、少年時代の自分を裏切りたくないのだ。
◆「結果は努力と仕事の成果」
ブッフォンが今季最後に出場したのは、2月13日のミランとのコッパ・イタリア準決勝ファーストレグだった。それから4カ月。ユーヴェは6月12日のミランとのセカンドレグでシーズン再開を迎える予定だ。ブッフォンは先発出場が予想されている。
先日、ブッフォンはインスタグラムで次のように意気込みを表した。
「年を重ねてきて教わったのは、以前よりも集中してリスタートするために、いつも自分の中に正しいエネルギーを見つけることが必要ということ。結果は、我々の努力と仕事の成果だ」
ワールドカップ優勝をはじめ、数々の栄光を手にしても、ブッフォンの本質は変わらない。「ジジ少年」をリスペクトしているからだ。だから、ハードワークを欠かさない。
ただ、いつか終わりのときが訪れるのもまた事実だ。それが、努力の成果として、唯一足りなかった悲願のトロフィーを手に入れたときになるのかは分からない。ビッグイヤーにキスできたとき、あるいはできなかったとき、ブッフォンはどのように感じ、「ジジ少年」にどう語りかけるのだろうか。